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孤星の抗戦  作者: 轟蓮次
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内情3

智之が異星人たちと生活を共にするようになった初日、彼はその雰囲気に少し戸惑った。

異星人たちは敵意もなく、むしろ驚くほど楽観的で陽気な様子を見せていた。

智之の中で抱いていた緊張感が少しずつ薄れていく。

異星人の一人が笑顔で声をかける。


「智之さん、地球の料理ってどんな味がするんだ?俺たちはずっと保存食ばかりでさ、何か新しいものが食べてみたいよ」

智之は意外な質問に驚きつつも笑みを浮かべた。


「料理か…簡単なものでよければ作ってみよう。何か好きな味はあるか?」


異星人たちは顔を見合わせながら楽しそうに話し合い、最終的に「甘いものがいいな!」という答えを出した。

智之は苦笑しながら、「じゃあ、甘さを抑えたケーキみたいなものを試してみるか」と応じた。

異星人たちは子供のように喜び、準備に協力し始めた。


「ああ、しかし材料がないか…?」

「いや、智之。こいつらは便利な技術を持ってる」

「智之さん、我々は材料をその辺の植物から合成変換できる」

「合成?変換??」

「まあ見れば解るさ」


そう言ってジョーンズは必要な材料について彼らに説明を始めた。

それに従って、植物を摘んで来ては謎の機械に放り込んでいく。

耳慣れない音が鳴ると、それから出てきた物が見えた。

雑草やら花やらを放り込んで出てきたのは小麦粉だった。

意味が分からない。


「…どうしてあんな物から小麦粉が出来上がるんだ…?」

「分からんが入れたものと求めるものの質量が釣り合っていれば良いらしい」

「錬金術かよ」

「意外と古代にはそんな技術があったのかも知れないぜ?異星人が持ち込んだとかで」

「ぜひ石ころを金に変えて欲しいね」

「そりゃ良いな。やりすぎると石ころと金の価値が逆転しそうだがな」


そうして材料を揃え、ケーキをでっち上げると彼らは大喜びでそれらを平らげた。

思った以上に甘かったらしく目を白黒させていたのにはジョーンズといっしょに笑い転げていた。


日々が過ぎるにつれて、智之は異星人たちの性格に触れる機会が増えていった。

彼らは基本的に穏やかで、場を明るくする能力を持っているように感じられた。

ある日、異星人たちが集まって何かを話し始めた。

智之が近づくと、


「智之さん、地球には『祭り』というものがあるって聞いたんだけど、それってどんな感じ?」


と聞いてきた。


「そうだな…地域によって違うけど、例えば夏祭りではみんなが集まって花火を見たり屋台で食べ物を買ったりする。楽しい時間を過ごす場だ」


異星人たちは目を輝かせて


「それってすごいね!俺たちも何か祭りみたいなことをやってみたいな!」

と言い出した。

そして自分たちで楽器のようなものを作り始め、即興で歌と踊りを披露する場面も見られた。

智之はその姿に思わず笑みを浮かべ、

「楽しそうだな。こんな姿が見られるとは思わなかった」

と心の中で呟いた。


異星人たちはユーモアを交えるのも得意だった。

智之がコーヒーを飲んでいると、異星人の一人が真剣な顔で近づいてきてこう言った。


「その液体、すごく濃い色をしてるけど、本当に安全なのか?」


智之が「これはコーヒーだ。地球の飲み物で、目を覚ますためによく飲まれるんだ」と説明すると、異星人は少し考え込むような様子を見せた後


「じゃあこれを飲むと目がもっと大きくなるのか?」と質問した。

その言葉に智之は吹き出してしまい、「いや、そんなことはない。ただ眠気が飛ぶだけだよ」と答えると、異星人たちは笑いながらそのやりとりを楽しんでいた。


数日間生活を共にする中で、智之の心境は変わり始めていた。

彼らの陽気さやユーモアに触れるうちに、異星人への敵意や警戒心が少しずつ薄れていった。

智之は彼らが戦争を望んでいないことを強く感じ、彼らの中にも平和を求める者がいるという事実を受け入れる準備が整いつつあった。


「思ったよりも楽観的で、人間に近い部分もあるんだな…」


智之はふと独り言を漏らしながら、異星人たちと過ごす日々の意味を改めて感じていた。

彼らは、少なくとも個人レベルでは人間とそこまで思考に変わりはない。

見慣れないものに警戒心と好奇心を示し、美味しいものを好み、歌と踊りで楽しさを覚え、辛いことに怒りや悲しみを覚える。


姿形が違うだけなのだ。

いつまでもここで彼らと生活を共にし、一緒に宇宙を旅するのも悪くないなどとも考えたがそういう訳にはいかない。

冴島を説得して無条件な殲滅作戦は思いとどまらせなくてはならない。

そのような狂戦士めいた事をするとは思いたくないが、自分自身が「勝利=敵の殲滅」と考えていた以上は冴島がそうではないと言い切れない部分があった。


智之は異星人たちと別れを告げた。

彼らの陽気な笑顔や、楽観的な言葉が彼の頭の中に余韻のように残っている。

異星人のリーダーが最後に「いつでも戻ってきてくれ」と伝えたとき、智之は静かに頷いてその場を後にした。

深い山道を再び下りながら、智之は周囲の静けさに包まれていた。

木々の間から差し込む光が淡く輝き、遠くから鳥の声が聞こえる。

自然の穏やかさが、心の中で渦巻く思考を少しずつ整理させていく。

彼はジョーンズとの議論、異星人たちとの交流を振り返りながら、一つひとつの要素を紐解いていった。


ホテルに到着した智之は、部屋に荷物を置くとベッドに腰を下ろした。

美深町のホテルは静かで居心地が良く、外の薄暗い風景が窓越しに見える。

彼は部屋の明かりをつけ、ノートパソコンを開いて画面を見つめた。


「彼らの存在は、人類にとっての敵というだけではない。希望の一端を示しているのかもしれない」


智之は自分の考えをまとめるために、データを整理しながら静かに呟いた。

彼は異星人の技術、性格、生活の様子を一つずつ思い出しながら、それを自らの視点で分析していく。


「異星人は陽気で楽観的だ。私たちが持つ脅威のイメージとはかけ離れている」

「彼らの技術は確かに進んでいるが、破綻寸前の部分も多い。迷彩技術のような高度なものがある一方で、資源の枯渇が深刻だ」

「戦争を望む指導部と、それに反対する反戦派。彼らの内部構造は複雑で、簡単に判断できるものではない」


智之は目を閉じ、深く息をついた。

そして思考をさらに深めていく。


「彼らとの交渉が可能だとして、それを実現する道をどう作るか。戦争を続けるのは双方にとって壊滅的だが、交渉にはリスクが伴う…見つける異星人全てが彼らのように友好的とは限らない」


智之はやがて避難所に戻り、冴島司令に報告する準備を整えることを決意した。

彼の中には、異星人の反戦派の存在をどのように説明すればいいのかという迷いが残っていたが、それでも事実を伝える必要があると思った。


「まずは冷静に情報を伝えることだ。彼らの現状、そして反戦派の意志について説明する」


智之はノートに具体的な報告内容を書き留めながら、最後に深く息を吐いた。


「冴島さんがどう反応するか分からないが、この情報は必ず伝えるべきだ」


翌朝、智之は避難所へ戻るための準備を終え、静かにホテルを後にした。

その表情には決意が宿り、彼の心にはまだ答えの見えない問いが残されていた。

報告がどのような展開を迎えるのか、それが彼にとっての新たな試練となるだろう。

読んで頂きありがとうございます。

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