内情
風邪でダウンしていました…。
短いですが続きです。
ジョーンズが語る異星人の話は智之にとって、いや軍を経験し、少しでも知識のある者にとっては衝撃としか表現できないような様相だった。
「異星人はな…もう種族全体で見ても100万以下の数しかいねえんだ」
「100万…?戦闘を忌避する者も居ることを考えると皆が兵士ということでもないのか?」
「ああ。兵士というか戦士階級にあるのはせいぜいが10万にも満たないんだそうだ」
「たった10万で地球を襲ったのか…愚策にしか思えないが」
「実際、あいつらのほとんども愚策だと思ってるみたいだぜ。…追い詰められすぎて選択肢がねえのさ」
「…」
「分かるだろ?もう利用できる資源が枯渇しかかってんだよ。ドローンみたいな自立型の戦闘兵器もあるにはあるが、ガタガタで共食い整備の果てに数もない。そもそも整備可能な技術者の数も少ねえと来た」
「そんなに…それならどうして侵略なんだ?密かに入植することだって…いや、環境か!」
「おう。そのままじゃああいつらはこの惑星に適応できねえ…適応可能な体に変化するために人体のDNA情報が必要になる」
「だから初期に人間を誘拐していたのか」
「そうらしい。その時点じゃ生身の人間の戦闘に関する情報がなかったようでな…船に招いて暴れられたらまずいかもってんでバラして利用したんだと。殺された人間やその家族には知ったことじゃないがな」
とんでもない話であった。
たった10万で勝とうとしている事もそうだが、前もって人間を調査していたら生身では野生動物にもそう簡単には勝てないくらい脆弱だと把握できそうなものだ。
表情に疑問でも現れていたのか、ジョーンズは苦笑しながら言った。
「分かるぜ。不可解だよな?なんで調査してねえんだって」
「ああ。正直に言って手落ちとしか考えられない」
「全くだ。一応調べたらしいんだがな…調査した場所が悪かった。内膳してる国を調べたらしいんだよ」
「…あっち方面か」
「あっち方面だ。連中の母星が無事だった頃は同族同士で戦うってのは切磋琢磨のためだったらしくて本気の殺し合いをしてるとは考えなかったみたいなんだよ」
「まさかとは思うが…」
「連中の軍部は、自分たちに気付いて殲滅するために腕を磨いてると考えたらしい」
思わず天を仰いだ。
情報調査が杜撰すぎるし得た情報の分析も適当すぎる。
もしかして異星人というのは馬鹿しかいないのか!?
そう思う一方、最早そんなことすら気にしていられないレベルで破局が見えているのか?とも思う。
「その部分については概ね理解できた…納得はできないが」
「まあそうだろうなあ…俺だって未だに納得しきれてないんだ」
「ふう…それで?母星が無事だった頃って言うのは?まるで今は無事じゃないみたいじゃないか」
「実際今はもう存在しないらしいぞ。宇宙に進出して3000年程度の歴史を持ってたらしいんだが、ある日突然崩壊し始めたらしいんだ」
「突然って…そんな事があり得るのか?俺は専門家じゃないから詳しく分からないけど前兆みたいなものはなかったのか?」
「時空震?だか時空波だかってのを観測した限りじゃあマイクロブラックホールが超光速で星をぶち抜いたんじゃないかって説が有力なんだとさ…運悪く惑星の核をぶち抜いたってわけだ」
「それはまた…」
「そのせいで宇宙に築いていたコロニーや建造済みの宇宙船に可能な限りの人員や生物や資源を拾って自分たちが生きられそうな星を探しに出たってことなんだそうだ。当時は数千の巨大船団で6000万位の人員が居たそうだぞ」
「6000万…それだけの数が居たなら地球はダメだっただろうな」
「率直に言って勝ち目はなかっただろうな…まあそれが500年は前の話みたいでな?方針の違いや各方向への分裂なんかでどんどん数を減らしていったんだと」
「そして現在は100万まで減って何とかなりそうな地球を見つけたと…」
「ああ。他にもあったらしいんだよ。そのまま住めそうな星が。ただそんな好条件な星には自分たちを超える文明が既にあったようで勝ち目なしと判断して退いたらしいな」
「頭が痛くなるような話だ」
「全くもって同意するぜ…まあ…だからよ。ゴール地点は考えてくれよ。完全排除も道ではあるが消耗戦めいた道になるぜ」
「だろうな…種族全ての生存をかけた戦争になるだろうな」
夕闇が空に染み込む中で、ジョーンズの言葉は途切れることなく続いていた。
智之は、その話をしっかりと受け止めるように頷きながら耳を傾けていた。
だが、ジョーンズの語る「異星人の現実」はあまりにも不条理で、そして人類の未来を左右する重い事実だった。
ジョーンズは視線を少し遠くに向けたまま、まるで自身の中で整理するように話し続ける。
「…異星人の中にも戦争を望まない奴らがいるって話はしたよな?」
「ああ。お前の話と自分が直接見たことで、その可能性は信じている」
ジョーンズは目を細め、少し苦笑しながら続けた。
「そいつらが言ってたんだ。地球侵略自体、上層部の『一部』が無理矢理推し進めたんだとよ。種族全体としては、ただ生き延びたいだけらしい」
「種族全体で反対することはできなかったのか?」
「そう簡単にはいかないんだ。連中、母星を失ったあと、長い間コロニーや船団で生活してきたろ?その中で少しでも権力を握る奴らが支配力を強化してきたんだ。追い詰められた種族にとって、反抗する余裕なんてどこにもない」
智之はジョーンズの言葉を聞きながら、ふと異星人の指導部に対して怒りが湧き上がるのを感じた。
「それが理由で戦争を押し付けられるのは理不尽だ」
ジョーンズは同意するように頷き
「だが、これが連中の現実だ。母星を失い、資源は枯渇、兵士も数えるほどしかいない。生き延びるために地球を選んだ。『我々がやらなければ滅ぶ』ってな」
智之はその言葉を受けて考え込む。兵力も資源も乏しいのに、戦争を選んだ異星人。彼らが追い詰められているのは理解できる。
それに軍部が実権を握って強引に事に及ぶなどどこかで聴いた話だと思わざるを得ない。
いや、自分たちもそうではないか?
反対の声を押し切って強引に戦争を継続していると判断できる気もする。
仕方のないこととはいえ、こういった事から組織の崩壊は始まるのかも知れないな…等とぼんやり考えていた。
「それでも、連中は自らの未来を賭けてこの星を選んだわけか」
智之は冷静さを取り戻したように話を続けた。
ジョーンズは肩をすくめ
「そういうことだ。ただ、奴らの中には『これ以上の戦いは無意味だ』と考える奴も少なからずいる」
「その人数がどれだけいるか、分かるか?」
「正確な数は分からないが、異星人の反戦派たちは少なくとも俺たちと話し合いを試みている。俺が見た限り、彼らも戦う力を持たない一般市民のような存在。」
智之は深いため息をついた。
「…我々にはこの情報をどう使うかが問われているな」
「そいつだ。だから、これ以上戦争を続けるにしても、あるいは停戦を模索するにしても、慎重に考えなきゃいけない」
智之は立ち上がり、夜の風に吹かれながら遠くの山並みに目をやった。
ジョーンズの語る話がもたらした真実は、あまりにも重かった。
だが、この情報をもとにどのように進むべきか、自分たちにはその責任があるという思いが胸に芽生えていた。
「…俺ももう少し考えてみるよ。この情報を、どう使うべきなのかを。」
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