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孤星の抗戦  作者: 轟蓮次
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反撃の狼煙3

ジョーンズは部隊へ戻るとすぐに、この新情報を軍司令部へ報告した。

彼の頭の中では様々な疑問が渦巻いていた。

侵略者が人間の脳から記憶を抽出できるという事実は、人類の戦力や技術をすべて把握されることを意味する。

もしそれが現実であれば、彼らが圧倒的な戦略的優位性を持っているのは当然だった。


「司令官、これは単なる戦術情報ではありません。敵は我々の知識を抜き取ることで、戦う前に勝敗を決めている可能性があります」


ジョーンズの報告を聞いたハンセン大佐は深く息を吐いた。


「我々の科学者や軍事技術者が捕まった場合、すべての防衛計画が敵に知られてしまうということか…」

「その可能性が高いです。しかも奴らは生物学的な適応も進めています。我々の肉体を解析し、地球環境に適応しようとしている」


司令部の空気が重くなった。

これまでの侵略は征服でさえなく、彼らの単なる生存戦略の一環だったのだ。


各国の軍事機関ではこの情報が緊急伝達され、科学者や軍事技術者を確保するための新たな命令が出された。

彼らが捕まれば、技術的優位性が完全に消滅する恐れがある。


「すべての研究者を軍の監視下に置き、移動を制限する」

「敵の施設で囚われている人々の救出作戦を検討する必要がある」

「情報流出を防ぐため、通信手段を暗号化し、敵に解析されないようにする」


政府間で緊急会議が開かれ、人類の生存戦略は大きく変わろうとしていた。


地球各地では、侵略者の行動が変化し始めていた。

人類が反撃を試みた直後から、彼らの攻撃はさらに徹底されるようになり、捕獲対象をより慎重に選び始めている様子が確認された。


それに伴い人類の戦意は大きく揺らいでいた。

各地で降伏の声が高まり、一部の勢力は実際に異星人に恭順を示す行動を取り始めていた。


一方で、抵抗する者たちもなお存在し、少数ながら侵略者への攻撃を続けていた。


「このままでは人類の統一性が崩壊する」


ジョーンズは司令部で報告を受けながら、状況の深刻さを痛感していた。


「勝てるかどうかではない。戦い続けることができるかどうかだ」


希望があるのか、それとも絶望に突き進むのか――この境界線の上で、人類は新たな選択を迫られていた。


各地で捕獲された人々は、次々と侵略者の前線基地へと連れ込まれ、そのまま行方不明となった。

ジョーンズが対面した青年の証言によれば、基地内では「処置」が待っていた。

それが何を意味するのかは、今なお不明だったが、確実に生存率は限りなく低い。


「彼らは捕まった人間をどうしているんだ…?」


智之からもらった映像では結果は分かっている。

米軍の諜報部門が分析を進めるも、基地内部の詳細は把握できていなかった。

唯一の手がかりは、生還した青年の話だけだった。


「脳を抜き取られる…情報を抽出される…そして、地球への適応を進めるために我々の生体を利用する」


この事実を前にして、ジョーンズはただ黙るしかなかった。

敵の目的はただの征服ではなく、自らの生存を強固にするためのものだった。


地球各地で状況が悪化する中、人類の内部での意見も割れ始めた。

軍と政府は最後まで抗戦する方針を固持していたが、市民の一部は降伏を求め、異星人との協力を訴えた。


「戦い続けても無駄だ!彼らと対話を試みるべきだ!」

「政府は我々を守れない!異星人に従うしかない!」


各国の都市では抗議活動が始まり、政府の施設や軍の拠点にも不満を抱えた市民が押し寄せた。

そして、過激な一部は直接異星人と接触しようとし、その結果は非情なものとなった。


「異星人に接触した市民はやはり殺害されるか捕らえられたとの報告が入っています」


この知らせが広まると、反戦派と軍の間にさらに深刻な対立が生じた。



人類が混乱している間に、侵略者は新たな戦術を実行していた。

都市部への襲撃を加速させると同時に、地上拠点の制圧をさらに強化。

降伏を口にする者たちすら容赦なく捕らえられ、彼らの狙いが対話や共存ではないことを明確に示した。


「彼らは交渉など求めていない。ただ、目的を達成するために淡々と行動を進めているだけだ」


冴島は防衛省の作戦会議でそう呟いた。

現実は残酷であり、人類が最後まで抵抗しなければ、この星は完全に侵略者のものとなるだろう。



侵略者の脅威が日に日に増す中、ジョーンズの心に巣食った絶望は着実に膨らんでいった。

彼は自分たちの技術が侵略者に太刀打ちできない現実を目の当たりにし、その差が埋めがたいものであることを悟り始めていた。

そんな中、彼の部隊内でも微妙な空気が漂い始めていた。

ジョーンズは部隊のミーティングで、侵略者の記憶抽出技術や生体利用の話題を挙げ、戦況がいかに厳しいかを率直に話した。


「奴らにはこれほどの技術がある。我々が持つすべての兵器や情報など、奴らにとってはおもちゃに過ぎないかもしれない」


その言葉に共感する隊員たちも少なくなかった。

彼らもまた、目の前の状況に疑問を抱き、果たして人類が生き残れるのか、という漠然とした恐怖に苛まれていた。


「隊長どうすればいいんです?この戦いに意味があるのか…勝てるのかも分からない部下たちも精神的に疲れ切っています…」


隊員の一人がこぼしたその言葉は、ジョーンズの胸に深く突き刺さった。

彼もまた同じ問いを何度も自問していた。


戦況がさらに悪化する中、ジョーンズとその部隊は突如として姿を消した。

彼が最後に確認されたのは、通常の哨戒任務に出発する前夜の記録だけだった。

その翌日、連絡が途絶え、基地にも戻らなかったことが発覚した。


米軍司令部には、この突然の消失が深刻な動揺をもたらした。

特に、戦場で多くの功績を上げてきたジョーンズが部隊ごと失踪したことは大きな混乱を引き起こした。


「ジョーンズの部隊が消えた?どういうことだ!」


ハンセン大佐が怒声を上げる中、情報担当官が報告を続けた。


「最後に確認されたのは、夜間の通信記録です。部隊は通常通り行動していたようですが、明朝には完全に姿が消えていました。痕跡も見つかっていません」


司令部はただちに失踪した部隊の捜索を開始した。

ドローンや偵察部隊を展開して周辺地域を徹底的に調べたが、ジョーンズたちの行方は依然として不明だった。

唯一の手がかりは、部隊が行動していた地域に残された微弱なエネルギー反応だけだった。


「この未知のエネルギー反応…侵略者の技術によるものと考えられます」


技術担当官はそう結論付けた。

これにより、ジョーンズたちが侵略者と何らかの形で接触した可能性が浮上した。


基地内では、ジョーンズの消失に対する様々な憶測が飛び交っていた。


「ジョーンズは敵に捕まったのか、それとも…」


一部では、彼が敵と接触し、裏切った可能性を囁く者もいた。

しかし、決定的な証拠がない以上、司令部としては公式な声明を出すことを控えざるを得なかった。

ハンセン大佐は会議室で重い空気の中、部下たちに指示を出した。


「ジョーンズがどうったかは現時点では分からない。だが、消えた事実は動かせない。必ず彼らを見つけ出せ」



一方、日本の国会議事堂内では、日本政府の閣僚たちが厳重な警備の下で緊急会議を行っていた。

侵略者との戦いにおいて今後の国の方針を決める重要な議論が交わされている最中、議事堂周辺には反戦派による抗議活動が増えつつあった。

彼らは「無意味な抵抗を止めろ」「降伏して平和を求めろ」といったスローガンを掲げ、次第にその行動を過激化していた。


冴島は閣僚たちの中心で冷静に状況を説明し、抗戦派の立場から次の行動計画を提案していた。


「侵略者に降伏することは、この国の未来を差し出すことと同義です。我々は最後まで抵抗しなければならない」


それに対し、一部の閣僚は深刻な表情を浮かべながら応じた。


「しかし、抵抗を続けることで国民の安全を守れるのか?侵略者の圧倒的な力を前にして、現実的な道を探るべきではないのか」


この激しい議論が続く中、外部の警備部隊から緊急の連絡が入った。


「反戦派が議事堂内部に突入を試みています!警備が押し返されています!」


議事堂の正面入り口が乱され、反戦派の議員たちが数十人規模で押し寄せていた。

彼らは警備を力づくで排除しながら内部に進入し、会議室へと向かっていた。


「抵抗はもうやめるべきだ!国民の命を守るため、降伏を交渉しなければならない!」


反戦派のリーダー格と思われる議員が叫びながら進み、一部の警備員たちも押し返されている様子がモニター越しに映し出された。

急いで脱出準備をしなくては。


「ここはもはや安全ではありません。全員、別のルートで退避する必要があります」


なぜ一丸となって身を守らねばならない時にこんな馬鹿が現れるのか冴島には理解できない。

降伏?そんな事をしても安全は保証されないだろう。

拐われた者がどんな結末を迎えたのか知っているはずなのに何故それが解らない。


冴島は冷静に避難ルートを指示し、近隣に待機している自衛隊の援護を要請した。

警備員たちも素早く対応し、閣僚を別ルートへ誘導するため動き始めた。


「こちらです!早く!」


閣僚たちは緊張した表情を浮かべながら裏口へと走り出し、反戦派の侵入をギリギリのところで逃れることができた。

冴島は脱出グループの後方に付き、追手を警戒しながら冷静に動いていた。



反戦派が会議室に押し寄せるも、すでに閣僚たちは姿を消していた。

これに激怒した反戦派は周辺を探し回りながら、その場を混乱させ続けた。

一方で、冴島たちは無事に近隣の防衛拠点へ到達し、さらなる攻撃に備えた。


「全員無事だな。これでひとまず安全は確保された」


冴島が確認を終えた直後、閣僚の一人が静かに言った。


「いずれ、こうした混乱は全国規模に広がるだろう。我々が抗戦を続ける限り、国内の安定は難しい…」


冴島はその言葉に答えることなく、ただ黙って遠くを見るのだった。



議事堂での反戦派の突入を辛うじて逃れた冴島と閣僚たちは、秘密裏に都内の地下へと移動を開始していた。

目指す先は、東京都内に存在すると噂される有事の際の施設――都市伝説として語り継がれてきたその場所へ。


「ここへ向かうなんて信じられないが、本当にそんな施設が存在するのか?」


閣僚の一人が不安げに呟きながら、自衛隊員たちの誘導に従って歩を進めた。

第二次世界大戦の時代に極秘裏に建設され、その後長らく存在が忘れられていたと言われている。

しかし、特定の緊急事態が発生した際に限り使用されることが可能だという。

また、極秘に各種の整備も機密費によって行われ、最新の設備も利用できる。

冴島は冷静に答えた。


「現在の状況を考えれば、使用するしかない。この場所があれば、少なくとも安全を確保できる」


その言葉に、周囲の閣僚や警備員たちは一時の安心感を得たようだった。

閣僚たちと自衛隊員たちは、都内の地下道を慎重に進んでいく。

背後には反戦派が追跡してくる可能性もあり、一刻も早く避難所へ到達しなければならなかった。


「警戒態勢を維持しろ。接触があった場合、即座に報告を入れるように」


冴島は部隊に厳しく指示を出しながら、周囲を見渡した。

この地下道は長い年月を経て使用されていなかったため、薄暗く湿気が漂い、不気味な雰囲気を醸し出していた。


「あと少しです。この先に施設の入り口があるはずです」


案内役の自衛隊員が言うと、全員がその言葉を頼りに歩みを進めた。

地下道の突き当たりに設けられていた重厚な鉄製の扉を見た瞬間、閣僚たちは足を止めた。

その扉には複数の暗証コードが必要であり、操作が完了すると静かに開いていった。


「これが避難所か…本当に存在していたとはな」

「ああ…まあ仕方のない事だが、当分は穴蔵生活だな」


扉の向こうには、10人程度が安全に生活できる設備が整った広々としたスペースが広がっていた。

簡素ではあるが、電力供給や通信設備、食料備蓄が揃い、有事の際の拠点として十分な機能を持っている。


冴島は周囲を見渡しながら言った。


「ここにいる限り、ひとまず安全だ。次の行動計画を立てるまで、この場所を拠点とする」


閣僚たちは疲れた様子で椅子に腰を下ろし、一息ついた。

反戦派や侵略者からの脅威が迫る中、この影の避難所が今後の抗戦計画の重要な拠点となることは間違いなかった。




読んで頂きありがとうございます。

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