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~神仰世壊~  作者: アミガシラ
1/1

進行された日常を守るための信仰

 『…特に何もない、変わることもない。そんな日々ばっか。欲しいものもこれから増えていって、いらないものもこれからたくさん増えていく。桜目歌奈、彼女は齢6歳にしてそんな悟りもどきを開いていた。100センチにも満たない身長に、肩まで伸ばした薄紅色の髪。真空色の瞳は淡い光を反射していた。』


何も変わらない、ただただこのまま過ごしていって、生きている途中でちょっとした幸せを見つけ、その幸せを吸い尽くし、ちょっとだけ、嫌なことがあって、それらを解決して…私は生きていく。そう思っていた…あの日までは…


 『2400年、8月24日…天進負元』


「こ、こちら桜松県、三ツ沢市です!今から4時間前に現れた謎の生命があたりを壊しています!!この辺りは文字どうり世紀末…まだ避難できてない人は今すぐひなしてください!!」

そんなアナウンサーの声が私のすぐ近くで響く…驚いた、こんな状況でも避難せずにここに来るもんなんだ…早く逃げたらいいのに。そんなことを思いながら、まさに命がけで情報を流してるアナウンサーを私は倒れながら見つめた。スーツに身を包んだ姿でマイクを持ち、こんな状況でもなるべく冷静に説明している。アナウンサーと周りにはカメラを持っている人たちもいる。

「ん?お、おい!あっちに子供が倒れていぞ!早く救助しに行くぞ」

カメラやマイクなどの仕事用具を置いて、こっちに来る…助けてくれるのか、すごいな…この人、こんな状況で自分のことよりも他人を優先する…そんな人、物語の中だけだと思っていたけど、この世界にもいるんだ…


「よし、もう大丈夫だからな、今までよく耐えた、名前は言えるか?」

「わ…私の…名前…さ、桜目…」

そういった瞬間、私は全身から冷や汗が出た。なぜだかわからない、突然目が痛んだ、その後すぐ助けてくれたアナウンサーの後ろに何かが来ているのを漠然と感じてしまう。根拠はない、どうしなのかわからない。だが、漠然と私の本能と知性がそう感じてしまった。


 歌奈がそう感じた瞬間後ろにあったビルが崩壊する。そこにいたのは先程までこのあたり一帯を崩壊させたサソリ型の生物…銀色の装甲をまとい、手足や尻尾は鋭く、人を突き刺すくらい造作もないような形だった。磨かれた装甲はあたりの光を反射し、目は赤く光っていた。そして、歌奈たちを殺意の目で見つめていた。


「これは、まずいかも…君、逃げることはできる?」

そんな言葉が聞こえてくる、しかし私はもう、立って歩く気力すらもない。

「ぐぎゃぁぁぁああああ!!!」

サソリ型をした生物が、爪を立てた。明らか殺意の目でアナウンサーやカメラマンたちのほうをみて、磨かれた足を上にあげ、一突きしようと振り下ろす…男は直前で後ろを見るが、刺されるまであと少しのところだった。

…………

だが、その刃が男たちにあたることはなかった。



【式波巡流】…≪しきなみじゅんりゅう≫

 『突如として、もう一人の声が響いた。周りに響かせた。透き通るような声は女性と思われ、柔らかい音が声の主と思われる人物の若々しさを保っていた。そして、女性の発現した音に乗るように波が流れ、サソリ型の生物を包み込むかのように囲い、振り下ろした足を寸前で止めた。』


【五十嵐】…≪いがらし≫

 『再び女性が声を発した。そして発した声の音と調律するかのように、サソリ型の生物を囲み、閉じ込めていた水が動き出した。サソリ型の生物の行動を制限していた水が離れた、制限が外れた状態…サソリ型の生物が再び攻撃をするまでに五秒しかたたなかった。』


 『しかし、その攻撃が歌奈達に届くことはなかった。サソリ型の生物は五秒で攻撃を始めた、だがそれよりも早く女性の音によって操られた水が、バラバラになり、大きさは一センチもないほどまでの球体となり、数百はあるであろう水の球体たちは、まるで美しい渓流のように流れ、サソリ型の生物を貫いた。貫かれたサソリ型の生物は、先程までのことが嘘のようにおとなしくなり、その場に倒れ落ち目の色が消え、これ以上動くことがないのが容易に分かる。そして、数百おもある水の球体は一つにまとまり、重力に沿って地面に落ちていった。』


「あなたたち…大丈夫?」

さっき私たち助けた女性が話しかけてきた。身長は150センチほどだろうか、お母さんに比べたら一回り小さい…でもきれいな淡い波色の髪はお母さんよりも長く、腰ほどまで伸びて、風にゆらゆらと優しそうに揺れていた。

「あ、あぁ、私たちもこの子も大丈夫だが…君は、いったい何者なんだ?」

アナウンサーの人が女性に対し質問をした。私も気になっていた質問、さっきの水がまるで生き物のように動く超常現象…現実的に考えて絶対にありえないことをまるで当たり前かのように操っていた。水を操ってるときあの人はまるで水神のように美しかった。

「あぁ私?…私はあんな感じの化け物どもを一掃することを命じられたものだよ、詳しくは言えないけど…そんなことより、君…見た感じかなりの距離を歩いてきたと思うけど大丈夫?親御さんとかいる?」

「ううん、わからない、あの化け物が出たとき家に一人で」

「そうか…なるほど…」

そういうと女性は私を背中にのせておんぶする。

「ねぇ、そこのアナウンサー、この子連れてっても問題ないよね?」

「え、えぇ…まぁ、特別問題はないが…」

「そ、じゃあこの子は私が連れていくね。それじゃあ行くよ」

そういって、女性は私を連れて歩き始めた。親がどこにいるかわからない今、住める場所を提供してくれるこの人には本当に感謝しかない…

「あ、あの」

「うん?なんだい?」

 『とある団地の一つの道…さわにおんぶされている歌奈は、さわに話しかけた』

「きょ、今日はいろいろありがとうございます。命を救ってくれたのと…保護者になってくれたの…」

「あぁ、いいよ別に。それに、命のほうならあのアナウンサーもどきに感謝したほうがいいよ。あいつがいなかったら多分君が今生きていたか怪しいし」

「え?どういうことですか?それにもどきって…」

「ん?あぁ、こっちの話。それと君名前はなんだっけ?」

「あっわ、私桜目歌奈っていいます」

「桜目?桜目、桜目かぁ…じゃあ君は今日から波守を名乗りな、私が保護者だからね。それと私の名前は波守さわだ。これから長い付き合いになると思うからよろしく」

「波守?…わかりました…でもどうしてですか?」

「ん~?、まぁ…いろいろあってね。ざっくり説明するととっても凶悪な人がいたんだけど、その人の苗字がちょうど桜目でね…その人たちの一員と思われないよに~とか…まぁ、大人の都合ってやつだよ、君が気にする必要はない」

「大人の都合…どういうことなのかよく、わかりません」

「ふふっ、そうだろ?私もよくはわかっていないのさ」

「そう…なんですか…あっすいません…なんだか眠くなってきて…」

「そうか、なら寝るといいよ、今日はたくさん歩いて疲れただろう。ゆっくりお休み」

さわさんのその言葉を最後に、私は眠りについた。突然の非日常に、長時間歩いたことの疲労、私の意識は深く沈むのだった。


 『今日歌奈の中では2つの考えが変わった。一つは永遠は続かないこと、今がまさにそうだろう、火が出て血の匂いがはびこる…昨日だと考えられないことだ。美しく変わらなかった世界が醜く変わっていった。二つ目は心の在り方だ、自分を捨てても誰かを助ける心、そんなものに歌奈は憧れた、自分もそうなりたいと思った…自分を殺してまでも……』


「はぁ、まったく。上の命令もあらいね」

「まぁまぁ、そういうなよ、その立場を望んだのは君だろ?」

 『暗い団地の公園にて、波守さわと、フードを深く被った男が話をしていた。』

「何を言う、こんなことを知っていたら私は乗らなかったさ」

「まぁ、君の性格上、子供を殺す以前に、人を殺すことすら躊躇うような感じだからねぇ~………でも、おかげさまで上のほうでは十分問題になってるよ。”桜目”一家が起こした負の次元への介入、それによる謎の生命体の発生、そしてその生命体の対抗策と思われている神の涙が各地にて発生、それによる神の力が発現したものが、現在確認されている限りで軽く数万は行くぞ。そして発現した神の力を正しく使うものばかりではない、力に溺れ、自己満足の為に使うものもあらわれてくるだろう……そして、これらすべての元凶と思われる、桜目正則≪まさのり≫と桜目恵果≪けいか≫、その両名の行方が消えている。そして今上はその二人の子供とされている≪≪桜目歌奈≫≫を指名手配し、その所在を探していたが…驚いたよ、まさか君があの場面で連れていくとはね。」

「私のほうこそ驚いたよ…まさかあなたがあの現場で”アナウンサー”のふりをしてあの子に接触していたとはね…」

「まぁ…その決断に至ったのにはいろいろな過程があったんだよ…てか、そんなことより君はどうするんだい?あの子を家に置いとく…それはつまり、上の命令に背くこととなり、この国はおろかほぼ全部の世界で君は指名手配されることになるよ」

「まぁ…それは承知の上だ、上の方には占い関係の力を持ったものだっているだろう、だからそいつらにばれないうちに、私は行方をくらますことにするよ、それに隠れ場所がばれたところで仮にも私は、今のところ『世界第六位』そう簡単にはやられないさ」

「そうか…まぁ、僕自身としてもあの子には無事でいてほしいからね、それじゃ、僕はもう帰るよ」

「わかった…今度会うときは何年も後だろうけど、その時はよろしく」


「はぁ…わかってはいたことだが、これからは大変なことになるだろうな。桜目歌奈…上は捕まえ次第多分死刑判決を下すだろうな……でも、そうはさせない、あの子は私たちの、平和への最後の希望…何があっても上に渡さない…」

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