肩こり戦士と肩もみ勇者
「あー肩凝る。」
ウチのパーティの女戦士さんが、また自分の肩を揉みながら、肩凝りアピールをしている。
ウチの女戦士さんは黒い長い髪の美人さんで、装備はお馴染みのビ赤いキニアーマー。なので、ところどころに鍛え抜かれた褐色の肌が露出し、お腹は腹筋バキバキのシックスパックである。
それで彼女が何で肩が凝るかというと、筋肉質の体なのに、胸だけはふっくらとたわわに実った爆乳なので、肩が凝るのだろう。
あっ、ちなみに俺は冴えない勇者です。
「勇者、また揉んでくれよ。」
やはり頼まれた。これを頼まれると、違うとは分かっているのに自然に胸に目が行ってしまう。
「コラッ、だから胸じゃないって。肩に決まってんだろ。」
「エヘヘ、そうですよね。」
ここまでが一連の流れ。もう何百回と繰り返して御家芸になりつつある。
"モミモミ"
「はぁー、本当に肩揉み上手くなったなぁ。勇者よりマッサージ師の方が向いてるんじゃないか?」
「あっはは♪良いですねぇ♪平和になったら資格取って開業しちゃいましょうかね♪」
こんな風に軽口を言い合いながら、のんびりとした魔王退治の二人旅をしていた。ずーっとこんな時が続けばいいのに、と考えていたが、旅というのは終わりがある。
二人で魔王を激闘の末に退治し、名残惜しいが女戦士さんとは別れて、俺は自分の生まれ育った町に帰った。
〜三年後〜
「ありがとね。勇者様。おかげで楽になりました。」
「いやいや、礼を言われる程のことじゃないよキムおばさん。また来てね。」
どうも勇者です。本当に故郷の町でマッサージ師の資格を取り、【勇者のモミモミ屋】というセンスのある名前のマッサージ店を開業した。
開業して二年目だが、勇者の名前を使って売名行為しただけあって、大変に繁盛している。店員も増やして、何なら二号店も出す勢いである。
"カンカラカーン"
店の入口の鐘がなったので、俺は笑顔でそちらの方を向いた。
「はい、いらっしゃーい♪」
「よぉ、繁盛してるみたいだな。」
驚くべき来客の登場。なんと女戦士さんが訪ねに来てくれた。相変わらずの赤いビキニアーマー姿が懐かしく、あの頃と変わらぬ美しさだ。
「女戦士さんは王国騎士団の団長になったと風の噂に聞きましたが、どうしてこんな辺鄙な町に?」
「ふん、平和になったのに騎士団長なんて退屈なだけさ。適当に後釜を育ててからやめてきた。」
「えっ?そうなんですか?それじゃこれからはどうするつもりで?」
「うーん、まぁ、当てはある。今はそんな話より、とりあえずマッサージしてくれや。相変わらず肩が凝ってな。」
「あっ、はい、分かりました。じゃあそこのベットにうつ伏せになって貰えますか?」
「おぅ。」
フッフ、この3年で俺のマッサージの腕も格段に上がっている。それを今女戦士さんに披露しよう。
と、意気込みは良かったのだが、肝心のマッサージを開始することが出来ない。
何故なら女戦士さんは、うつ伏せではなく仰向けに寝てしまっているからである。
「あ、あの・・・女戦士さん。うつ伏せって言いましたよね?」
「あぁ、そうだな。」
そうだなと言いつつ、体勢を変えることをしない女戦士さん。一体何のつもりだろう?
それにしても、相変わらずの爆乳だ。こうなれば久しぶりにお約束のあのネタをやってしまおう。
「じゃあ、揉ませてもらいまーす♪」
そう言いながら俺は女戦士の両房に手を伸ばす。このやり取りも懐かしいなぁ。
が、しかし、いつものようにツッコミが来ない。これはとんだ肩透かしだ。
「あ、あの、このままだと胸揉んでしまいますよ?」
俺がそう聞くと、女戦士さんの顔が段々と赤くなってきて、こんなことを言い出した。
「い、いいぞ揉んでも。」
「・・・はい?」
突然のことに俺の目は点に。一体女戦士さんは何を言ってるんだろう?
「い、意味が分からないんですが。」
「だ、だから胸を揉みたいんだろ?なら揉んでみろよ。」
「い、いや、あ、あの・・・えっ?何言ってるんですか?」
「さ、察せよ!!そういう覚悟でアタシはここに来てるんだから!!」
急に怒鳴られたが、これにより俺は全てを察した。俺って男は、そんなに察しの悪い男じゃない。
「お、女戦士さん、待っててください!!店の看板をCLOSEにしてきます!!」
「は、早くしろよ!!」
「りょ、了解です!!」
その後のことは語るに及ばず、皆には色々察してほしい。
まぁ、言える範囲で話せば、店の名前が【勇者と戦士のモミモミ屋】になったことと、一年後には俺に嫁と子供が出来たってことだけさ。