イルス
魔獣の件から数日が経ち、村も復興が進んできた。
「シンヤ、お願いがある」
シンヤは魔術師のケーブに呼ばれた。
「ケーブさんどうしました?」
「お主これから町に買い出しに行くんだろう? その時に、わしの息子のリッグにこの手紙を渡してくれ。あと、困ったらリッグに頼れ」
「わかりました」
シンヤは今日の夕方に、この村の統治を任されている都市、イルスに出発し、足りない薬や道具を買いに行くことになっていた。
シンヤは準備をして、シルフと共に玄関の前に出る。チャークやジン、それにマリカも見送りをする為に家から出てくる。
「シンヤ、町の人は冷たい人が多い。気をつけろよ」
チャークから忠告を受ける。チャークの目はまっすぐとシンヤの目を見ていて、真剣さが伝わってくる。
「じゃあ、行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
「気をつけてね」
「いろいろとお願いね」
そんな見送りの声も少しづつ聞こえなくなっていく。
──数時間が経ち日が落ち始める。野営をし、ウサギを狩って今夜の食事にする。
「ほら、シルフ」
シルフには木のボウルに焼いたウサギ肉の半分をあげ、シンヤはミートスープにし、パンと一緒に食べる。
「ゴクッ──あぁ、うまい! シルフ、どうだ?」
シルフは短く吠え、シンヤに応答する。
「あぁ、そうか! よかった。よかった」
夕飯が終わったら、することも無くすぐに、床に就く。
──朝日が登り始める頃に、出発する。
かなり時間がかかったが、昼になる前にイルスに着くことができた。
「シルフ、先に道具を買って、リッグさんの所に行こう。帰りに薬だな」
イルスの外側は石レンガの壁で内部が見えない。シルフと共に高い壁の門をくぐる。イルスの街並みは赤いレンガ造りの家が立ち並び、白いレンガを敷き詰められ、作られた大通りにはたくさんの人が歩き、店はいくつもある。
その通りを真っ直ぐ行った所に小さな城があった。小さいと言っても、城門前には川が流れており、白いレンガの橋がかかっている。高さは四階程あり、それよりも高い塔のような建物もある。そんな城だ。
大通りを少し進み、十字路で曲がり少し狭くなる道に鍛冶屋の看板をみつけ、片開きのシンプルだか、清潔感のあるドアを開けて中に入る。その店には、剣に盾、弓にナイフなど様々な武器が価格札と共に並べられている。
そんな武器を横目にカウンターに進む。
「おーい、誰かいるか!」
奥からガタイのいい男がでてきた。その男の容姿は、頭は黒い短髪で髭も少し出ていた。
「お、何の用だ」
「斧四本とハンマーを七個、売って欲しい」
「あー、待ってろよ」
男はカウンター下からハンマーが入った箱を取り出し、奥の部屋から斧を五本持ってくる。
「好きなものを選べ」
シンヤは必要な数を手に取り、銀貨と銅貨を出す。
「あぁ、そうだった」
シンヤは店を出ようとする足を止め、口を開く。
「ん? どうしたんだ?」
「リッグ・リーグっていう男を知ってます?」
「リッグとは俺のことだが、何か用か?」
「リッグさん、ケーブさんがこれを」
シンヤは驚きながら、手紙を渡す。
「おぉ、ありがとよ! お前さん名前は?」
「俺の名前はシンヤ・ギルグット。こっちの狼はシルフです」
「シンヤ、奥で休んで行け」
そう言って、シンヤとシルフを案内するように店の奥に入っていく。
奥には物置があり、たくさんの武器や道具が保管されている。リッグは物置の更に奥にあるドアを開き、シンヤ達を入れる。その部屋はキッチンダイニングで長方形の机があり、椅子が四つ並べられている。
「そこで休んでいいぞ。少し待ってろ、飲み物を出してやる」
そう言ってキッチンの方へ移動し、作業を始める。シンヤは言われた通り、椅子に座り、シルフは足元で丸く寝る。
「コーヒーで大丈夫か?」
「コーヒーで大丈夫です」
「成人したばかりということは、お前今、15歳か?」
「はい」
「15にしては落ち着きがあるな」
そう言いながら、両手に持ったコーヒーを机に置き、シンヤの正面に座る。
「すまない。今、読ませてもらう」
リッグは手紙の封を開け、手紙を読み始めた。
──しばらくして、リッグが口を開ける。
「少し待ってろ」
リッグは物置から袋を取り、机に置く。置かれる際、袋からは金銭の音が聞こえた。
「これをやる」
中身を見ると、中には銀貨十数枚と銅貨が数十枚入っていた。
「こんなに、どうして?」
「俺の父さんがお前を助けろと。父さんが言うには、お前の父さんと仲が良くて、お前のことを孫だと思っとるらしい。だから、俺とお前は叔父と甥っ子の関係だと思って、何でも頼れよ!あと、楽にしていいぞ」
そう言って、歯を見せて大きく笑う。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
そう言って、袋を手に取る。
「薬は裏の通りにあるぞ。飯を食べてから行け。用意してくる」
リッグはキッチンに行き、何かを作り始める。
「あぁ、シンヤ、外に出たらなるべく早く、この町を出ろ。あまり、いいとこじゃないぞ」
そうリッグが話しているうちに、トーストのようなものとスープが机に配膳される。シルフには、肉の燻製と、何種類かの野菜を細かく切って炒めたものが出される。
「ほら、よく食べろよ。シルフお前もな」
「おぉ、これ美味しい!」
その料理のメインは、カリッとしたパンに溶けたチーズと香辛料がかかっており、ピリッと辛いトーストで、スープには野菜がゴロゴロ入っており、野菜の甘みがよく出たスープだった。
「だろ!」
リッグはものすごく嬉しそうな顔をする。




