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討伐

魔獣だった物はその場に倒れる。


シンヤとヘリーはすぐさまチャークに駆け寄る。


「父さん! 大丈夫?」

「あなた! 大丈夫なの?」


二人の声が重なる。


チャークは意識は無いが、息は微かにしていて、ヘリーとシンヤはほっとする。だが、ほっとしたなのも束の間、物音がシンヤ達の背後からし、二人は振り向く。


魔獣から魔力が溢れ出て、魔獣の傷口が塞がっていく。


「なんだよ…これ」


シンヤは声が詰まる。


「落ち着いて、殺せるかは分からないけど、急所の首を切り落とすよ」


シンヤはヘリーと顔を見合わせて、頷き、弓に矢をつがえ、矢を放つ。矢は魔獣には刺さるが相変わらず効果がない。


シンヤは考え、辺りを見回す。足元にはチャークの剣が落ちていて、それを拾って構える。


「母さん援護を頼んで大丈夫?」

「本当は止めるべきだけど…任せなさい」


シンヤは魔獣に近づき、ヘリーは魔獣の攻撃を阻止するように矢を放つ。


シンヤは魔獣の左脚に狙いを定め、魔獣の攻撃を回避しながら何度も同じ所を切りつける。


魔獣の左脚の傷が広がり、左に倒れる。


「よし、オラァーッ!」


魔獣の首に体重を乗せて刃を落とす。


──が、刃は切込みを入れたたげで、何度も力を込めて刃を振るうが刃は通らなかった。


魔獣はシンヤを振り払い、起き上がる。


シンヤは怪力で飛ばされ、意識が有るものの、衝撃で吐血する。


「ブハッ、ゴホッゴホッ…」


シンヤは立っていられるのが限界で、気力も残っていなかい。


「シンヤさん!

『キュアヒール』」


マリカがシルフに跨りながら、シンヤに駆け寄り回復魔法をかける。


「マリカ、ありがとう」


「『能力補助、同時付与──加速──筋力上昇──硬化』」


シンヤはマリカに補助魔法をかけられる。

シンヤとシルフは魔獣が捉えられない速度で、魔獣の脚を切りつけ、魔獣の重心を偏らせる。

魔獣は倒れる直前で前脚を地面につき耐え、機動力は奪えなかった。


「『ピアシングアロー』」


ヘリーが放った矢は魔獣の前脚を貫き、魔獣の体制を崩す。


「首だ!」


倒れた魔獣の首にシルフが噛み付く。


「『フレイムブレード』」


マリカの魔法でシンヤの持つ剣に炎が纏わり、シンヤはその剣いっそ強く握り、刃をシルフが付けた切口に振り落とす。


「この、野郎! ──オラァァッ!」


魔獣の大きな首は勢いよく切り飛ばされ、広場で転がる。


「よし、終わった…」


シンヤの言葉からは疲れが読み取られ、完全に治ってない体は地面に倒れ、意識が消える。


「シンヤさん!」



──シンヤはゆっくりと目を開ける。


「ここは、家か? んっ?」


シンヤが違和感を覚え、視線を落とすと包帯を身体と頭に巻かれ、ベットに横になっていた。その横ではマリカが椅子に座り、体重をかけ眠っていた。


「魔獣は殺せたのか…。よかった」


ぼそっと口に出し、マリカの頭をごく普通に撫でていた。


(綺麗な銀髪だ…サラサラしている。)


「っん…シンヤさん?」


「おはよう。マリカ」


「な、なんで、頭を撫でてるんですか!?」


マリカは顔は赤くし、慌てる。


「あっ、す、すまない! 嫌な思いをさせた」


シンヤはふと我に返り、慌てて手をどける。


「あの、そんなに私の髪はいいですか? 別に嫌ではないんです…」


シンヤの手を取り、声と体を小さくし、恥ずかしそうにする。


「どちらかと言えば、撫でて欲しいです…」


先程よりも恥ずかしそうに身を縮こませる。


「魔法補助、助かった。効果は抜群だったよ。しかも、詠唱を簡略化するなんて、マリカの魔力操作の才能には勝てないな」


落ち着いた声で話しながら、マリカの頭を撫でる。


「ありがとう」


マリカはさっきの恥じらいは嘘のように、声のトーンと大きさが上がり、赤かった顔も満面の笑顔にかわる。


「そういえば、俺はどれくらい寝ていた?」

「六日間です。体は大丈夫なんですか?」


体を起こし、声色は悲しげに応え、質問する。


「少し、違和感があるがいつも通りとそう変わりないな」

「ほ、本当に…よかったです…」


シンヤをまっすぐ見つめるマリカの目には涙が浮かんでいた。


「ごめん。マリカを心配させた。もう、大丈夫だから笑顔になってくれ」


マリカは頷き、涙を拭う。シンヤも起き上がり、ティンダル邸にいることにやっと気づく。


(この村の統治を行っている貴族だけあって、立派な家だな。)


そんなことを考えながら、服を着て、マリカと共に階段を下っていく。


「大丈夫なのシンヤ?」


ヘリーが一階に一人でいた。


「俺は大丈夫だけど、父さん達は?」

「ジンさんと父さんは元気だけど、傷でいったらかなり重症よ。ポピーさんは、今ケーブさんに会いに行ってるわよ」


父さんに挨拶するように言われ、父さん達が寝ている部屋に行く。


「おぉー、シンヤ! 起きたみたいだな!」

「また、うちのマリカを連れてますね」


二人は、ベットで横になっていたが笑顔で冗談を言える程に元気だった。


「もう、すっかり元気だよ。二人共、マリカと俺をからかうのはやめてくれ、疲れてるんだ」


ワザと呆れた顔で話す。


「まぁ、無事でよかったよ」

「二人も無事でよかった」


村の人も全員無事、誰も命を落とすことはなかったが、村の四分の一は、崩壊してしまったのだった。

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