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相棒探し

その日はシンヤが成人してから、初めての春、シンヤはチャークに連れられ山の深くまで、昔のチャークにいたように相棒を探しに来た。相棒となるのは狼だった。


魔力を媒介にして契約をするらしいが、残念ながらシンヤには必要量の魔力がなく、媒介に血を使う方法を教わった。


夕日が木陰を貫いて辺りを赤く染めた。シンヤは初めてこんなに綺麗な景色を目にしておもわず気が緩みそうだった。その景色を後ろにシンヤは耳をいつも以上に澄ませる。微かな狼の遠吠えも聴こえるくらい耳を澄ませた。


いくつもの狼の遠吠えが聞こえた。だがシンヤは耳を澄ましつづける。身震いするほど綺麗な遠吠えを耳が捉えた。


「あれだ! 父さんは帰っていいよ。どれだけ離れているか分からないけど五日以内に必ず家に戻るから」


勢いよく言葉がでたシンヤの顔は笑っていた。


シンヤは肩にチャークがくれた弓を下げ、左腰のベルトには使い慣れた木の柄の投げナイフを三つ、後ろ腰にはいつもシカやイノシシ狩りに使っているナイフを一本、右腰には矢がパンパンに入った矢筒を下げて、いつもの毛皮のコートを羽織、出発する。


月明かりに照らされほのかに見える獣道を走った。時々立ち止まり耳を澄ませた。先程聞こえた遠吠え。他の狼とは違う透き通った遠吠えの響きを確認し、再び走った。


それを何度も繰り返し、遠吠えのする方へ少しづつ近づいていった。月が雲に隠れ、暗闇が覆う森になっても走った。


いつの間にか朝日が昇り、狼の遠吠えも聴こえなくなった。朝になったら、イノシシやウサギを矢で射って、火をおこして焼いて食べた。そして、夕方まで木の上で体を休め、夜は走り続けた。


それを繰り返すうちに三日経っていた。着実に近づいていたが狼も移動していた為近づくのに時間がかかる。



その頃家ではチャークは家でソワソワしていた。


「あなた、シンヤは凄い子よ。だって、私たちの子供なんだから。ね、そうでしょ?」


「あぁ、分かっているんだが、どうもじっとしてられない」


そう言って、玄関の扉に向かおうとした。


「待って、せめてシンヤが言った五日間だけあの子一人でやらせましょ…」


へリーの言葉にチャークはとどまった。


「あぁ、分かったよ…あと二日だけだからな…それ以上、日が経ったら好きにさせてくれよ…」



夜の森に狼の遠吠えが響き、それに反応するように森が風に揺れ唸る。


シンヤは遂に目当ての狼に逢えた。


その狼の毛並みは野生とは思えないほど綺麗に整い。その毛は月明かりに照らされ銀色に、シンヤを睨む瞳は紅く輝いていた。また、その狼の大きさはシンヤよりは少し小さいが腰の高さ程あり、狼とは別の生物にも見間違えるほど大きかった。


その雄々しく偉大な姿に圧倒されていた。


その狼を中心に、十数匹の狼がシンヤを崖の上から見下ろしてた。


少し強めの風がシンヤの頬を掠めた瞬間、十数匹の狼が勢いよく崖から跳び、崖の突起に足を掛けながら物凄い速さで降りてきた。


弓を構える。


──右側にいた狼の一匹がシンヤに向かってきた。その狼を殺さないよう脚を狙う。矢が放たれ、狼の革を貫通する。射たれた狼は倒れ込み死んではないが動かなかった。


他の狼達も動きだした。狼が左から向かってきた。左肩を後ろに反らし牙が肩を掠めるギリギリで躱し、真正面にいた狼が跳びかかってきたのを右側に転がるように躱し、右手で投げナイフを構え狼の着地地点へ透かさず投げる。狼の脚に刺さった鈍い音がしたと同時に狼が弱々しく鳴き転がった。右へ振向き、目の前で跳びつく狼を右脚を大きく振りかぶり蹴る。鈍い音と共に狼の胸骨に脚が沈み、狼が勢いよく飛んだ。


「まず、三匹!」


崖の上では白銀の毛並みの狼はシンヤを試すように見下ろしている。だが、シンヤはお構い無しに戦う。


矢が狼の脚にあたる。


「狙い通り」


弓を構え、正面の狼をねらう狙う。


そして、一匹また一匹と減らしていく。


「あと少し、」


油断した。


背後から飛びついてきた狼に気付かず振り向いた瞬間押し倒されてしまった。


「──くそ!」


あと、二、三匹残った狼がいっせいに向かってくる。


シンヤは狼の顎を右肘で上へ反らせながら、腰のナイフを取ろうとする。ナイフを取り出し、狼の脚に刺し、狼を上から退ける。だが、他の狼がすぐ近くまで来ていた。シンヤはその場ではねおき、向かってきた狼を蹴りと殴りで倒す。


「終わった…」

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