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目覚めと家族

小さな村の離れにある木造の家の中、女性が楽しそうに子供に話しかけていた。


「こっちだよ。そうそう、歩くの上手になったね。シンヤ、その調子。こっちこっち」


黄土色のロングヘアで、髪と同じ綺麗な瞳の女性、ヘンリーだ。シンヤの母親だ。彼女は優しく、いつもニコニコと笑顔を浮かべている。


そこに一人の男性が近付いくる。


「ヘンリー、歩かせるのは早いんじゃないか? まだ七ヶ月だぞ?」


その男性はヘンリーよりも背が高く、ヘンリーより濃い髪色をした短髪と黄色の虹彩の瞳がよく目立つ、シンヤの父親、チャークだ。彼もヘンリーと同様、ニコニコしていた。


「そう? こんなものじゃない? 狩人になるならこれぐらいヤンチャがいいのよ」

「そうかぁ…。けど、七ヶ月でこれは凄い成長だな」


困った顔をしながらも、シンヤの成長には驚いていた。


そして、ほのぼのとした会話を楽しそうに続けていた。




シンヤが五歳になりある日のこと。


「チャーク、いますか?」


ドアがゆっくり開く音と同時に落ち着きのある男性の声がした。


「お久しぶりです。へリーさん。ポピーと一緒に飲みに来たよ。もちろんマリカも一緒です」


金髪の整えられた短髪と碧眼をしたジンがマリカを抱っこして入ってくる。


「チャーク、ジンさんよ」


チャークが扉の奥から出てくる。


「おぉ、ジン! 久しぶり!」


二人の背は同じぐらいで、グータッチで挨拶する。二人は昔ながらの大親友で、お互い目を合わせるや否や嬉しそうな顔をする。


「久しぶりです。 オリィの成長はどうですか?」

「いい感じだな。まだ五歳なのにもう弓を使っているんだよ。けどな、魔力はあまりなくてな」


この世界には魔法を使うための魔力が存在するが、シンヤには最低限の魔力量もないと言われていた。


「魔力は、そのうち出てくるでしょう。うちのマリカは二歳なのに魔力操作の才能があると、ケーブさんが言っていました。最初に聞いた時は驚きましたよ」


ジンはシンヤをフォローしつつ、マリカの自慢をする。


いい大人が自分の子供を自慢しあうが、悪い雰囲気は一切せず、楽しそうな会話をしていた。


へリーとポピーは母親同士、こちらも楽しそうに会話していた。


その日の夕飯にはティンダル家のジンと桃色の髪と髪と同じ色の眼をしたポピーがいた。二人に挟まれるように薄ピンクの銀髪でピンク色の可愛らしい瞳のマリカがいた。


その日は騒がしく楽しそうな声が聞こえる夜になった…



ある日の昼前、矢が風を切り、目標に当たる。


「よし! どうだ父さん! 俺も、母さんみたいに百発百中だよ!」


イノシシやシカなどを狩って自給自足の生活、シンヤのいつもの生活だ。シンヤは、夜の月明かりに照らされた森の様な深い青髪に家族の誰とも違う髪と同じの深い青の瞳の凛々しい青年に育っていた。


だが、両親と違う髪色でシンヤはいつまでも不思議に思う。


「母さんは、神の加護があるから百発百中なんだよ。俺にも神の加護があればな…」



シンヤが幼い頃、シンヤの両親よりかなり年上のケーブ・リークという村の魔術師の家に通い、魔法や外の世界について話を聞いていた。


ケーブは白く短い髭と長い髪の男で、チャークと旅していたこともあり外の世界をよく知っていた。村で育ったシンヤには憧れの存在だった。


そんなケーブの横に座り、シンヤは質問した。


「なんで母さんだけ神の力を持っているの?」

「これはシンヤの母さんから聞いた話だが、10年程前に大きなイノシシが村に降りて来て家畜小屋に侵入したり、畑の作物を荒らしたりして問題になった。君の母さんはその時、村の人たちの依頼で、山に退治に行ったんだ。その山でたまたま神の像を見つけたらしい。そして、神に認められたんだ」

「イノシシはどうなったの?」

「もちろん、君の母さんが退治したんだ。神の力を使ってね」


ケーブは凄いだろと言わんばかりの笑顔をシンヤに見せる


「お母さんって凄いんだ。今からでも神に会える?」

「ここにいたとされる神、シアスティアは人の役に立たないと言われ、少数の人しか信仰しなくなった。信仰者が少なくなった神の元からは、次第に一人また一人と信仰者は減っていった。だから今、神域、神を祀る場所を知ってるものはいないと言われているんだ」



シンヤが過去のことを考えているとチャークが愚痴をこぼす。


「俺も神の力があれば仕事も効率がいいんだけどな」


(俺にも母さんの様に神の加護が与えられるのだろうか…)


シンヤの横を矢が通り、少し身構える。


「ほら、父さんだって当たるんだぞ。ぼーっとしてないでこのイノシシを母さんのところに持ってくぞ。

『我らに与えられた恵に感謝を』」


チャークはイノシシに近づき、後ろ腰に入れていたナイフでとどめを刺して祈りを捧げる。シンヤも自分が仕留めたイノシシに近付き、出掛ける際は常備している腰に下げたナイフでとどめを刺す。


草むらから動く音がした。


「父さんもう一匹いるよ」


シンヤが囁く。チャークは嘘だとでも言いたげな顔でシンヤを見る。


「本当だよ。見てて…」


弓の軋む音が小さく響く。シンヤは音が聞こえた方向へ弓を構えて息を止め、手の震えを抑える。


限界まで引いた弓の弦を離す。矢が放たれ草むらに向かって勢いよく飛ぶ。丈の高い草に矢が入った次の瞬間、イノシシのうめく声が聞こえた。


イノシシの死骸を見たら見事にイノシシの喉に矢が刺さっていた。


「やったよ、父さん!」


チャークは驚いて目を見開いた。


「かなりの距離があるぞ…よく聞こえたな」

「さぁさぁ、持って帰ろ」


一番大きなイノシシを一匹背負い歩いた。チャークは二匹のイノシシを苦しそうに背負いシンヤの後を着いて行った。


ギルグッド家の家は村の離れにあり、周りは森で囲われ、山と村へ続く道があるだけだった。


「ただいま! 今日は、いっぱいだったよ」


かなり遅れてチャークが帰ってきて息を荒くして、イノシシを下ろす。


「ただいまぁー」


大きく声を出し、玄関で崩れる。


「フフッ…今日もあなたは雑用なのね」


ヘンリーはチャークを見て、笑い。チャークは途切れ途切れの呼吸でヘンリーに言う


「今回は俺だって一匹やったよ」


チャークは体を起こし、人差し指を立てヘンリーにドヤ顔をする。


「一匹だけね〜」


シンヤはチャークにドヤ顔を見せつけた。


「そうだよ、一匹だけだよ」


チャークは頬を膨らませる。

どうもはじめまして、六貝です!

今後この小説を投稿し続けるので、見てくれたら嬉しいのでよろしくお願いします!

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