黄金の風に吹かれて
黄金の風に吹かれて
一人の農夫が田の畔道を行く。
どこまでも高い空の青に
白い雲が
黄金の風の筆で描かれた
龍のように
水平線の向こうまでのびている。
農夫は用水路の流れで顔を洗い、
まだ昼下がりの暑い野で、
小さな午後の一息を入れる。
野良着はべっとりと汗で体にくっつき
泥があちこちについている。
車に戻り、冷たいアイスコーヒーと、
妻が持たせてくれたおやつを持ち出し、
大きなクスノキの木陰に腰を下ろし、
おやつの包みを開ける。
律儀な丸い筆跡で言葉が添えられている。
「お疲れさま。ふわもち米粉のパンケーキ作ったよ。
コーヒーと合えばいいな
昨日大家さんに頂いたドラゴンフルーツをソースにしてみたんだ。
おしゃれに召し上がれ~」
律儀な丸い筆跡で言葉が添えられていた
農夫ははにかみ、パンケーキをみつめる。
甘いバニラの香りが顔をほころばせる
そして素手でパンケーキを一切れ、
大きな口に運ぶ。
濃いワイン色のドラゴンフルーツのさっぱりとした甘みと生クリームの濃厚さが舌の上で野性的なダンスを踊る
生クリームは家で飼っているヤギの乳から作ったものだ。
米粉のパンケーキは赤ちゃんの肌のように柔らかく、ほのかに甘く、鼻をくすぐる
農夫の目元も自然と下がり、優しい笑みが生まれている。
そしてキリリと冷えたアイスコーヒーを一口。
カラカラとタンブラーのなかで氷が揺れる。
ヤギ乳の生クリームの甘みと
ドラゴンフルーツソースの甘酸っぱさと
コーヒーの苦みに感覚はすべて満たされている。
さらに、この香りは…これはクスノキの香りだ!
上を見上げると楠の大樹が四方に枝を伸ばし、
風に吹かれたクスノキの実が一つ、気づかぬ間にコーヒーのタンブラーの中に入っていたようだ。
さっぱりとした表情で農夫は青い空に両手を広げる。
伸びをすると体が心地よい。
龍のように体中に張り巡らされた血管に、活気が駆け巡る。
記憶には、子供がまだ赤ん坊だった頃のやわらかいほっぺたの感触と寝顔がよみがえる。
田には黄金の稲穂がそよと風になびいて輝いている。
今年も米は順調だ。
また収穫祭のときにでも米粉でこのパンケーキをつくってもらうか。
農夫は広大な風そよぐ世界に独り立つ。
「さてと、もう仕事だ。
おてんとうさま、いつも恵みをありがとうございます」
ふわもち米粉のパンケーキ ドラゴンフルーツソース添えレシピ
材料
米粉 100グラム
餅粉 15グラム
卵 一個
キビ糖 大さじ3
ヤギ(牛)の乳 100cc
ベーキングパウダー 大さじ1
米油 大さじ1
シナモン 少々
バニラ(エッセンスでも)少々
塩 少々
ギー(バターでも) 15グラム
ドラゴンフルーツソース
ドラゴンフルーツ 1個
赤ワイン 15cc
きび砂糖 大さじ5
レモン汁数滴
塩一掴み