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序章(プロローグ)


季節は春。通学路の並木道には桜が咲き乱れている。

姫川千里ひめかわ ちさとは中学を卒業して、

都立帝陣東(ていじん ひがし)高等学校の一年生となった。 

身長は成長過程の158センチ。 手足の長さは標準より少し長め。 

地毛だがやや栗色っぽいセミロングヘア。 顔立ちは美人というより可愛い系。 

顔の作りもそこそこ整っている。 


その中でも特徴的なのは、キラキラとしたつぶらな黒い瞳。 

特別美少女というわけではないが、

その純真無垢な瞳は見る者を癒すような効果がある。

実際中学生時代も千里は周囲の男女から好かれていた。 


少しおせっかいの傾向はあるが、

基本的に誰に対しても親切で心優しい性格の彼女を嫌う者は少なかった。 

中学時代には女子バスケ部に所属しており、副キャプテンも務めた。

でも高校で女子バスケ部に入部するかはまだ決めかねている。 


ダンス部なんかにも興味がある。 

もう千里も高校生なのだ。 更に言うならば女子高生なのだ。

日本最強のブランド・女子高生なのだ(意味不明)。 

確かにバスケは好きだ。 だが千里も年頃の乙女。 

人並みに恋愛に憧れるし、素敵な彼氏も欲しいと思う。 


だからリア充っぽいダンス部に入って、

女子力を磨く、と淡い期待を抱いていた。

周囲には新入生らしき男女が、真新しい制服姿で、

緊張と希望を抱え道を歩いている。


女子の制服は黒いブレザーのジャケット、白いブラウスの首元に赤いリボン。

チェック柄の黒灰色のスカートという感じだ。

ちなみに男子の制服は黒いブレザーのジャケット、白いシャツの首元に赤いネクタイ。

そしてグレイのズボンというシンプルなスタイルだ。

皆、緊張してるね。 

あたしと同じだ、と思いながら微笑む千里。 その時――


「おい、姉ちゃん。 一緒に遊ぼうや!」

「ちょ、ちょっとやめてください!」


前方を観ると暇を持て余した感じの二十歳くらいの

金髪の男が近くの女生徒に言い寄っていた。 

周囲に視線を向けるが、誰も助けに入ろうとしない。

仕方ない、ここは自分が行くしかないか。


「ちょっといいですか?」

「あ?」

「あのう、やめてもらえませんか? 私達、今日が入学式なんです。 遅刻が許されない立場なんですよ。 それに周囲に迷惑なので本当にやめてください!」

「あ? ……よく見ると可愛いじゃん。 

じゃあ代わりに君が相手してよ、へへへっ」


と、いやらしい感じに笑う金髪男。 思わず眉を顰める千里。 

相手はよく見ると180近い身長だ。 

首回りや腕周りにもけっこう筋肉がついている。 

しかしこういう横暴な輩は大嫌いだ。 だから見過ごすことはできない。


「……警察を呼びますよ? 警察が来たら問題になるでしょうね!」

「あっ? お前、脅しているつもりか?」

「脅しじゃないです、なんなら今すぐ通報しましょうか?」

「……ちょ、調子に――な、なんだ? てめえは!?」

「おっさん、みっともないから止めておけよ?」


 と、背が高めの男子生徒が金髪男と千里の間に割って入った。


「……誰がおっさんだぁ! てめえ、殺すぞ!?」

「……おっさん、息が臭いぜ? 顔を近づけるなよ」

「て、て、てめえ……マジでぶっこ……ぶほっ!!」


 と金髪男が凄みながら男子生徒に向かっていたが、急に顔を抑えた。

 よく見ると金髪男が鼻からぽたぽたとは鼻血を流していた。


「こ、このガキィ……もう許さねえ!!」


 そう言いながら、金髪男は右拳で男子生徒に殴りかかった。

 しかしその右拳は空を切った。 

 それと同時に金髪男は両膝を折りながら、

 地面にしゃがみ込んだ。 

一瞬の出来事で千里には、何が起きたか分からなかった。

 そしてその男子生徒は金髪男を見下ろしながら――


「おっさん、まだやる?」


 左手で腹を抑えながら、首を左右に振る金髪男。


「じゃあさ、目障りだからもう消えてくんない?」

「……わ、分かった……」


 そう言い残して金髪男は腹を抑えたまま、逃げるようにこの場から去った。

 そして男子生徒は何事もなかったように、

 地面に置いたスポーツバックを拾った。

 その時、千里の眼にも男子生徒の姿がはっきりと映った。


 身長は175以上ありそうだ。 

 全体的な顔のつくりはシャープで、眉目は秀麗だ。

 さらさらの少し長めの黒髪。 

 白皙、手足はすらっと長いモデル体型。

 かなりの美少年だ。 正直千里の好みのタイプだ。 

 千里の胸がきゅんと高鳴った。


「あ、あのう……ありがとうございました」


 と、千里は小さく頭を下げて礼を言った。


「……敬語使わなくていいよ」

「え?」

「俺も一年だから」


 そう言って少年は踵を返した。


「ま、待ってください! 良かったら、名前を教えていただけませんか?」


 すると少年は足を止めて、こちらに振り返ってぼそりと呟いた。


神凪かんなぎ

「か、カンナギ? 下の名前は?」

神凪拳人かんなぎ けんと。 ……フルネーム言う必要ある?」

「い、いえ後でちゃんとしたお礼が言いたいので……」

「いいよ、そんなことしなくて。 それで君はなんて名前なの?」

「ひ、姫川千里です。 神凪くん、ありがとうね」

「姫川千里ね。 んじゃ姫川さん、さようなら!」

「う、うん。 またね、神凪くん!」


 これが千里と神凪拳人との初めての出会いだった。


誤字脱字などもあると思いますが、

その際にはご指摘していただけると助かります!

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― 新着の感想 ―
[一言] うぉぉ!神凪かっけぇぇ! こういう人種に生まれたかった!(*´Д`*)
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