例えば、密室で二人きりになった時
人は皆、生まれながらに不公平である。
生まれる家も、性別も、用紙も選ぶことはできないのだ。
だが、だからこそ人生は面白いのかもしれない。
瞳の色が他と違う、髪の色が他と違う。
ただそれだけの理由で僕はずっと一人だった。
うろ覚えだけど小さい頃はよく一人で遊んでいたと思う。
少なくとも友達と呼べる者はいなかった。
母を知らず、友を知らず、ただひたすらに父の背中を見て育ってきた。
そんな僕は13の春、始めて友というものを知った。
そして15のクリスマス、俺は突然女になった。
俺は怖かったんだ、この事を知った親友が…慎二が俺から離れていってしまうかもしれないことが・・・何よりも・・・怖いんだ・・・。
だけどもう見られてしまった、知られてしまった。
だから俺は俯いていた、あの時自分をまだ僕といっていた頃のように・・・。
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慎二の目の前には優樹だと名乗る少女が俯いていた。
先ほどナンパ野郎から助けた少女の突然の告白に驚かなかったと言えば嘘になるだろう。
(いや、いくらなんでもあり得ねぇだろ?確かに髪や目は同じ色だけどよ、だからってこの娘が優樹だと言われても信じられる訳が・・・でもこの反応の仕方は優樹だしなぁ・・・)
俺が悩んでいると子犬のような目で優樹が俺のことを見ていた。
あの凶悪な目付きは跡形もなく、その儚げな表情がなんか・・・こう・・・護ってやりたくなるような気分になってくる。
「君が・・・優樹?」
「嘘じゃないんだ・・・朝目が覚めたら何故か女になってて・・・でも今日は慎二との約束があったから思わず飛び出してて・・・あの、そのだな・・・」
人差し指を顔の前でつんつんと付き合わながら恐る恐るといった仕草で、上目遣いに慎二を見る優樹に慎二は思わず面食らっていた。
(か、可愛い・・・こいつ女になるとこんなに可愛いキャラだったのか?)
なんというか、いじらしくて思わず抱き締めたくなる様な可愛いさだった。
保護欲というのだろうか?慎二は優樹のことを無性に抱きしめたくなるのを素数を数えながら耐えていた。
慎二の煩悩に耐える表情を誤解した優樹は、寂しそうな表情で肩を落とした。
「お、俺の事は気にしないでさ、慎二はカラオケに行くといいよ、俺は帰るから」
といっても慎二がそれを良しとする訳がなかった。
「は?、何言ってんだお前・・・」
「だって、俺もう女だし・・・慎二もさ、迷惑だろ?俺が一緒に行っても邪魔になるだけで・・・」
人に気をつかうのは確かにこの親友の美点だと慎二は思う。
けど、この気の使い方は間違いだらけだった。
「そんなこと・・・いつ俺が言ったよ?」
ったく・・・こいつは、やっぱ優樹は優樹だな・・・。
優樹は出会った時からそうだった。人の顔色を伺いながら行動する。
そんな臆病で情けない奴だった。
慎二が時間をかけてようやく遠慮なく物を言えるようにしたものの、どうやらまたその一面が出てきてしまったようだ。
「デモも、ストもねぇよ・・・お前も一緒に行くぞ。お前の事は俺が適当に誤魔化しておくから余計な心配するんじゃねぇ」
世話がやけて、面倒な奴だけど何故か放っておけない、俺の親友はそんな奴だからな・・・。
「慎二・・・ありがとう」
慎二の言葉に優樹は目尻に涙を浮かべながら微笑する。
それは例えるなら野に咲く一輪の様な微笑みだった。
(・・・///)
ヤベェ、なにこの可愛い生物?マジで可愛い、つぅか可愛いすぎるぞおい。
なんだ?優樹って女だったらこんなに可愛いかったのか?
・・・なんか他の男にこの可愛いさをくれてやるのは嫌だな・・・って、何考えてんだ俺は・・・。
相手は優樹だぞ?俺の親友だぞ?
優樹との友情を裏切るのか?優樹からの信頼を裏切るの慎二!
違うだろう?全く、俺もやっぱ男の子ってことか、クラスの奴らのこと笑えねぇな・・・。
「慎二?どうしたんだ?」
優樹はというと吹っ切れたらしく、今度は逆に俺が心配されてしまった。
「何でもねぇよ、とっとと行こうぜ」
「おう!行くからには思いっきり歌うぞー!」
歩き出した祐希の銀髪が俺の顔にかかる、シャンプーの匂いが俺の鼻腔を伝う。
何かの花だろうか?心が安らぐ優しい匂いだった。
優樹の後ろ姿を見ていると俺の胸の辺りがモヤモヤする。
この俺が・・・?まさかな・・・。
そして俺達はカラオケ店に向けて歩き始める。
俺は優樹の体に起きた異変について考えつつも、これから歌う曲について色々話ながら胸の動悸に困惑していた。
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あれから約10分程歩き、優樹と慎二の二人はカラオケ店に到着した。
慎二の話では他の四人は現地集合とのことなので、ここにいる筈なのだが・・・。
ロビーに居るのは優樹と慎二の二人だけで、他に居るのは受付のアルバイト位だ。
「・・・?、いないな・・・」
首を左右に振りながら待ち合わせの相手を探すものの、姿が見えないので首を傾げる優樹。
そんな優樹に対し、慎二は何か思い出したのか手をポンッと叩きこう言った。
「あぁ、そういや言い忘れてた。あいつらは少し遅れてくるらしいから先に歌っててくれってさ」
そんなこんなで受付を済ませた二人は指定の部屋へと向かう。
「それはそうと…お前のことどうすっかねぇ…」
階段を先行していた慎二が優樹の事を見下ろしながら溜め息を吐く。
「別に相手は俺の知り合いじゃないんだろ?」
慎二から聞いた話ではB中の連中らしい、それにしても他の中学とも交流関係があるとは思ってなかった。
やはり慎二は凄いと優樹はつくづく思う。
「髪や目の色で勘づかれなきゃいいんだけどな、お前は悪い意味で有名だからな」
悪い意味とは勿論、凶悪だった目付きのことだ。
人の気にしてることでもズバッと言うのは、慎二の悪いところだと優樹は思う。
「ま、なんとかなるか、おっ、あったあった302号室はここだな」
慎二の後に続き部屋に入ろうとした優樹だったが、扉を潜る直前あるに問題に気付いた。
「あれ?もしかして他の四人が来るまでは慎二と二人っきり・・・?」
いやいや、それはまずくないだろうか?少なくとも世間的にはアウトの筈だ。
更に思い出したくなかったことだけど、慎二は結構“遊んでいる”(女の子関連)奴だ。
(もしかして・・・というかもしかしなくてもヤバい?)
本日二度目になる身の危険を感じた優樹は、部屋に半歩だけ足を踏み入れた状態で硬直していた。
「おいおい・・・確かに俺は女の子大好きだけどよ、流石に元男を、自分の親友を襲うつもりはねぇよ」
どうやら少しばかり自意識過剰だったようだ。
「そっ、そっか。なら良かった」
でもちょっと残念だな・・・って!?い、今の無し!無しって言ったらナシだ!!
いやそりゃ確かに慎二のことは好きだけど、そういう好きじゃないし、それにほら・・・アレだ慎二の言う通り、俺はこれでも男なんだから、男に襲われるなんて勿論嫌だし・・・。
「どうしたんだ優樹?なんか顔が真っ赤だぞ?」
慎二はそう言ったその直後、閃いた!と言わんばかりに口端を吊り上げる。
「ハハーン・・・もしかして何?実は期待してたとか?」
あながちハズレでもないので、優樹の顔が羞恥真っ赤に染まる。
「う、うるさい!馬鹿なこと言ってないで歌うぞ!じ、時間が勿体無いだろ!?」
悶々としていた優樹の目の前にニヤニヤしながら俺の顔を覗きこむ慎二がいたので、顔を両手で押しのけながら俺はテーブルの上に置いてあった雑誌を手に取る。
歌いたい曲を選ぶために開いた雑誌だったのだけど・・・。
ページを捲るとそこには桃色が広がっていた。
「ーっ!?○@X▲◇!?」
優樹の口から声にならない悲鳴が上がる。それは曲メニュー等ではなかった。
その・・・アレだ・・・。
その時、横からヒョイっと慎二の手が延びてきてが優樹の手からその雑誌を取る。
「お~・・・エロ本か、ふむ・・・中々いい乳だな!さては前の客の忘れ物か?ったく店員掃除サボりやがったな」
文字通り雑誌の中身を吟味している慎二に対し、顔を真っ赤にさせた優樹が喚き立てる。
「ハ、ハッキリ言うな馬鹿!なんでこんな時にこんなものがあるんだよっ!!」
恥ずかしさと怒りで顔が真っ赤になった優樹は慎二から雑誌を奪い取るや、そのまま壁に向けて全力で投げつけた。
「はーっ、はーっ・・・全くこれだから男って奴は!」
・・・・・・・・・・・あれ?なんかおかしくないか・・・・・・?
───『これだから男って奴は!』───?
なんだよそれ、それじゃあまるで・・・俺が“女の子”みたいじゃないか・・・。
待ってくれ俺は・・・男なんだぞ?なのになんでエロ本の一つや二つでこんなに女の子みたいに取り乱してるんだ?
急激に寒気すら感じた。嫌だ怖い・・・。
―――俺が俺でなくなる・・・!
「優樹、大丈夫か?何か顔色が悪いぞ?」
様子がおかしい俺のことを心配した慎二が俺の背を擦りながら横に立つ。
何故だろう?そばに慎二がいるだけで凄く安心する。
どうしてだろう?なんでコイツのそばにいるとこんなにもドキドキするんだろう?
俺は男、でももう女だ。体は女の子、心は男の子・・・そうだよ心はまだ男の筈だろ?
「優樹──―」
慎二の口から俺の名前が紡がれる度に無性にドキドキしてくる。
無意識の行動だったのだろう、気付けば俺は無意識に慎二の顔に手をのばしていた。
「優樹?」
「慎二・・・俺、なんか変なんだ・・・お前のそばにいると凄く・・・ドキドキするんだ」
頬を蒸気させた優樹が慎二の瞳を覗きこんでくる。
慎二の鼻腔に甘ったるい匂いが充満し、気付けば下半身が熱くなっていた。
「ゆ、優樹さん・・・?」
既に理性が飛びそうで、今すぐにでも目の前の少女を貪りたくなる狂おしいまでの衝動を慎二は、『コイツは親友』『コイツは親友』と自己暗示をかけることで、必死に耐え抜いていた。
「俺、どうしちゃったんだろ?おかしいんだ・・・確かに体は女になったけど心はちゃんと男なのに」
優樹の潤んだ瞳の目尻から一筋の涙が伝っていく、あの最悪に凶悪だった目つきは面影なく消え、辛そうなのと困ったような表情を足して2で割ったようなそそる表情の優樹にそろそろ辛抱堪らない慎二だった。
「・・・・・・(か、可愛い)」
既に息子はバーニング状態にあり、理性が崩壊するのも時間の問題だった。
ここで彼を責めることは男性ならば無理だろう、なぜならば
密室+二人っきり(美少女×親友)×イケナイ関係=理性の崩壊
の方程式がすでにできあがってしまっているからだ。
確かに慎二は自他共に認める程の女好きだ。だがそんな彼でも親友が見たこともない程の美少女になったからといって、襲う訳にもいかない。慎二にとって優樹はそういう存在、家族のような存在なのだ。
だが慎二的にはそんな優樹にピーッ!(伏字風)なことをするのは背徳感があり、むしろ萌える。(誤字にあらず)
とは言ってもそれを実行するわけにもいかないのが現実と妄想の違いな訳で・・・。
男であれば永遠の親友。
女であれば永遠の恋人。
慎二にとって竹蔵優樹という人物はそれ程に大切な存在なのだ。
しかし慎二はここで気付いてしまった。
『女であれば永遠の恋人』だと・・・?
え~と、つまり襲っちゃって・・・OK?え、駄目?・・・ですよね~・・・。
といった感じにそろそろ本当に理性が崩壊しそうだった。屁理屈をこねにこねて優樹を襲う気満々である。
そんな限界一杯な慎二に、色っぽい表情で無意識に自分を誘惑している優樹を前にしても自分にお預けするのは実に困難を極めた。
「慎二ぃ・・・なんか体が熱い・・・」
―──モウムリ、コノカワイイセイブツオイシクイタダキマスヨ?
ぶっちゃけよく耐えたと言えた。優樹は多分、慎二への友情から彼の事を無条件で信頼しきってしまっている。
そして今、女になったことの未知への不安と、暗い密室で二人きり、卑猥な雑誌。
これらの状況と、先に上げた慎二への絶対的な信頼の結果多分こうなっている。
儚げに揺れる不安の涙で濡れた蒼い瞳と、垂れた眉のコントラストである怯えた表情はなんだか猛烈に悪戯心を擽るし。
襟から覗く白い鎖骨が思わず生唾を飲んでしまう位に色っぽかった。
結論から言えばすでに慎二は動いていた。
「イタダキ──―・・・「遅くなって悪いなっ!今来たぜ~」・・・ッチ」
なんとタイミングの悪い奴らだと慎二は心中で毒づく、それと同時に心のどこかで少しホッとしていた。
あのまま二人っきりだったら歯止めが効かなかったかもしれない、そう思うと少し安心した。
部屋に入ってきたのは全部で4人、男3人、女1人のB中の知り合い達である。
「あれ?慎二の連れって男じゃなかったの?」
髪を茶色に染め、派手な髪型(サイドポニー・ドリル型)のどちらかと言うと綺麗系の顔の女子が優樹を見つけ人差し指を顎に当てて「んー?」と唸っている。
「うおーっ!?この娘、凄んげぇ可愛いんですけど!?」
異様なほどにハイテンションな癖に外見は普通すぎる程に普通すぎる少年。
「銀髪碧眼とは・・・たまらんっす」
眼鏡&バンダナを頭部に装着し、脂肪の鎧を装備した職業オタクなデブ少年。
「ねね、彼女ー名前は?」
小動物のように人懐っこい笑顔で優樹の顔を覗きこむチビッこい少年。
残りの三人もこれまた特徴的な者ばかりであった。
「え、えと・・・その」
室内の人口が突然増えたので、人見知りでありこういうタイプは苦手だった優樹は慎二の背中に隠れてしまう。
「こらっ!あんた達!!、なに怖がらせてんのよ。大丈夫よー、ちょっと馬鹿な奴らだけど悪い奴らじゃないから」
腰に手を当てながら三人を叱るサイドドリルの少女、唇からチラリと覗く八重歯が小悪魔チックな印象を抱かせる。
「「「馬鹿とは失礼な!!」」」
全く似てない三人が、見事なまでにハモる。
「相変わらずだなお前ら…」
そんな彼らを見て慎二は溜息混じりに呟く、彼らを見ているうちにムラムラも消えていた。
「(慎二・・・この人達、知り合い?)」
背中越しに優樹がコソコソと耳元で囁く、慎二はそれに対しだから止めろってと言いたくなる。
収まりかけていた息子がカムバックしてしまいそうになる。
「(いや、知り合いだから呼んでるんだろうが、まぁ・・・コイツ等はいい奴だよ俺が保証する)」
優樹は交友関係がいくらなんでも少なすぎる、こういう機会を作るのも親友としての心使いからだった。
でもまぁ、今の優樹に近寄る男を見たらそれはそれで彼はきっと慌てふためくのだろう。
「おやおや~?何二人で内緒話してんのかなあんた達は?」
二人がコソコソやっているのに気付いたサイドドリルの少女が優樹の背後からヌゥっと滑り込んできた。
「ひゃう!?」
首筋に突然かかった人肌の温かさの風に、優樹は思わず女の子のような悲鳴をあげてしまった。
いつのまに回り込んだのかは優樹には分からなかったが、サイドドリルの少女は優樹の肩に手を置いた。
その行動にまたも心臓が飛び出そうな程、驚いた優樹は逃げだそうとアワアワしていた。
「そいつ人見知りなんでな、あんま驚かせないようにしてくれ」
さりげなく補助してくるあたり、優樹と慎二の二人の仲の良さをサイドドリルの少女は察知した。
「アタシは慎二の親友っていうからてっきり男だと思ってたのにねぇ・・・まさかこんな可愛い娘を連れてくるとは思わなかったわよ?」
優樹の顎に手を乗せ、空いた手で太ももを撫でるサイドドリル。
ちなみに彼女には百合趣味もあるので、優樹のように儚げな印象の女の子は大好物だった。
「そうだぞそうだぞ!紹介しろ慎二!」
とりあえず喚きたてる普通少年。
「大丈夫、俺がきっと幸せにしてみせる」
オタク少年が眼鏡を治しながらニヒルに笑う。
「僕が女の子の喜びって奴を教えてあげるよ~?」
手の動きが卑猥なチビっ子少年。
そして3人の男の醜い争いが始まった。
とりあえず馬鹿3人は放置することにして各々自己紹介する。
「あたしは三木美紀、名字と名前が一緒なんて珍しいでしょ?」
珍しいというか貴女の両親は一体何故そんな名前をつけたんですかと突っ込みたくなる。
「ほれ優樹も」
慎二に促され、優樹はおずおずと自己紹介をする。
「た、竹蔵・・・祐希、・・・です」
「本当に今時珍しい可愛い娘だね~・・・慎二ぃ、アンタ本当に手ぇつけてないのかい?」
頬に手を当てながら光悦としていた美紀は、その後いぶかしむように慎二に問い詰める。
「親友に手をつけるほど俺も落ちぶれちゃいねぇよ(若干目をそらしながら)」
その親友を危うく滅茶苦茶にするところでしたよ、ハイ。
「ふぅ~ん?(さてはコイツ襲いかけたわね)」
挙動不審な慎二の態度にさっきまで何があったのかを大体理解した美紀は優樹に手を差し出した。
「よろしくね、優樹♪」
「あ・・・」
差し出された手・・・それは懐かしくて、渇望してきたもの。
どんなに望んでも、手に入れられなかったものだ。
美紀が差し出した手、優樹にはまるでその手が幻に見えた。
だが握り返したその手の平は暖かく、それが幻でないことをハッキリと物語っていた。
「アタシはアンタのことが気にいった。今日からアタシ達は友達さ」
「・・・・・・うん」
その言葉がよほど嬉しかったのか頬が仄かに紅い優樹。しかし昨日までは男だった彼女も今や全力で女の子しているものである。
元々優樹は素直な性格ので、これは優樹という人間の素なのだが、女の体でこれをやると破壊力抜群なのであった。
「「「ゆ、優樹ちゃん萌え~」」」
「ひゃうっ!?」
突然の不意打ちに優樹は思わずすくみ上がってしまった。いつのまにか三人に囲まれていた優樹は今度は美紀の背中に隠れる。
「ちょ・・・ちょっと優樹?」
「ぅ~・・・」
優樹は知らない人間には極端に警戒する傾向がある。
幼い頃から髪や目の色で色々酷い目にあってきたので元々そういう習性だったのだが、成長するにあたって目付きの悪さが彼に無用で近づく者を無くさせたのはある意味、行幸だったのだろう。
何はともあれ今日の優樹の成果は、友達4人。
その日の夜、彼女の表情は急激な変化があった割にはとても安らかだったという。
「あれ?俺らの名前は!?」
「なんという扱いの悪さ・・・」
「僕の名はひいら・・・うわ何をする!」
現実でない場所で何かが暴れているようですが・・・ま、別にいいでしょう。
生まれてきたことを後悔するのはいくらでもできる。
大切なのは生きていることを楽しむベキだと、つまりはそういうこと