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ぷろろ〜ぐ:モテない男の変貌

作者の夢は朝起きたら性転換してることです。




小さい頃、一つ約束をした。


それはとても簡単で、でもとても難しい矛盾したものだった。


僕の小さな小指と、歳のわりにちょっと大きい彼の小指を引っ掛けあう。


誓った内容は───


「ずっと一緒にいること」






**********************






12月24日、クリスマスのその日、A駅の待ち合わせとして定番の『待ち合わ背像』(背中を見せたナイスガイの銅像)の下で、一人の少年が突っ立ていた。


恐らく誰かと待ち合わせしているのだろうと推測されるが、少年の周りにはやけに人が少なかった。

周りにいるのはバカップルや家族サービス中のお父さんやらで、朗らかな空気であるはずにも関わらず、妙にギスギスした雰囲気になっていた。


その中心にいる少年、彼はこの物語の主人公であり、同時にこの異様な空間の発生源だった。


彼の名は『竹蔵たけくら 優樹ゆうき』、来年には高校生になる中学三年生。


ロシア系のクオーターである彼の髪は見事なアッシュブロンドであり、染めたものではないと一目見て分かるほど澄んだ色だった。

そんな彼は今心の中で独白していた。






************






俺は15年間生きてきて、世界の理の一つで理解した事がある。

女って生き物はやっぱり顔のいい男が好き、ということをだ。


なんでこんなことをいきなり独白してるかというと、俺は今まさにデートをすっぽかされたからだ。

今日はネットで出会ったチャット仲間とデート(遊び)に行く約束をしていた。


出かける前に互いの顔写真を写メで送りあってから、何故か返信がないのが不安だったのだが・・・。

待ち合わせから2時間経っても来ないのを見るところ、予感的中のようだ。


「帰るか・・・」


別段優樹は不細工というわけではない、むしろ顔は全体的に整っているし、瞳の色も碧眼なので銀髪碧眼の美少年とも言えなくはないのだ。


だが悲しいかな、その整った顔も一発で帳消しにしてしまうような、とんでもない特徴が彼にはあった。


そう・・・優樹の目は───


壊・滅・的!!に三白眼なのである!!


彼の担当の先生曰く「お前の目つきはその筋の人間ですら逃げ出しそうだからな」なんだそうな。


とぼとぼという幻聴が聞こえそうなほど、落ち込んだ雰囲気で歩く俺はきっと、端から見れば負け犬、まぁ負け組なんだろうなきっと。


周囲の脅えた視線と雰囲気に追い討ちを受けつつも改札口に向かう。


電車に乗り、一本で地元の駅にまで30分。

距離は少しあるものの電車賃は結構安い上に、遊び場が多いので優樹の地元ではA駅付近が遊び場になっていた。


もっとも優樹自身はたった一人の親友以外とは来ることはないが・・・。

電車から降りた頃には既に日は完全に落ちており、更には雪まで降っていた。


「ホワイトクリスマスか・・・」


恋人がいれば大万歳なんだろうな(女の子なんかはロマンチックとか言いそうだし)、と他人事のように思う。

彼氏彼女がいなければ普通に迷惑ではあるが、特に駅から徒歩の優樹にしてみれば「勘弁して下さい」とお天道様に向かって叫びたくなるレベルだ。


当たり前だが雪が降れば気温も下がる。そして今日の優樹はそれほど厚着ではなかった。

両腕で体を抱き、北風の寒さに身震いしながら歩を進める優樹。

今年のクリスマスはどうやら一人で過ごすことになりそうだな~と思うと、友人の誘いを素直に受けておけば良かったと思う。


その友人の名は慎二、フルネームは「桜庭さくらば 慎二しんじ」。優樹の唯一にしてたった一人親友。


中学生になったばかりの二年前、その目つきの悪さ故に、常に一人でいることが多かった優樹に唯一手を差し伸べてくれたたった一人の相手。

情けない話だが、彼がいなくては他の人とはまともに喋れないのが現状である。

そもそも今日のデートとて、仮に相手が来たとしても何も話すことができなかっただろう。


白い雪道に黒い足跡をつけながら、ゆっくりと、クリスマスの夜を寂しく歩く男が今日もまた一人。

我が家に帰ったところで誰かが迎えてくれるという訳でもなく、今年もまた一人寂しく過ごすクリスマスになりそうだ。


なんだかやるせなくなった俺は、家の裏手の方にある神社に寄り道する事にした。

年末年始にはよく世話になっている神社で、田舎にある割には結構立派な神社だったりする。

参拝者も少なくはないし大晦日には隣市からも人が来る。


しばらくの間、ボーッとしていると視界の端で光る物を見つけた。


「・・・なんだ?」


臆病な癖して好奇心旺盛な優樹は光のある元に向かった。

光っているのはどうやら神代の隣に置いてある狐の石像のようだ。

それはなんとも幻想的で、だけどどこか儚い輝きを放っていた。


「ほぇ~・・・綺麗だな・・・」


神秘的な光に思わず感嘆の声が漏れる。


狐の石像は所々が欠けており、ヒビもかなり深く、一度触れば今にも崩れてしまいそうだった。


光は少しずつ弱まりつつあり、それと同調するように石像が霞んでいった。

その非現実的な光景に、優樹は何故だか見入ってしまっていた。

やがて光は輝きを失い、石像も光と共に霞んでいき、そのまま石像ごと光は消えてしまった。


「えーと・・・なんだったんだ今の?」


しばらく余韻に浸るようにその場に立っていた優樹だったが、頭に積もった雪が溶けたのだろう、冷水が彼の首筋を伝って背中に入り込む。

その冷たさに優樹は思わず悲鳴をあげた。


「うひゃあっ!?さ、さ、寒!」


情けない悲鳴をあげつつも彼は神社から出る為鳥居を潜る。


後になって優樹は思った。人間、余計なことはするもんじゃないなー・・・と。


神社を出る間際、優樹は溜息を吐きながら呟いた。



「あ~ぁ・・・可愛い女の子が欲しいなぁ・・・」


『その願い、叶えてやろう』


それは頭の中に直接降ってくるような、そんな不思議な声だった。


「・・・え?なんだ今の・・・誰かいるんですかー?」


───しーん・・・・・・。


「空耳かな・・・?───ヘクシュ!?うぅ・・・寒みぃ~っ!早く帰ろっと」


自宅へ帰る為、優樹がその場を去った後、神社の神代がぼんやりと光っていた。






**********************************






「俺達は親友だ、ずっと一緒だぜ!」


アイツがそう言ったのはいつだったろうか?それを約束したのはいつだったろうか・・・?


俺にとって、とても大切な思い出。


絶対に忘れたくない思い出。


でもその約束は簡単ではないと思う、親友ではずっと一緒にはいられない。

その関係がずっと続いても、ずっと一緒にいることは無理だと俺は思った。

それをアイツに言ったら、アイツはこう言ってきた。


「馬っ鹿野郎、お前それは比喩表現って奴だよ、どんなに離れていようと俺達は親友だろ?」


それを聞いて成る程と思った反面、少し残念に思った。

俺はアイツと───慎二とずっと一緒にいたかった。

他の誰でもなくアイツの傍に・・・。

今思えば我ながら恥ずかしい奴だな~・・・とつくづく思う。


それでも・・・俺は───。

慎二とずっと一緒にいられたらいいなと思っていたのかもしれない。






**************************






12/25(日)晴れ



昨日は疲れていたのだろう、優樹が目を覚ましたのは昼過ぎだった。


少し小さいながらも立派な一軒家に住む、竹蔵優樹は父と優樹の二人、父息子の家庭である。


父はほとんど自宅に居らず、実質一人暮らしなので優樹は男がてらに家事能力はプロ級だったりする。


さて、それはともかく今日は3時から慎二とカラオケに行く約束があるので、急いで準備をしなくてはならない。

慎二の連れが4人程いるのはアイツなりの気遣いであり、俺にとってはありがたくも少し困惑する気遣いだ。


「うん・・・?何か・・・体が重い・・・」


気だるい体を奮起させつつも、ベッドから抜け出した俺は洗面台に行って顔を洗おうと足を踏み出した。

そして直ぐ様、盛大にこけた。


「へぶっ!?」


両手を上げながらの、顔面から床と熱烈なキスを披露することになった俺は、赤くなった鼻を押さえながら自分の足元を見る。



何故かパジャマのズボンがずり落ちていた。

足に引っ掛かったのこれだったのだ、しかし何故みたいきなり?


まぁ、きっとゴムが切れたのだろうと検討をつけておく。

ズボンを拾い上げた俺は、再び洗面台へと向かう。

気のせいか上着の方も肩がずれ落ちている気がする。

昨日の夜は相当寝相が悪かったのだろうか?

父さんが言うには、俺の寝相は凄くいいらしいのだが・・・。


というかさっきから視界にチラチラとうつる前髪も昨日より伸びていやしないだろうか?


いやそんな馬鹿なことがあるわけがない、一日で髪の毛が自覚できるくらい伸びるなら育毛剤は不要だって


気付こうと思えば気付けた異変、けどこの時の俺は急いでいたので、それを見るまで気付くことができなかった。

浴室の外にある洗面台に向かい姿見に俺の姿が映る───その筈だった。


何故かそこに俺の姿はなかった。そこに写っていたのは銀髪碧眼の美少女だった。


俺と同じ色の髪は、俺のものより細くそして柔らかく、俺と同じ色の目は猫科を思わせる愛らしい目をしていた。

唇は小さく、大きなものなどを食べる時には苦労しそうだなと思う。

ちょこんと乗せられたような小さな鼻が顔全体の雰囲気を柔らかくしていた。


体の方も括れたウエストに、可もなく不可もない程好い大きさの形のいいバスト、キュッとしまった桃尻。

小さく細く、華奢になった手と足、どこか儚げな印象を与える美少女が姿見には写っていた。


しかし妙だ、今この部屋には───いやこの家には俺一人しかいないのだから。


(まさか・・・泥棒か?)


しかしなんで泥棒が俺のパジャマを握って???て、へ?


ちょっと待った。

姿見の中の少女は今俺が脱いだパジャマのズボンを握っているよな・・・?


「・・・・・・。ばんざーい」


俺が両手を上げたら姿見の中の少女も両手を上げていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「えええぇええぇぇええええええええぇええぇええぇええええっー!?」


ふと頭を過る昨日の空耳。


『その願い、叶えてやろう』


「まさか・・・」


いやでも確かに・・・でも俺の願いは・・・。


「俺が欲しいのは可愛い女の子、つまり彼女な訳であって俺自身を美少女にしろなんて言ってねぇええええ!?」


拝啓、天国の母上様。クリスマスの日、どうやら俺は女の子になってしまったようです。

後書きという名の挨拶

この旅は本作品を呼んで戴きまして有り難う御座います。

タイトルの意味は保母ナッシングです。

尚、後書きの誤字はわざとです。

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