魔法少女アスカ #2
その日、アスカは時計塔でシオンと会話をしていました。
「ここに来たのは初めてですよね、アスカさん?」シオンが言いました。
「ええ。この時計塔でこの町の時間の流れに影響を及ぼしているそうね。」アスカが言いました。
「え……ええ。」シオンが言いました。
「私も実験の影響でそれに近い能力が使えるようになってるけど、街全体にそれ程の影響を及ぼせるとなると驚きだわ。」アスカが言いました。
「えっと……。」シオンが言いました。
「どうしたの?」アスカが言いました。
「実は、ここだけの話なのですが……。」シオンが言いました。
「え……?」アスカが言いました。
「この塔の魔法によってこの町の時間の流れがおよそ七分の一になっているとされてはいるのですが、実際のところどれくらいの影響が出ているのかハッキリとは分かっていないのです。」シオンが言いました。
「そうなの?」アスカが言いました。
「一説によると時間の流れ方は時期によって異なっているともされていますし、時間の流れの変化に連動して機能している老化の魔法も魔法少女には効かないとされていますが、実際のところ効かないどころか逆に作用しているのではないかという説もあるのです。」シオンが言いました。
「要するに、謎だらけってこと?」アスカが言いました。
「時間の流れの変化に連動した記憶操作の魔法や事象操作の魔法等が我々の調査に影響を及ぼしていて正確なデータが採れていない上に、老化の魔法が魔法少女に与える影響に関してはこの短いスパンでは断言出来ない部分も多いらしく……。」シオンが言いました。
「まあ、私自身もこんなだし、そういう事態が起こっていても驚きはしないわね。」アスカが言いました。
「一応、平均すると七分の一程度の時間の流れになっている可能性が高いという結論に至ったので上にはそのように報告しています。」シオンが言いました。
「分かったわ。」アスカが言いました。
「まあ、詳しい話について興味があれば研究チームに声を掛けて下されば……。私では詳しい話が出来ませんから……。」シオンが言いました。
「それよりも、何か手伝える仕事は無いかしら?」アスカが言いました。「ここに来ればそういう話があるって聞いたんだけど……。」
「はい。そういうことでしたら、人手を必要としている各部署の仕事を紹介しましょう。」シオンが言いました。
アスカが去った後、シオンの元にツバキが訪れました。
「驚いたね、あのアスカが魔法少女としての活動を始めたとは。」ツバキが言いました。
「ツバキ……。」シオンが言いました。「見ていたのか。」
「それにしても、この時計塔の機能についてあまり口にするべきじゃ無いと思うね。」ツバキが言いました。「それとも、見た目が子供だったからつい正直になってしまったのかい?」
「いや……。」シオンが言いました。
「ひとまずこの時計塔がこの町の時間の流れを平均しておよそ七分の一にしていることは分かっているのだから、それ以外の曖昧な部分に関しては黙っておいた方が良い。」ツバキが言いました。
「そちらの方こそ、例の一件で警察庁が動いているようだが、上手く誤魔化すんじゃ無かったのか?」シオンが言いました。「何をしている?」
「向こうが動き出す前から連絡を入れていては手回しが良すぎて怪しまれるだろう?適切なタイミングを計っているのさ。」ツバキが言いました。
「連絡が遅過ぎても顰蹙を買う。そろそろ頃合いだろう?」シオンが言いました。
「はいはい。」ツバキが言いました。
アスカはカエデのオフィスを訪れていました。そこにはカエデとケイトリンがいました。
「あなたは……。」カエデが言いました。
「アスカよ。」アスカが言いました。
「お噂はかねがね……。」カエデが言いました。
「何か手伝えることがあるって聞いて来たんだけど……?」アスカが言いました。
「いや……。」カエデが言いました。
「え……?」アスカが言いました。
「今私は闇の力を阻止する仕事を行っているのですけど、基本的には闇の力に対する防衛チームの手が回らない時のサポートを行っているだけですので、そこまで忙しいワケじゃ……。」カエデが言いました。
「闇の力に対する防衛チームも、闇の力が不活発である現状、閑散です。」ケイトリンが言いました。
「要するに応援は要らないって訳ね。」アスカが言いました。
「えっと……。」カエデが言いました。
「上が現場の状況を適切に把握出来ないなんてことはよくある話ね。」アスカが言いました。
「まあ……上も上で大変でしょうから……。」カエデが言いました。
「そういうことにしておくわ。」アスカが言いました。
「あ……!もし宜しければ、アスカさんの話、色々と聞かせてくれませんか?」カエデが言いました。
「気を遣ってくれてるの?」アスカが言いました。
「いや……。」カエデが言いました。
「ありがとね。これと言って話せるようなことも無いんだけど……。」アスカが言いました。
「確か噂だと、アスカさんには対象とした無生物の時間を遅らせる特殊能力があるとのことですけど、それって本当なんですか?」カエデが言いました。
「私の噂ってチームの一員だった頃のことじゃないの?例の実験に関する情報は限られたメンバーしか知らないハズよ。」アスカが言いました。
「えっと……まあ……。」カエデが言いました。
「まあ良いわ。確かに私にはそういう能力があるわ。でも、それは私の本来の能力じゃ無いわ。」アスカが言いました。
「なるほど。」カエデが言いました。
「アスカの元々の隠された能力は衝撃を受けると同時に爆発する魔法榴弾を生成するもののようです。」ケイトリンが言いました。
「よく分かったわね。」アスカが言いました。
「はい。」ケイトリンが言いました。
「私の能力を分析して特殊な武器を作り出す研究も行われていたけど、試作品はどれも一発の威力が高い反面、使用者の魔力消費が大きい上に、連射性も低く、オマケに耐久性にも不安があるということで保管庫で眠ることになったわ。」アスカが言いました。
「へえ……。」カエデが言いました。
「興味深い。」ケイトリンが言いました。
「私の話はこんなんで良い?」アスカが言いました。
「はい。」カエデが言いました。
「邪魔して悪かったわね。私は行くわ。」アスカが言いました。
「どうされるんですか?」カエデが言いました。
「さあ……?今日のところはひとまず町をパトロールしてみるわ。」アスカが言いました。
「分かりました。」カエデが言いました。
とある通りに一体の暗黒鏡人が姿を現しました。
「こんな世界……壊してやる!」そう言ってその暗黒鏡人がその通りを破壊し始めました。
そこへアスカが通り掛かりました。
「確かに一時期よりは闇の力が大人しくなってるとはいえ、それでもまだまだのようね。」アスカが言いました。
「ん……?」その暗黒鏡人がアスカに気付きました。
「何だクソガキ!?」その暗黒鏡人が言いました。
「ガキじゃない!」アスカが言いました。
「ガキだろうが!」その暗黒鏡人が言いました。
「この……!」アスカが言いました。「大体そっちの方こそ何なワケ!?」
「俺は角が立たないよう一生懸命生きてきた!それなのに、この世界には社会の調和を乱す輩が多過ぎる!」その暗黒鏡人が言いました。「調和が保てない以上、最早この世界を壊すしかない!」
「ヤンデレなワケ?」アスカが言いました。
「何だと?」その暗黒鏡人が言いました。
「角が立たない生き方が素晴らしいって思ってるんだったら死ぬまで大人しくしてれば良かったのよ。アンタは所詮大きな理想を掲げてそれに酔ってるだけのつまらない人間よ。大人なら現実と折り合いをつけてみたらどう?」アスカが言いました。
「テメエ……!」その暗黒鏡人が言いました。
「お喋りも悪くないけど、それだけじゃこの手のバケモノは止められないのよね。」そう言ってアスカがマジカルチェンジャーを構えました。
「変身!」アスカが変身しました。
「貴様……ただのガキかと思っていたら……魔法少女だったのか!」その暗黒鏡人が言いました。
「ええ!だから今からあなたを潰すわ!」アスカが中指を立てながら言いました。
「くっ……!」その暗黒鏡人が言いました。
「ハアッ!」アスカが掌から魔法榴弾を放ちました。
「ウアアアッ……!」その暗黒鏡人が魔法榴弾を受けてふっ飛ばされました。
「くうっ……!」その暗黒鏡人がよろめきながら立ち上がりました。
アスカが魔法の拳銃“マジカルオート”を構えました。
「なっ……!」その暗黒鏡人が言いました。
「ハアッ!」アスカがマジカルオートを連射しながらその暗黒鏡人に向かっていきました。
「ウッ……!クッ……!」その暗黒鏡人が次々と飛んでくる魔法弾を受けて怯みました。
アスカがマジカルオートを撃ちながら前進する合間にマジカルムーブを発動しました。
「フッ!」アスカが上方に向けて魔法榴弾を放ちました。
「ん……!?」その暗黒鏡人が言いました。
アスカの放った魔法竜弾はその暗黒鏡人の頭上を飛び越えて放物線を描きながら落下していきました。そして、アスカがその魔法榴弾の時間を止めると、その魔法榴弾がその暗黒鏡人の背後の空中で静止しました。
「なっ……!」その暗黒鏡人が言いました。
「マジカルソバット!」アスカがその暗黒鏡人を蹴り飛ばしました。
「ウアアアアアアアッ……!」その暗黒鏡人が空中で静止する魔法榴弾の方へとふっ飛ばされていきました。
アスカはその暗黒鏡人がその魔法榴弾に直撃する寸前で、その魔法榴弾の時間を再び動かしました。その暗黒鏡人がその魔法榴弾に激突し、爆発が起こりました。
「全力を出してみたつもりだけど、思ったより手こずったわね。」アスカが言いました。「魔法少女ってのも結構大変みたいね。」
アスカは後ろを向いて歩き出しました。
「くっ……!まだだ!」その暗黒鏡人が倒れ込んだまま言いました。
アスカは後ろに向けて魔法榴弾を放ちました。
アスカがその魔法榴弾の爆発までの時間を遅らせると、その魔法榴弾は地面の上を転がっていきました。
「な……!」その魔法榴弾が傍に転がってきたその魔法榴弾を見て言いました。
「ウアアアアアアアッ……!」その暗黒鏡人はその魔法榴弾の爆発と共に爆発しました。
おわり