魔法少女モエ #7
その日、モエはエリコのセーフルームを訪れました。
そこにはシュンコが一人で佇んでいました。
「様子を見に来たよ、シュンコ。」モエが言いました。
「モエ……。」シュンコが言いました。
「仲間探しは順調だよ。だからもっと元気を出してよ。」モエが言いました。
「多くの命が失われ、仲間達の信頼も失った。全ては私の不甲斐無さのせい……。」シュンコが言いました。
「えっ……?」モエが言いました。
「このままでは死んだ仲間達も浮かばれず、信頼も取り戻せないわ。」シュンコが言いました。
「これ一人にしたのがマズかったパターンだな。」モエが言いました。
「失った信頼は結果で取り戻すしか無いわ。」シュンコが言いました。
「何する気……?」モエが言いました。
「レイコを倒し、反撃の狼煙とする!」シュンコが言いました。
「止めてよ。こっちが準備を進めてるのに……。」モエが言いました。
シュンコはセーフルームを出て行きました。
「まあ、シュンコが焦るのも無理ないか……。」モエが言いました。
シュンコは通りを歩いていました。
モエがシュンコを追いかけてきました。
「ちょっと待ってよ!」モエが言いました。
「止めないでモエ!」シュンコが言いました。
「止めなきゃ……!」モエが言いました。「今SSSと戦っても犬死だよ!」
「エリコにはどんな逆境にも屈しない鉄の意志がある!たとえ私一人でもSSSを殲滅してみせるわ!」シュンコが言いました。
「いや……ムリだって……!」モエが言いました。
「モエの言う通りさ。」そう言ってツバキとオインクが姿を現しました。
「誰……!?」シュンコが言いました。
「ツバキさん……!」モエが言いました。
「ツバキ……?」シュンコが言いました。「政府の人間……?」
「そうさ。」ツバキがシュンコが言いました。
「データを纏め終わったから君のパートナーを返しに来たんだけど……。」ツバキがモエに言いました。
「オインク。」オインクが言いました。
「まあ、集めて貰ったデータの質についてとやかく言ってる場合じゃ無さそうだね。」ツバキが言いました。
「いやあ……。あはは……。」モエが言いました。
「私は行くわ。レイコを倒す!」シュンコが言いました。
「たった一人でSSSに戦いを挑む気かい、シュンコ?」ツバキが言いました。
「そうよ!」シュンコが言いました。
「止めた方が良い。死ぬだけさ。」ツバキが言いました。
「違う!」シュンコが言いました。
「おおっ……!」ツバキが言いました。
「政府はそうやっていつも脅威から目を背けていた!その結果多くの人々が犠牲となった!でも私達は違う!鉄の意志と鋼の強さでいかなる逆境をも撥ね退け世界の平和を守り抜く!」シュンコが言いました。
「口では何とでも言えるさ。でも、実際は無理だ。君はSSSには勝てない。」ツバキが言いました。
「だったら証明してみせる、私の力を……エリコの力を!」そう言ってシュンコが“ウィング”のカードを取り出しました。
「ちょっと……!」モエが言いました。
「ここで私一人に勝って、それでSSSを倒せるという証明になるのかな?」ツバキが言いました。
「黙って!」シュンコが言いました。
「止めて、シュンコ!」モエが言いました。
「止めないで!このままではみんなに面目が立たない!」シュンコが言いました。
「そういうことね。」ツバキが言いました。
「私は人の上に立つ器じゃない。戦うことしか私には出来ないのよ!」シュンコが言いました。
「それは違うよ、シュンコ!」モエが言いました。
「どういう意味……?」シュンコが言いました。
「戦うこと以外にも出来ることがあるんじゃないかって意味じゃないかな?戦うことを止めて一度考えてみたらどう?」ツバキが言いました。
「それならもう十分考えたわ!これ以上の話し合いは無意味よ!」シュンコが言いました。
シュンコが“ウィング”のカードをマジカルチェンジャーに挿入しました。
「やれやれ……。」そう言ってツバキがマジカルテックモバイルを取り出しました。
「反逆の翼翻せ!」シュンコが変身しました。
「変身!」ツバキが変身しました。
「変身!」モエが変身しました。
シュンコがマジカルテックナイフを手にモエに近づいていきました。
「えっ……?こっち来んの!?狙いはツバキさんでしょ!?」モエが言いました。
「邪魔をするならあなたも敵よ!」シュンコが言いました。
「しょうがない。」モエが言いました。
「オインク!」オインクがマジカルテックピストルを召喚しました。
「ハアッ!」モエがマジカルテックピストルを撃ちました。
「フッ!」シュンコが翼でモエの攻撃を防ぎました。
「ハアッ!」シュンコが素早くモエの脇を通り抜けながらマジカルナイフで切りつけました。
「ウウッ……!」モエが怯みました。
ツバキがマジカルテックライフルを撃ちました。
「グッ……!」シュンコがツバキの攻撃を受けて怯みました。
「ハアッ!」体勢を立て直したモエがマジカルテックピストルを撃ちました。
「くっ……!」シュンコが体勢を立て直してマジカルナイフでモエの攻撃を弾きました。
「マジカルスチール!」モエがシュンコの持つマジカルナイフを自身の左手に瞬間移動させました。
「なっ……!」シュンコが言いました。
「フッ!」ツバキがマジカルナイフを撃ちました。
「フン!」シュンコが空を飛んでツバキの攻撃をかわしました。
「へえ……。」ツバキが言いました。
モエがシュンコに向けてマジカルテックピストルを撃ちましたが、シュンコは空を飛び回ってモエの攻撃をかわしました。
「当たらない!」モエが言いました。
「だったら、これならどうかな?」そう言ってツバキがマジカルテックモバイルをマジカルテックライフルに接続して構えました。
「ハアッ!」ツバキが魔法ロケット弾を放ちました。
魔法ロケット弾がシュンコに向かって飛んでいきました。
「何……!?」シュンコが言いました。
シュンコは追尾してくる魔法ロケット弾を振り切ろうとしましたが、モエの放った魔法弾を受けて怯み、そのまま魔法ロケット弾の直撃を受けました。
「ウアアアッ……!」シュンコはそのまま地面へと落下していきました。
「フッ!」モエがマジカルナイフを構えてシュンコに向かってジャンプしました。
「あっ……!」シュンコが言いました。
「マジカルマーダー!」モエが空中でシュンコを切りつけました。
「ウアアアアアアアッ……!」シュンコはモエの攻撃を受けた後、地面に倒れ込みました。
「くっ……!」シュンコは立ち上がろうとして失敗しました。
「あなたの負けだよ、シュンコ。」モエが言いました。
「まだ私の魔力は残っている!勝ったと言うのなら、トドメを刺して!」シュンコが言いました。
「よし……!」そう言ってツバキがマジカルテックライフルを構えました。
「ツバキさん……!?」モエが言いました。
「なんてね。」そう言ってツバキが構えを解きました。「ジョークだよ。」
「くっ……!」シュンコが言いました。
「君は殺すには惜しい魔法少女だ。」ツバキが言いました。
「どういうこと……?」シュンコが言いました。
「君は自分は戦うことしか出来ないと言ったけど、それは君が戦うことしか知らないからだよ。もっと広い世界を見て、色々なことを知れば君は変われる。」ツバキが言いました。
「余計なお世話よ!」シュンコが言いました。「エリコとこの反逆の翼があれば私は他に何も望まない!」
「それはどうかな?」ツバキが言いました。
「何……!?」シュンコが言いました。
「時計塔に来なよ。」ツバキが言いました。
「ツバキさん……!?」モエが言いました。
「時計塔……?」シュンコが言いました。「そこに何が……?」
「魔法庁の活動拠点さ。」ツバキが言いました。
「えっ……?」シュンコが言いました。
「そこに行って魔法庁の活動を知れば、君の考え方も少しは変わるハズさ。」ツバキが言いました。
「エリコの私が政府の施設へ行くなんて……!歓迎されるハズが無い!」シュンコが言いました。
「そこは私が話を通しておくから心配要らないよ。」ツバキが言いました。
「でも……!」シュンコが言いました。
「怖いのかな、自分達とは違う正義を知ることが?」ツバキが言いました。
「何を言うの?そんなこと……。」シュンコが言いました。
「なら、来るしか無いね。」ツバキが言いました。
シュンコがゆっくりと立ち上がりました。
「断る。」シュンコが言いました。「政府の掲げる正義には、鉄の意志も鋼の強さも感じられないに決まってるわ。」
「それを決めるのは一度時計塔に来てからでも良いんじゃない?」ツバキが言いました。
「フン……。」そう言ってシュンコはその場から立ち去ろうとしました。
「私は君に勝った。」ツバキが言いました。
シュンコが足を止めました。
「負けたんだから、一つくらい勝った相手の言うことを聞いてみても良いんじゃないかな?」ツバキが言いました。
「いや……私は行かないわ。」そう言ってシュンコはその場を去りました。
「フッ……。」ツバキが言いました。
「来ると思います?」モエが言いました。
「さあね。」ツバキが言いました。
「と言うか、二対一で戦って、それで勝ったから言うこと聞けってちょっとムチャな感じしません?」モエが言いました。
「鉄の意志と鋼の強さがあればどんな逆境も撥ね退けられるんだから、十分フェアな勝負さ。」ツバキが言いました。
「まあ……確かに……。」モエが言いました。「私も何か言っとけば良かったかな?」
「頼むなら、何を頼みたかった?」ツバキが言いました。
「えっと……オインクの鳴き真似をしてみて欲しかったかな。」モエが言いました。
「オインク!?」オインクが言いました。
「そりゃあ良い。私もちょっと見てみたかったよ。」ツバキが言いました。
「オインク!」オインクが言いました。
「それじゃ、私は行くよ。」ツバキが言いました。「時計塔に彼女が来たら、よろしく頼むよ。」
「はい。」モエが言いました。
「オインク!」そう言って手を振ってツバキはその場から去りました。
「オインク!」そう言ってモエはツバキを見送りました。
おわり