魔法少女X #2
ミチコは新しく借りた部屋でマーシャからの連絡を待つ日々を送っていました。平凡な日常が退屈に感じられるミチコでしたが、新しい住居で新しい仕事が来るのを待つ日々は、何もしていなくともミチコにとって充実した時間に感じられていました。
そんなある日、部屋に一人の人物が訪ねてきました。ミチコはマーシャが訪ねてきたと思ってドアを開けたのですが、そこに立っていたのは一人の少女でした。
「あなたは……?」ミチコが言いました。
ミチコはその人物が自分の身の安全を脅かす存在である可能性も考えましたが、それならしれで致し方無いと腹を括っていました。
「私はツバキ。」その少女が言いました。「君と同じ……犯罪者さ。」
「犯罪者……?」ミチコが言いました。
「ああ。犯罪者同士、中で話をしても良いかな?」ツバキが言いました。
「ええ。構わないわ。」ミチコが言いました。「話すだけで物足りないなら、殺し合ってみても良いわ。」
「いや、遠慮しとくよ。」ツバキが言いました。
そしてミチコとツバキは部屋の中へと移動しました。
「犯罪者が何の用?」ミチコが言いました。
「君のウワサを耳にしてね……その……犯罪者ネットワークで。」ツバキが言いました。
「もうウワサになっているの?」ミチコが言いました。「まあ、確かに派手にやったけど……。」
「いや、そこまで大したウワサにはなってないさ、今のところはね。」ツバキが言いました。「今はホラ、キャプターの方が目立ってるだろ?」
「キャプターなんて都市伝説じゃ無いの?」ミチコが言いました。
「ん……?ああ……!そうさ!キャプターなんてただの都市伝説さ!それで君もまた都市伝説の一つさ、キャプターよりもマイナーな。」ツバキが言いました。
「マイナーでも、こうして居場所を嗅ぎつけられちゃったのよね。」ミチコが言いました。
「私のその……犯罪者ネットワークは有能だからね。」ツバキが言いました。
「それで、そのネットワークで私の存在を嗅ぎつけて、どうするつもりでいるの?」ミチコが言いました。
「決まっているだろう?」ツバキが言いました。「犯罪者同士、犯罪を犯すのさ!」
「どんな……?」ミチコが言いました。
「そりゃあ君の得意分野さ!窃盗だよ!」ツバキが言いました。
「何を盗み出すの……?現金?宝石?」ミチコが言いました。
「んー……そういうのも悪くは無いが、今回の獲物はそういった物とは一味違う。武器さ。」ツバキが言いました。
「武器……?」ミチコが言いました。
「そう!アサルトライフルの調達に手を貸してくれないかな?」ツバキが言いました。
「アサルトライフル……?」ミチコが言いました。
「そう!」ツバキが言いました。「良いだろう?」
「さあ……?」ミチコが言いました。「この町に武器の美術館があったかしら?」
「近い物ならある。」ツバキが言いました。「SSSさ。」
「SSS……。警備会社の……?」ミチコが言いました。
「そう!スピアソルジャーズセキュリティ、あの会社はまさに武器の美術館と呼べるね。」ツバキが言いました。
「ただの警備会社じゃ無いの?」ミチコが言いました。
「それはどうかな?」ツバキが言いました。
「なるほど。ただの警備会社じゃ無いってワケね。」ミチコが言いました。
「とにかく、あの会社に行けば最新式の魔法のアサルトライフルが手に入る。」ツバキが言いました。「手に入れて欲しい。」
「侵入しようにも警備会社が警備してるんじゃ無いの?」ミチコが言いました。
「君の前にはザルも同然だよ。」ツバキが言いました。
「そんなに自信は無いけど、まあ、やってみても良いわ。」ミチコが言いました。
「そう来なくっちゃ!」ツバキが言いました。
「計画を考えなくちゃいけないわね。」ミチコが言いました。
「計画なら既に練り上げてある。君はその計画を実行してくれれば良い。私も最大限のサポートをするよ。」ツバキが言いました。
「分かったわ。」ミチコが言いました。
「それじゃあ計画を説明しよう。」ツバキが言いました。
その頃、警察署ではヨウコがイヌのような容姿を持つ妖精“ポリー”と話していました。
「先日起きた郵便局での強盗、あれはどうやら魔法使いの犯行みたいね。」ポリーが言いました。
「あの事件……確か防犯カメラの映像にも犯人の手掛かりが残って無かったって言う……?」ヨウコが言いました。
「ええ。でも、捜査の結果、犯人が魔法使い、延いては魔法少女であることが分かったのよ。」ポリーが言いました。
「つまりうちの管轄と……?」ヨウコが言いました。
「そう。正体不明の魔法少女、通称“X”。そこであなたにそのXを追って欲しいの。」ポリーが言いました。
「ちょっと待って……!私は今キャプターの取り締まりで手一杯よ?それなのに強盗事件の捜査だなんて……!他に出来る人はいないの!?」ヨウコが言いました。
「私としてもあなたにばかり負担をかけたくないとは思ってるけど、他に私達に協力してくれる魔法少女が見つからないから仕方無いのよ。クイーンにも相談はしてるんだけど……。どうにかお願い出来ない?」ポリーが言いました。
「分かったわ。一応手はつけてみるのよ。」ヨウコが言いました。「X……。」
その日の夜、ミチコはとある建物の屋上に立ってSSSの建物を見つめていました。
「準備は出来たかい?」ミチコの持つ魔法の通信機からツバキの声が聞こえてきました。
「ええ。」ミチコが言いました。
「よし。それじゃあ始めようか?」ツバキが言いました。
「分かったわ。」そう言ってミチコはマジカルチェンジャーを構えました。
「変身!」ミチコが変身しました。
「今こそ君の能力を発動するんだ!」ツバキが言いました。
SSSの建物は多数の警備員達によって警備されていました。
しかし、その瞬間、ミチコが警備員達が視認出来ない程の速度で扉から屋内へと侵入しました。
「何だ今のは……!?」突然の出来事に驚いた様子で警備員の一人が言いました。
「侵入者だ!」別の警備員が叫びました。
「侵入者……!?姿が全く見えなかったぞ!」また別の警備員が言いました。
「とにかく応援を呼べ!」またまた別の警備員が叫びました。
ミチコは目にもとまらぬ速さでSSSの建物内を駆け抜け、目的の品のある部屋へと辿り着きました。
「よし、順調なようだね。」ツバキが言いました。
「これが目的の品ね。」ミチコが魔法の突撃銃を手に取って言いました。
「良いね!後はソイツを持ちかえるだけさ!」ツバキが言いました。
「簡単に言ってくれるけど……。」ミチコが言いました。
その瞬間、多数の警備員達がその部屋に突入しました。
「いたぞ!あそこだ!」警備員の一人が言いました。
そして警備員達が一斉に魔法の拳銃を撃ち始めました。
「くっ……!」ミチコは高速移動で物陰へと隠れました。
「SSSの連中もなかなかやるみたいだね。」ツバキが言いました。
「特殊能力を使って逃れたいところだけど、これ以上魔力が持つ気がしないわ。どうすれば良い?」ミチコが言いました。
「ヤツらを蹴散らすんだ。君なら出来る!」ツバキが言いました。
「ええっ……!?」ミチコが言いました。
「心配は要らない。どうせヤツらは戦争で利益を得ている悪党共さ。だから地獄へ送ってやろう。」ツバキが言いました。
「どうやって地獄へ送るの?この銃を使って良い?」ミチコが言いました。
「残念ながらその銃はSSSが魔法でロックをかけているハズだから、今のままでは撃つことは出来ないだろう。別の方法を考える必要があるね。」ツバキが言いました。
「別の方法なんて要らないわ。この銃を使わせて貰うわよ?」ミチコが言いました。
「使えるのなら構わないけど……。」ツバキが言いました。
その瞬間、ミチコは両手で魔法の突撃銃の銃身を握り、高速移動で警備員達の背後へと回り込み、銃床で警備員の一人を殴り倒しました。
警備員達が慌てて振り返り、ミチコに向けて拳銃を撃とうとしましたが、ミチコは魔法の突撃銃を振り回し、瞬く間に警備員達を殴り倒していきました。
残った警備員達が拳銃を撃ってミチコに攻撃を仕掛けましたが、ミチコは自身に飛んできた銃弾を魔法の突撃銃で防ぐと、高速移動で再び警備員達の背後へと回り込み、残りの警備員達も殴り倒しました。
「殲滅したわ。」ミチコが言いました。
「よくやったね!」ツバキが言いました。「これ以上敵が増える前に建物から脱出するんだ。」
ミチコは建物の外へと出ました。
しかし、その瞬間、警備員達が近づいてきました。
「一!二!三!四!SSS!二!二!三!四!SSS!」警備員達が走りながら言いました。
「あのアホ共は何?」ミチコが言いました。
「マズいな……。」ツバキが言いました。「アレはレイコのチームだ。」
「レイコ……?誰……!?」ミチコが言いました。
「SSSの魔法少女さ。」ツバキが言いました。
「魔法少女……?」ミチコが言いました。
警備員達が足を止め、魔法の短機関銃を構えました。
「あっ……!」ミチコが声を上げました。
警備員達がミチコに向けて一斉に魔法の短機関銃を撃ち始めました。
「くっ……!」ミチコは高速移動で警備員達の攻撃をかわすと、魔法の突撃銃を左手に持ち、マジカルピストルを召喚して右手で構えました。
「ハアッ!」ミチコはマジカルピストルを撃って警備員達を倒していきました。
残った警備員達が魔法の短機関銃を撃ってミチコを攻撃しましたが、ミチコは高速移動で警備員達の攻撃をかわしながらマジカルピストルを撃って警備員達を全滅させました。
「どうやらこの私のチームを倒したようね。」そこへ一人の少女が姿を現し、そう言いました。
「あなたは……?ひょっとして……。」ミチコが言いました。
「私はレイコ。魔法少女よ。」その少女が言いました。
「変身。」レイコがマジカルチェンジャーで変身しました。
レイコが魔法の旋棍“マジカルバトン”を召喚し、それを構えました。
「ハアッ!」ミチコがマジカルピストルを撃ってレイコに攻撃を行いました。
「フッ!」レイコがマジカルバトンでミチコの攻撃を防ぎました。
「ハアッ!」レイコが目から魔法線を放ち、ミチコを攻撃しました。
「ウワアッ……!」ミチコがレイコの攻撃を受けて転倒しました。
「今の攻撃は……!?」ミチコが立ち上がりながら言いました。
「言い忘れたが、ヤツは目からビームを繰り出すことが出来る!」ツバキが言いました。
「なっ……!ええっ……!?」ミチコが言いました。
「まともにやり合っても良いことは無い。逃げるんだ!」ツバキが言いました。
「確かにそうした方が良さそうね。」そう言ってミチコは走り出しました。
「ハアッ!」レイコが魔法線を放って逃げるミチコを攻撃しました。
ミチコはレイコの放った魔法線の直撃により爆発が起こる中を走り続けました。レイコは繰り返し魔法線を放ってミチコに攻撃を行いましたが、ミチコは高速移動を使ってその場から逃げ果せました。
「上手く逃げたわね。」レイコが言いました。
とある路地へと逃げ込んだミチコはそこで一息ついていました。
「これで上手く行ったかしら……?」ミチコが言いました。
「いや、どうやらそうも行かなさそうだよ。」ツバキが言いました。
そこへヨウコが姿を現しました。
「あなたがXね?」ヨウコが言いました。
「は……?」ミチコが言いました。
「警備会社の動きを監視してたら、思いの外簡単にあなたを見つけることが出来たのよ。」ヨウコが言いました。
「Xって何?あなた誰?もしかしてY……?」ミチコが言いました。
「私はヨウコ、警察よ!」ヨウコが言いました。
「警察……!?」ミチコが言いました。
「彼女は警察庁の魔法少女だ。」ツバキが言いました。
「変身!」ヨウコが変身しました。
「ウソでしょ!?」ミチコが言いました。「どんだけ魔法少女がいるのよ!?」
「警察庁にもSSSにも一人ずつだけさ。」ツバキが言いました。「しかし彼女がこの計画の障害になるとは……。」
「警察なんだからジャマしてくるのは当然なんじゃ無いの?」ミチコが言いました。
「魔法局にとって今一番重要なのは……。いや、何でも無い。とにかくヤツを倒すんだ。」ツバキが言いました。
「大人しくお縄を頂戴するのよ!」ヨウコが言いました。
「ハアッ!」ヨウコが魔法の稲妻を放ってミチコを攻撃しました。
「アッ……!」ミチコが魔法の稲妻を受けて声を上げました。
「ううっ……!」ミチコ呻き声を上げて膝から崩れ落ちました。
「くうっ……!」ミチコが倒れ込んだまま顔を上げてヨウコを見ました。
「どう?これが私の特殊能力なのよ!」ヨウコが言いました。
「ビームの次は電撃?いくら私が犯罪者だからって、容赦無さ過ぎじゃない?」ミチコが立ち上がって言いました。
「魔法少女でありながら犯罪を犯すようなクズはこの場で処刑よ!電気ショックの刑なのよ!」ヨウコが言いました。
「くっ……!これ以上特殊能力を発動出来るだけの魔力が残ってる気がしないわ。どうやら電撃にもがき苦しみながら最期を迎えるしか無いようね。」ミチコが言いました。
「そうよ!それこそがクズに相応しい死に方なのよ!」ヨウコが言いました。
とある建物の屋上に、以前監視カメラに映ったミチコの映像を見ていた二人の魔法少女達の内の一人であるその魔法少女が立っていました。
その魔法少女はそこからミチコとヨウコの様子を窺っていました。
「何度も何度もクズとばかり……他の言葉を知らないのかな?」その魔法少女が呟きました。
その魔法少女は魔法の携帯電話“マジカルテックモバイル”を手に取ると、武器召喚アプリを起動して魔法の小銃“マジカルテックライフル”を召喚しました。
さらにその魔法少女はマジカルテックモバイルのロケットアプリを起動してマジカルテックライフルに接続すると、マジカルテックライフルを構えました。
「悪いけど、ここで彼女を殺されては困るんだよ。」そう言ってその魔法少女はマジカルテックライフルを撃ち、魔法ロケット弾を放ちました。
「死ぬのよ!」そう言ってヨウコがミチコに向けて魔法の稲妻を放とうとしたその瞬間、その魔法少女が放った魔法ロケット弾がヨウコに向かって飛んできました。
「なっ……!」ヨウコが声を上げました。
飛んできた魔法ロケット弾がヨウコに直撃して爆発しました。
「なーっ……!」ヨウコはその爆発でふっ飛ばされました。
「えっ……!?」ミチコが言いました。
「覚えてるのよーっ……!」ヨウコがふっ飛ばされながら言いました。
ヨウコはそのままその路地に設置されたゴミ捨て場へと突っ込みました。
「今の内に逃げるんだ。」ツバキが言いました。
「そうね。」そう言ってミチコはその場を後にしました。
その後、ミチコはツバキと落ち合い、手に入れた魔法の突撃銃をツバキに渡しました。
「うん!成功だね!」ツバキが言いました。
「まあ、どうにかね。」ミチコが言いました。「あなたがヨウコを攻撃したの?」
「攻撃……?さあ?」ツバキが言いました。「とにかく助かったんだから良かったじゃ無いか。」
「確かにね。」ミチコが言いました。
「報酬は……君がパートナーの手を借りて開設した口座に振り込んでおくよ。良いかな?」ツバキが言いました。
「パートナ……。マーシャのこと知ってるの?」ミチコが言いました。
「ん……?ああ、知っているとも!調べたんだ。」ツバキが言いました。
「犯罪者ネットワークで……?」ミチコが言いました。
「そう!私も犯罪者だからね!」ツバキが言いました。
「まあ、何でも良いわ。」ミチコが言いました。
「それじゃあ今回はありがとう。また何かあったら連絡しても良いかな?」ツバキが言いました。
「ご自由に……。」ミチコが言いました。
「うん!それじゃあ……!」そう言ってツバキはその場を離れていきました。
おわり