魔法少女アンナ #4
その日、アンナは警察署でヨウコと話していました。
「キャプターを撲滅する為の参考になるかと思い、古い捜査資料に目を通してみました。」アンナが言いました。
「それで、収穫はあったの?」ヨウコが言いました。
「はい。ヨウコ、芸能に興味はありますか?」アンナが言いました。
「興味無いのよ。」ヨウコが言いました。
「芸能人はカードが命という言葉があります。」アンナが言いました。
「過去に芸能人がカードを所持していた事件なんてあった?」ヨウコが言いました。
「いえ……。ですが、過去にアイドルが器物破損事件に関与している疑いが持たれていたことが分かりました。」アンナが言いました。
「アイドル……?」ヨウコが言いました。
「はい。そしてその事件は上層部の意向により捜査が中止されてしまっています。」アンナが言いました。
「まさか……。」ヨウコが言いました。
「少し探りを入れてみても良いかも知れませんね。」アンナが言いました。
「どうするつもり?」ヨウコが言いました。
「そのアイドルが所属していたアイドル学園へ向かおうと思います。そこで話を聞けば何か手掛かりが掴めるかと……。」アンナが言いました。
「アイドル学園……?」ヨウコが言いました。
「スターリード学園。ご一緒にいかがです?」アンナが言いました。
「この際だから、一緒に行くのよ。」ヨウコが言いました。
アンナとヨウコはスターリード学園を訪れ、校長と会いました。
「アンナ……妖精が作った人造魔法少女……。」校長が言いました。
「えっ……?」アンナが言いました。
「アンタ、アンナを知っているの?」ヨウコが言いました。
「ああ。私は政府と関りがある人間だからね。」校長が言いました。
「それじゃあこの学園は……。」ヨウコが言いました。
「政府からの仕事を請け負う機関だよ。」校長が言いました。
「ウソでしょ?」ヨウコが言いました。
「この学園が警察庁の上層部と繋がりがあることは明白でしたが、これはまさに期待していた繋がり方ですね。」アンナが言いました。
「アイドル学園というのは表向きの話ってワケね。それじゃあ実際には何をしてたの?」ヨウコが言いました。
「この学園は実際にアイドル学園だよ。但し、養成しようとしているのはただのアイドルでは無く、アイドルマジカルだ。」校長が言いました。
「アイドルマジカル……?」ヨウコが言いました。
「魔法使いのアイドルということか……。」アンナが言いました。
「魔法使いのアイドル……。」ヨウコが言いました。
「ああ。政府は平和を守る為にとある妖精が作りだした五十三枚の魔法のカードを収集することを決定したんだ。アイドルマジカルは既に集まったカードの力を用いて残りのカードを収集する為の人員だった。」校長が言いました。
「魔法のカード……。」ヨウコが言いました。
「スターカード。君達が追っているマジックカードとは別物だ。」校長が言いました。
「スターカード……。」アンナが言いました。
「そう。そのスターカードを全て集めるべく、我々はこの学園の生徒達の中からスターカードとの適性が高かった三人をアイドルマジカルとして選んだ。」校長が言いました。
「それで、そのカードは全部集まったの?」ヨウコが言いました。
「元々存在していた五十三枚の内の五十二枚は……。」校長が言いました。
「では、残りの一枚は……?」アンナが言いました。
「《ムーン》カード……五十二枚のカードが揃った時に覚醒するとされる最強のカード……。」校長が言いました。
「そのカードだけ集まらなかったのですね。」アンナが言いました。
「でも、他の五十二枚が揃ったなら、その最強のカードも覚醒したんじゃ無いの?」ヨウコが言いました。
「なんと、我々が選んだアイドルマジカルの一人が《ムーン》の正体だったんだよ。」校長が言いました。
「えっ……?」ヨウコが言いました。
「《ムーン》は覚醒するまでの間、人間の姿となり《ムーン》としての自覚が無いまま人間として生活をしていた。そして、我々の目的に引き寄せられるかのようにこの学園に入学したんだ。」校長が言いました。
「カードとの適性があったのも、自身がカードだったから……?」アンナが言いました。
「ああ。」校長が言いました。
「それで、結局覚醒したその子はどうなったの?」アンナが言いました。
「覚醒した当初、その子は人間として生活していた頃の人格を失い、カードとしての本能のままに破壊活動を続けていた。我々としては《ムーン》を倒すという決断を下さざるを得なかったが、最後に残ったアイドルマジカルはその決断に従わなかった。」校長が言いました。
「かつての仲間に手を下せなかったのね。」ヨウコが言いました。「フン……。」
「ヨウコ……?」アンナが言いました。
「ああ。」校長が言いました。
「それで、結局どうなったのですか?誰も《ムーン》を阻止出来なかったのなら、この世界は《ムーン》によって既に滅ぼされているハズですが……。」アンナが言いました。
「その最後のアイドルマジカルが阻止したんだよ、自らを犠牲にしてね。」校長が言いました。
「自らを犠牲に……?」アンナが言いました。
「えっ……?」ヨウコが言いました。
「そのアイドルマジカルはスターカードを揃えてアイドルランクを12とすることで太陽のアイドルとなっていたんだ。」校長が言いました。
「太陽の力……?」アンナが言いました。
「本来アイドルランク10で神アイドルとなるのだが、太陽のアイドルは本来想定されていない奇跡のアイドルだ。」校長が言いました。
「なんか……スゴいのね。」ヨウコが言いました。
「だが、太陽のアイドルは強大な力を持つ反面、その力を使う度に人間では無くなっていくリスクを伴っていた。」校長が言いました。
「人間で無くなる?」アンナが言いました。
「そのアイドルマジカルは太陽のアイドルとしての力を使い続け、新たなスターカード《サン》になった。そして《サン》の力で《ムーン》が覚醒以前に持っていた人間としての心を蘇らせたのだよ。」校長が言いました。
「なるほど。」アンナが言いました。
「奇跡が起こったってワケね。」ヨウコが言いました。
「それで、その二人は……?」アンナが言いました。
「行方不明だ。」校長が言いました。
「行方不明……?」アンナが言いました。
「《サン》と《ムーン》、強大な二つの力が干渉し合い世界の平和を脅かすことを恐れた二人は遠く離れた場所へと姿を消した。その後の二人の行方を知る者はいない。」校長が言いました。
「結局のところはビターエンドってワケね。」ヨウコが言いました。
「その後、この学園は……?」アンナが言いました。
「収集したスターカードが世界の平和を脅かさないように管理を行っている、普通のアイドル事業で資金を稼ぎながらね。」校長が言いました。
「なるほど。」アンナが言いました。
「新しい種類のカードには興味が無いの?」ヨウコが言いました。
「それは私の管轄外だからね。尤も、魔法のカードによる事件ということで、多少の情報のやり取りはあったが、それぐらいのものさ。」校長が言いました。
「その流れでアンナのことも知ったのね。」ヨウコが言いました。
「ところで、三人いた内のもう一人のアイドルマジカルはどちらに……?」アンナが言いました。
「死んだよ。」校長が言いました。
「《ムーン》に殺されたのですか?」アンナが言いました。
「いや、《ムーン》が覚醒する直前、《ダーク》の力で命を落とした。」校長が言いました。
「《ダーク》……。」アンナが言いました。
「まあ、上級カードの一枚さ。ちなみに、《サン》は《ダーク》と対になる《ライト》のカードを手にしたことで太陽のアイドルになったんだ。」校長が言いました。
「なるほど。」アンナが言いました。
「他に質問はあるかな?」校長が言いました。
「あるわね。」ヨウコが言いました。
「はい。スターカードを作り出したとある妖精というのは……?」アンナが言いました。
「名はクロウ。それしか分かっていない。」校長が言いました。
「クロウ……。」アンナが言いました。
「君達はクロウがマジックカードと関りがあると思っているのかね?」校長が言いました。
「はい。魔法のカードを生み出す能力を持った妖精が存在するのであれば、疑わざるを得ません。」アンナが言いました。
「そうよ。」ヨウコが言いました。
「そうか……。」校長が言いました。
「それにもしその妖精がマジックカードの件と関りが無かったとしても、何か参考になる話が聞けそうな予感がします。」アンナが言いました。
「そうなのよ。」ヨウコが言いました。
「ふむ……。」校長が言いました。
「どうされました?」アンナが言いました。
「何か知っていることがあるのね?」ヨウコが言いました。
「今話せることは何も無い。だが、協力出来ることがあればまた連絡しよう。」校長が言いました。
「ありがとうございます。」アンナが言いました。
「それじゃあそろそろ行くのよ、アンナ。」ヨウコが言いました。
「はい。」アンナが言いました。
魔法の車の中でアンナとヨウコは話しました。
「アンナ、あの校長、きっと何か隠しているのよ。」ヨウコが言いました。
「私もそう思います。ただ、その秘密を探ることがキャプター撲滅に繋がるかどうか……。」アンナが言いました。
「確かにそうよね。あの学園で取り扱っていた問題と私達の問題と関係があるのか微妙なところよ。」ヨウコが言いました。
「私はこれ以上あの学園に探りを入れる必要性は低いと思っています。」アンナが言いました。
「刑事のカンってヤツ……?」ヨウコが言いました。
「えっ……?」アンナが言いました。
「アンタもカンが働くようになってきたってワケね。」ヨウコが言いました。
「いや……!」アンナが言いました。
「アンタのカン……そう考えると当たっている気はしないのよ。」ヨウコが言いました。
「それは……どうでしょう?」アンナが言いました。
「フッ。」ヨウコが言いました。
おわり