魔法少女ユウコ #3
その日、ユウコの二つの人格は自室で話をしていました。
「とりあえず、あれ以来ネオエリコの人達に絡まれることは無くなったけど……。」ユウコが言いました。
「連中、オレ達がいつも通る道を縄張りにするの止めたみたいだよな。」裏側のユウコが言いました。
「うん。」ユウコが言いました。「これで安心ってことかな?」
「さあな。ひょっとしたらオレ達を殺す為の作戦を練ってるのかも知れないぜ?」裏側のユウコが言いました。
「やっぱりその可能性あるよね。」ユウコが言いました。「どうしよう?」
「安心しろ。アイツらが現れた時にはオレがやってやるよ。」裏側のユウコが言いました。
「うん。」ユウコが言いました。
「でも、せっかく二人分の魔力が使えるんだから、その利点を活かすならお前も戦えるようになっておいた方が良いかもな。」裏側のユウコが言いました。
「それ思ってた。」ユウコが言いました。「でも……。」
「この間の調子じゃ、ちゃんと戦えるようになるまで時間がかかりそうだよな。」裏側のユウコが言いました。
「うん。」ユウコが言いました。
「ま、少しずつ戦って慣れていくしか無いと思うぜ。」裏側のユウコが言いました。
「だよね。」ユウコが言いました。
「それはそうとだ。」裏側のユウコが言いました。
「ん……?」ユウコが言いました。
「どうも知らなさそうだから教えておくが、オレ達は心と心で会話をすることも出来るんだぜ?」裏側のユウコが言いました。
「え……?」ユウコが言いました。「どういうコト……?」
「つまり、オレ達の間では声に出さずとも相手に言葉を伝えることが出来るってコトさ。」裏側のユウコが言いました。「少し魔力を消費しちまうけどな。」
「テレパシーみたいな感じ?」ユウコが言いました。
「ああ。オレが裏側からお前に話しかけてるのもその魔法を使っているからなんだぜ。」裏側のユウコが言いました。
「なるほど。」ユウコが言いました。
「オレが表に出ている間お前何も言わないから、ビビり過ぎて気を失っちまってるんじゃないかって思ったりもしてたんだよな。」裏側のユウコが言いました。
「まあ、怖くはあったけど……。」ユウコが言いました。
「だが、お前はそんなにビビリじゃない。」裏側のユウコが言いました。
「そうかな?」ユウコが言いました。
「ああ。とりあえず、魔法の練習がてら少し話してみろよ。」裏側のユウコが言いました。
「こんな感じ?」ユウコが裏側に言いました。
「ああ。聞こえてるぜ。」裏側のユウコが言いました。
「スゴい!声を出さずに会話出来た!」ユウコが言いました。
「これでオレ達の能力を使いこなす準備が整ったな。」裏側のユウコが言いました。
「そうだね。」ユウコが言いました。
次の日、ユウコがとある通りを歩いているとネオエリコのメンバー達が姿を現しました。
「どうやら現れたみたいだぜ?」裏側のユウコが言いました。
「うん。」ユウコが裏側に言いました。
「あなた達は……。」ユウコが言いました。
「アンタにはネオエリコをコケにした代償を支払って貰う。」そう言ってネオエリコのメンバーの一人が魔法の戦士αを召喚しました。
「フン!」魔法の戦士αが言いました。
「チッ。またソイツか……。」裏側のユウコが言いました。
「今回はこれだけじゃない!私達の新たな力を見ると良いわ!」そう言ってそのネオエリコのメンバーは続けて魔法の戦士βを召喚しました。
「フン!」魔法の戦士βが言いました。
「二体目……!?」ユウコが言いました。
「ほう……。」裏側のユウコが言いました。「やっぱり小細工を使ってきやがったか。」
その瞬間、そのネオエリコのメンバーの体が消滅し始めました。
「え……?」ユウコが言いました。
「アレ……?」そのネオエリコのメンバーが言いました。「何で……?」
その場にいた他のネオエリコのメンバー達も動揺し始めました。
「ああああああああ……!」そのネオエリコのメンバーはそのまま消滅しました。
「どうやら大した魔力の持ち主じゃなかったみたいだな。」裏側のユウコが言いました。
「どういうこと……?」ユウコが裏側に言いました。
「単純な話さ。魔法を使うには魔力が要る。その魔力が足りない場合は代わりに命を消費することになる。そして命が無くなれば、死ぬ。」裏側のユウコが言いました。
「そんな……。」ユウコが言いました。
その場に残されたネオエリコのメンバー達は混乱の末その場から立ち去っていきました。
近くの建物の屋上から一人の少女がその様子を見ていました。
「あーあ、消えちゃった。」その少女が言いました。「ま、しょうがないか。」
その少女はマジカルテックモバイルを取り出すと、通話アプリを起動しました。
「もしもしー?」その少女が言いました。
「ミルコか。」マジカルテックモバイルからカタストロフの声が聞こえてきました。「どうした?」
「例の魔法のコトなんだけど、そこら辺の一般人には一体の召喚が限界みたいだよ。」ミルコが言いました。
「そうか。三体目の魔法の戦士も完成させたのだが……。ひとまずメンバー全員に注意を促す必要があるな。」カタストロフが言いました。
「それなら私に任せて。」ミルコが言いました。
「ああ。」そう言ってカタストロフは通話を切りました。
「フフ。でも、一度召喚されたマジカル・ウォリアーは主がいなくなってもちゃんと動くみたい。」ミルコが言いました。
「フン。」魔法の戦士αが言いました。
「フン。」魔法の戦士βが言いました。
「連中はいなくなったが、どうやらあの二体はやる気みたいだぜ?」裏側のユウコが言いました。
「うん。」ユウコが言いました。
「変身!」ユウコが変身しました。
「まずはパンチで……。」そう言ってユウコが魔法の戦士αに殴りかかりました。
「フン!」魔法の戦士αは片腕でユウコの攻撃を防ぎました。
「え……?」ユウコが言いました。
「ハアッ!」魔法の戦士βがユウコを蹴りました。
「ウアッ……!」ユウコは転倒して地面の上を転がりました。
「うう……。」ユウコが体を起こして言いました。
「フン。」魔法の戦士αと魔法の戦士βが言いました。
「今日のところはこれくらいにしとけ。後はオレに任せな。」裏側のユウコが言いました。
「うん。分かった。」ユウコはそう言って立ち上がりました。
ユウコの人格が入れ替わりました。
「バトルの時間だ。」ユウコが言いました。
ユウコはマジカルパズルを召喚すると、それを短剣へと変形させて構えました。
「相手は二人だよ?どうやって戦うの?」裏側のユウコが言いました。
「ああ。確かに数的には不利だよな。でも、考えならあるぜ。」ユウコが言いました。
「ハアアッ!」魔法の戦士αがユウコに殴りかかりました。
「お前じゃねえ!すっこんでろ!」ユウコはそう言って向かってきた魔法の戦士αを蹴って怯ませた後、マジカルパズルで切りつけました。
「ウアアッ……!」魔法の戦士αが地面に倒れ込みました。
「行くぜ!」そう言ってユウコは魔法の戦士βに向かって走り出しました。
「ン……!」魔法の戦士βが言いました。
「マジカルマーダー!」ユウコがマジカルパズルで魔法の戦士βを切りつけました。
「ウアアアアアアアッ……!」魔法の戦士βが爆発しました。
「スゴい!一発で倒した!」裏側のユウコが言いました。
「やっぱりな!」ユウコが言いました。
「どういうコト……?」裏側のユウコが言いました。
「アイツらの持つ魔力は召喚する時に消費された魔力に比例すると見た。だから後から召喚された方は大した魔力を持っていなかったってワケだ。」ユウコが言いました。
「そっか。限界まで魔力を消費していたとはいえ、それでも十分じゃ無かったんだ。」裏側のユウコが言いました。
「お前も魔法のことが分かってきたじゃねえか。」ユウコが言いました。
「ウ……。ウウ……。」魔法の戦士αがよろめきながら立ち上がりました。
「これで一対一だな。」ユウコが言いました。
「このままやってやるぜ!」そう言ってユウコは魔法の戦士αに向かって走り出しました。
「テヤアアアアアアッ!」ユウコはマジカルパズルで魔法の戦士αを何度も連続で切りつけました。
「ウアアアアアアアッ……!」魔法の戦士αが怯んで後退しました。
「このまま決めてやる!」そう言ってユウコはマジカルパズルを地面に放り投げるとマジカルムーブを発動しました。
「ウウ……!」魔法の戦士αが体勢を立て直そうとしました。
「行くぜ。ハアッ!」ユウコが飛び上がりました。
「マジカルクラッシュ!」ユウコが跳び蹴りを放って魔法の戦士αを押し潰しました。
「ウアアアアアアアッ……!」魔法の戦士αが爆発しました。
「このバトル、オレの勝ちだな。」ユウコが言いました。
「あの子、やるかも。」ミルコが言いました。「フフ。どうしよっかな?」
「さっきの子……。」裏側のユウコが言いました。
「うん?」ユウコが言いました。
「やっぱりホントに死んじゃったの?」裏側のユウコが言いました。
「ああ。」ユウコが言いました。
「そっか。」裏側のユウコが言いました。
「気になるみたいだな。」ユウコが言いました。
「そりゃあ……!」裏側のユウコが言いました。「うん。」
「気休めに聞こえるかも知れないが、一応言ってやる。」ユウコが言いました。「気にする必要なんて無い。」
「実際に気休めで言ってるよね?」裏側のユウコが言いました。
「人間なんてどうせいつかは死ぬ。それをいちいち気にするだけムダなんだよ。それにもっと言ってしまえばこの世界、人間が人間を殺すなんてこともザラだ。現にアイツもオレ達を殺しても構わないと思ってただろうしな。」ユウコが言いました。
「それは……。」裏側のユウコが言いました。
「きっとオレ達に人の死を嘆いている余裕なんて無いぜ。」ユウコが言いました。「人間なんていう存在である以上、どんなに体裁を取り繕ったところで醜く生きることしか出来ないのさ。」
おわり