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魔法少女X #1

 ミチコは以前から日常の生活に退屈していました。そしてこの頃からミチコは非日常的な何かを求めて外を出歩くようになっていました。

 都市伝説に敏感なミチコではありましたが、実際のところミチコはその手の口承を信じてはいませんでしたので、その探索はミチコにとっては単なる現実逃避に過ぎないものでした。


 ミチコはその日もこれと言った期待をせずにとある路地を彷徨い歩いていました。

 その途中、ミチコは大きな宝石を担いだネズミのような存在を目にしました。

「ん……?」ミチコは足を止めてその存在を観察しました。

「ネズミが宝石を……?」ミチコが呟きました。「フッ。少しは楽しめるかしら?」

 その存在もミチコに気付いて足を止めました。

「どうやら見られてしまったようですわね。」その存在が言いました。

「な……!?」ミチコがその存在が言葉を発したことに驚きの様子を見せました。

「随分と驚いているようですわね。」その存在が言いました。「でも安心なさって。すぐに全てを忘れさせてあげますわ。」

「あなた……!」ミチコが言いました。

「ん……?」その存在が何かに気付いた様子で言いました。

「何……?」ミチコが言いました。

「あなた……魔力を持っているわね。」その存在が言いました。

「魔力……?」ミチコが言いました。

「あなた、私と取引するつもりは無くって?」その存在が言いました。

「取引……?」ミチコが言いました。

「私はマーシャ、妖精ですわ。」その存在が言いました。

「マーシャ……。」ミチコが言いました。「妖精……?」

「ええ。」マーシャが言いました。

「聞いたことがあるけど、この世界には魔法の力を持った妖精が存在するって……。」ミチコが言いました。

「詳しいんですわね。」マーシャが言いました。

「でもまさか……本当に……?」ミチコが言いました。

「この私が嘘をついているとでも……?」マーシャが言いました。「この私が妖精じゃ無いのなら、一体何者なのかしら?喋るネズミ?そっちの方がナンセンスですわ。」

「確かに……そうよね……。」ミチコが言いました。「最初は宝石泥棒のネズミだと思ったけど、そもそもその発想もおかしかったわよね。」

「そうですわね。」マーシャが言いました。「正しくは、宝石泥棒の妖精ということになるかしらね。」

「宝石泥棒……。」ミチコが言いました。

「私、美しい物に目が無いんですの。」マーシャが手にする宝石に頬擦りしながら言いました。

「それで、泥棒を……?」ミチコが言いました。

「そうですのよ。」マーシャが言いました。「魔法を使って完全犯罪を成し遂げていますの。」

「随分とあくどいのね。」ミチコが言いました。

「言ってくれますわね。」マーシャが言いました。

「で、取引って……?」ミチコが言いました。

「話を聞いて下さるのかしら?」マーシャが言いました。

「まあ、退屈はし無さそうだしね。」ミチコが言いました。「て言っても、私に出来ることなんて大したこと無さそうだけど……。」

「いいえ。それは違いますわ。」マーシャが言いました。「あなたには物凄い魔力があるんですもの。」

「そんなこと言われても、私に魔法は使えないし、信じられないわ。」ミチコが言いました。

「私と手を組めば、あなたが魔法が使えるようにして差し上げても良くってよ?」マーシャが言いました。

「そんなことが……?」ミチコが言いました。「ひょっとして、ウワサで聞いたことある魔法のカードを持ってるの?」

「魔法のカード……?そんなものは持っていませんわ。」マーシャが言いました。

「なんだ。魔法のカードがあれば魔法使いになれるってウワサがあるんだけど……。」ミチコが言いました。

「そんな物よりももっと良い物がありましてよ。」そう言ってマーシャがマジカルチェンジャーを差し出しました。

「これは……?」ミチコが言いました。

「マジカルチェンジャー、魔法使いに変身する為のアイテムですわ。」マーシャが言いました。「これを左腕に装着なさって。」

 ミチコはマジカルチェンジャーを受け取ると、マーシャの言われるままに左腕に装着しました。

「これであなたも魔法使い、いえ、魔法少女になれますわよ。」マーシャが言いました。

「私が……魔法少女に……?」ミチコが言いました。

「でもその代わり、その力を私のコレクションの為に使って頂きますわ。」マーシャが言いました。

「要するに、私があなたの泥棒の手伝いをしなくちゃならないワケ……?」ミチコが言いました。

「イヤなら良いんですのよ。でもその場合はマジカルチェンジャーを返して頂きますし、私の魔法であなたの記憶も消させて頂きますわ。」マーシャが言いました。「あなたは私と会ったことを忘れて普段の生活に戻るんですの。」

「あなたの犯罪仲間になるのと、普通の暮らしにを送るのと、どっちがトクか選べって話ね。」ミチコが言いました。

「モチロン私のパートナーになってもそれなりの生活を営めるハズですわよ?」マーシャが言いました。「少なくとも、衣食住には困らないと思いますわ。」

「あなたのパートナーになったらきっと後悔するんでしょうね。犯罪者として過酷な逃亡生活を強いられた挙句に捕まって処刑される。」ミチコが言いました。「でも、愚かな私には平凡な幸せに満足するという選択は出来なさそう。」

「と言うことは……?」マーシャが言いました。

「あなたの誘いに乗るわ。」ミチコが言いました。

「それは嬉しいですわ。」マーシャが言いました。

「精々私を後悔させることね。」ミチコが言いました。「尤も、私があなたを後悔させるかも知れないけど……。」

「パートナーに裏切られるリスクなんて百も承知ですわ。それでも、私一人での活動には限界がありますの。」マーシャが言いました。

「それで、手始めに何をすれば良いワケ?」ミチコが言いました。

「まずは腕試しですわ。」マーシャが言いました。

「腕試し……?」ミチコが言いました。

「あなたの実力を確かめるべく、まずはちょっとした盗みを働いて頂きますわ。」マーシャが言いました。

「いたずらに世間を騒がせ過ぎると、本命の計画がやりにくくなるんじゃないの?」ミチコが言いました。

「御心配には及びませんわ。」マーシャが言いました。「どんなに厳重な警備が敷かれようと、狙った獲物は必ず手に入れる。それが私のポリシーですの。」

「あなたがそう言うなら私は別に構わないわ。」ミチコが言いました。「世間に新たな魔法少女の存在を知らしめてやりましょう。」

「それじゃあ早速この町にある郵便局の支店を襲撃して現金を手に入れてみて下さるかしら?」マーシャが言いました。

「え……?」ミチコが言いました。

「魔法少女に変身して魔法の力で現金を盗み出す、それだけですわ。」マーシャが言いました。「簡単なことでしょう?」

「確かに……魔法が使えるなら簡単よね。」ミチコが言いました。

「それじゃあ早速変身してご覧になって。」マーシャが言いました。

「分かったわ。」そう言ってミチコがマジカルチェンジャーを構えました。

「変身!」ミチコが変身しました。

「素晴らしいですわ!」マーシャが言いました。

「どうやら変身は上手く行ったようね。」ミチコが言いました。

「それじゃあついて来て下さる?」マーシャが言いました。

 ミチコはマーシャについて路地を移動しました。そして一台の魔法のバイクが停められている場所まで案内されました。

「これは……?」ミチコがそのバイクを指して言いました。

「私が盗んだバイクを改造して作った魔法のバイクですわ。」マーシャが言いました。

「魔法のバイク……?」ミチコが言いました。

「あなたの魔力で自由に動かすことが出来ますのよ。」マーシャが言いました。「いずれこんな日が来ることに期待して用意していましたの。」

「それは……随分と準備が良いわね。」ミチコが言いました。

「ベースとなるバイクを盗み出すのに随分苦労したんですのよ。」マーシャが言いました。

「そうなのね。」ミチコが言いました。

「そうですのよ。」マーシャが言いました。「本当はブラバを使いたかったんですけど……。」

「ブラバ……?」ミチコが言いました。

「気になさらなくて結構ですわ。」マーシャが言いました。

「分かったわ。」ミチコが言いました。

「それでは健闘をお祈りしますわ。」マーシャが言いました。

「ええ。とりあえずやってみるわ。」ミチコが言いました。

 ミチコはその魔法のバイクに乗ると、その町の郵便局の支店に向かいました。


 ミチコはその魔法のバイクでその郵便局に乗りつけると、中へ入って魔法の拳銃“マジカルピストル”を召喚し、監視カメラを撃って破壊しました。

 その様子を見て局員の一人が即座に警報を鳴らしました。

「職務に忠実なのは結構だけど、そんなことをしたら自分がどうなるのかまでは考えが回らなかったようね。」そう言ってミチコはその局員の顔にマジカルピストルの銃口を向けました。

 その局員が怯えた様子で手を上げました。

「命を捨てる覚悟で仕事をしてくれる職員がいてこの郵便局も幸せよね。」ミチコが言いました。「死ぬ前に何か言い残すことはある?」

 その局員は目を瞑って黙っていました。

「フフッ。冗談よ。」ミチコがマジカルピストルを下ろして言いました。「そんな警報で私を止めることは出来ないわ。そのことを教えてあげる。」

 ミチコは再びマジカルピストルを構えると、それを撃って設置されている機材を次々に破壊していきました。そしてミチコはそのまま現金を奪って外へと出ました。

 ミチコが外へ出ると同時に数台のパトカーが近づいてきました。

「早かったわね。」ミチコが言いました。

 ミチコはマジカルピストルで近づいてくるパトカーのタイヤを撃っていきました。タイヤを撃ち抜かれたパトカーは次々と停止していきました。

 全てのパトカーを止めたミチコは、そのままその魔法のバイクに乗って現場を後にしました。停止したパトカーから警官が降りて拳銃を撃ちましたが、その弾丸はミチコには当たりませんでした。


 ミチコはとある路地でマーシャと落ち合いました。

「どうやら上手く行ったようですわね。」マーシャが言いました。

「とりあえず、やってみたわ。」ミチコが言いました。

「これなら今後も上手くやって行けそうですわ。」マーシャが言いました。

「それで、このお金はどうするワケ?」ミチコが言いました。

「私が魔法で資金洗浄して差し上げますわ。」マーシャが言いました。

「それで、あなたの好きな宝石を買えば良いの?」ミチコが言いました。

「いえ。これはあなたの取り分ですわ。」マーシャが言いました。「あなたのこれからの活動資金にして下さって構いませんわ。」

「はあ……。」ミチコが言いました。

「まずは適当な部屋を借りてみると良いですわ。」マーシャが言いました。「賃貸契約の手続きも私が魔法でサポート致しますわ。」

「なるほど。」ミチコが言いました。

「それから、もしもあなたがお望みなら、今までのあなたと携わっていた人間達からあなたに関する記憶を消して差し上げても良くってよ?」マーシャが言いました。

「確かに、そうした方が良いのかも知れないわね。」ミチコが言いました。「是非お願いするわ。」

「分かりましたわ。」マーシャが言いました。

「ところで、魔法で今回の事件をうやむやにすることは出来ないの?」ミチコが言いました。

「そこまでのことは出来ませんわ。」マーシャが言いました。

「そういうものなのね。」ミチコが言いました。

「私の魔法も万能ではありませんけど、パートナーとして出来る限りのサポートはさせて頂きますわ。」マーシャが言いました。

「助かるわ。」ミチコが言いました。

「部屋を借りることが出来たら、しばらくはそこで待っていて下さいな。計画の準備が出来次第声を掛けさせて頂きますわ。」マーシャが言いました。

「分かったわ。」ミチコが言いました。


 とある建物の一室で二人の魔法少女がモニタを見ていました。そのモニタにはミチコがその郵便局に入ってから監視カメラを破壊するまでの映像が映し出されていました。

「新たな魔法少女か……。」魔法少女の一人が呟きました。

「どうやらそのようだね。」もう一人の魔法少女が言いました。「これは面白いことになって来たよ。」


 おわり

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