魔法少女イクコ #1
およそ二年前、闇の力によってその町の東側にゾンビが大量発生しました。
イクコは次から次へと襲い来るゾンビ達をかわしながら生き延びる方法を探っていました。
イクコはとある家に逃げ込みました。
イクコはひとまずその家の中を調べ始めました。
「誰……?」一人の少女が姿を現し、イクコに言いました。
「あっ……!」イクコが言いました。
その少女は怯えた様子でイクコを見つめていました。
「大丈夫……人間よ。」イクコが言いました。
その少女が黙ったまま頷きました。
「私はイクコ。あなたは……?」イクコが言いました。
「ユイ。」その少女が言いました。
「ユイ……。良い名前ね。」イクコが言いました。「ここ、あなたのお家……?」
「うん。」ユイが言いました。
「お父さんとお母さんは……?」イクコが言いました。
「お母さんは……死んじゃった。」ユイが言いました。「お父さんに……。」
「あっ……。」イクコが言いました。
「お父さんは……上で寝てるよ。」ユイが言いました。
「そう……。」イクコが言いました。「大丈夫よ、きっと。」
「うん。」ユイが言いました。
「ここで待ってて、少し様子を見てくるから。」イクコが言いました。
「分かった。」ユイが言いました。
イクコは二階へ上がり、ユイの父の部屋に入りました。ユイの父は体から血を流しながらベッドで苦しそうに呻き声を上げていました。
「あっ……!」イクコはユイの父の様子を見て言いました。
「誰だ?」ユイの父が言いました。
「私はイクコ、人間です。」イクコが言いました。
「そうか……。」ユイの父が言いました。
「大丈夫ですか?」イクコが言いました。
「俺のことは気にするな。それよりも……ユイを……頼む。」ユイの父が言いました。
「ええ……。」イクコが言いました。
「うう……!」ユイの父が動かなくなりました。
「そんな……。」イクコが言いました。
イクコは部屋を出てユイの元へ戻ろうとしましたが、その時足元に一枚のカードが落ちていることに気が付きました。
「これは……?」そう言ってイクコはそのカードを拾いました。
そのカードは“ポイズン”のカードでした。イクコはそのカードの持つ力を感じ取りましたが、ひとまずそれをしまってユイの元へと戻りました。
「お姉ちゃん。」ユイが言いました。
「ユイ……。」イクコが言いました。
「大丈夫だった?」ユイが言いました。
「ええ……。心配要らないわ。」イクコが言いました。「私がついてる。」
「お姉ちゃん……。」ユイが言いました。
「大丈夫よ。」イクコが言いました。
「お姉ちゃん、これ……。」そう言ってユイがマジカルチェンジャーを差し出しました。そのマジカルチェンジャーはカード挿入スロットが付いた特別なものでした。
「これは……?」マジカルチェンジャーを受け取ってイクコが言いました。
「分からない。」ユイが言いました。
「そう……。」そう言ってイクコはそのマジカルチェンジャーを左腕に装着しました。
そこへ二階からユイの父が降りてきました。
「お父さん……?」ユイが言いました。
「えっ……?」イクコが言いました。
「ウアアア……!」ユイの父はゾンビ化していました。
「キャアッ……!」ユイが言いました。
「そんな……!」イクコが言いました。
ユイの父がユイににじり寄りました。
「やめて……お父さん!」ユイが言いました。
ユイの父はユイの言葉に耳を貸さずにユイににじり寄っていきました。
イクコは“ポイズン”のカードを取り出し、左腕のマジカルチェンジャーを見つめました。そしてイクコはマジカルチェンジャーにそのカードを挿入しました。するとマジカルチェンジャーから「Poison」と電子音声が発せられました。
「変身!」イクコがそう言うと、マジカルチェンジャーから「Change」と電子音声が発せられ、イクコは変身しました。
「お姉ちゃん……!」ユイが言いました。
ユイの父が足を止め、イクコの方を向きました。
イクコは魔法の弓“マジカルボウ”を召喚すると、ユイの父の向けてそれを構えました。
「動かないで!」イクコが言いました。
「ウアアア……!」ユイの父はイクコの言葉を無視して、イクコににじり寄りました。
「くっ……!」イクコは魔法の矢を召喚してマジカルボウで放ちました。
イクコの放った魔法の矢がユイの父に直撃しました。ユイの父は魔法の矢に含まれていた魔法の毒を受けて溶けるように跡形も無く消滅しました。
「あっ……。」ユイが言いました。
イクコは呆然とするユイに手を差し伸べました。ユイがその手を掴むと、イクコはそのままユイと一緒に家の外へと出ました。
家の外には大量のゾンビ達がいました。
「どうするの、お姉ちゃん?」ユイが言いました。
「大丈夫、私が何とかするわ。」イクコが言いました。
イクコは行く手を阻むゾンビ達を次々と倒しながらユイを連れて安全な場所を目指しました。
一方、とある建物の屋上ではフードを被った人物がイクコとユイの様子を見ていました。
町の東側から脱出したイクコとユイはひとまず今後について考えることにしました。
「どこか住む場所を見つけなくちゃ……。」イクコが言いました。
「お姉ちゃんの家は……?」ユイが言いました。
「ゴメンね。私の家もあのバケモノ達に……。」イクコが言いました。
「そっか……。」ユイが言いました。
「でも大丈夫、何とかするわ。」イクコが言いました。
「うん。」ユイが言いました。
イクコはひとまず警察に助けを求めるべく交番へ向かおうとしました。するとそこへ一体のネコのような容姿を持つ妖精が姿を現しました。
「魔法少女か……。」その妖精が言いました。
「えっ……?」イクコが言いました。
「お姉ちゃん……。」ユイが言いました。「このネコ、喋ってるよ。」
「何なの……?」イクコが言いました。
「妖精だよ、見ての通りさ。」その妖精が言いました。
「妖精……?」イクコが言いました。
「魔法少女のクセに妖精を知らないのか?」その妖精が言いました。「そのマジカルチェンジャーはどこで手に入れたんだ?」
「それは……。」イクコが言いました。「拾ったのよ。」
「拾った?」その妖精が言いました。
「ええ。そうよ。」イクコが言いました。
「いずれにしても、訳ありのようだな。」その妖精が言いました。「名前は……?」
「イクコ。私はイクコよ。」イクコが言いました。「そしてこっちがモエ。」
「うん。」モエが言いました。
「私はカーティス。さっきも言ったように、妖精だ。」その妖精が言いました。
「カーティス……。」イクコが言いました。
「大した力も無い妖精だが、力が無いなりに人助けを行っているつもりだ。」カーティスが言いました。
「そう……。」イクコが言いました。
「闇の力によって多くの人間達が追い詰められている。君達もそうなんだろう?」カーティスが言いました。
「分かるの?」イクコが言いました。
「分かるさ。私は魔力を感じるのは苦手だが、困っている感情を見抜くのは不思議と得意なんだ。」カーティスが言いました。
「私達のことも……助けて貰える?」イクコが言いました。
「お姉ちゃん……?」ユイが言いました。
「ユイ……。このままだと私達、児童養護施設で暮らすことになるわ。ひょっとするともうあなたを守ってあげられなくなるかもしれない。」イクコが言いました。
「イヤ……!そんなのイヤだよ!」ユイが言いました。
「この妖精に頼めば、状況を変えられるかも知れない。」イクコが言いました。
「うん……。」ユイが言いました。
「やっぱり孤児か……。」カーティスが言いました。
「助けて貰えるの?」イクコが言いました。
「勿論さ。」カーティスが言いました。
「何をしてくれるの?」イクコが言いました。
「魔法で君達が部屋を借りられるようにする。」カーティスが言いました。
「部屋……?」イクコが言いました。
「住む場所が必要なんだろう?」カーティスが言いました。
「ええ。そうね。私達には住む場所が必要だわ。それに食べ物も……。」イクコが言いました。
「残念だが、多くは期待しないで欲しい。私がサポートするのは君達二人の家探しと仕事探し、そして口座開設だけだ。それ以上のことは自力で何とかして貰いたい。」カーティスが言いました。
「それだけでも……十分よ。」イクコが言いました。
「そう言って貰えて嬉しいよ、この条件で満足する人間はいなかったから。」カーティスが言いました。
「そうでしょうね。でも、私には助かるわ。」イクコが言いました。
「本当はマジカルチェンジャーの配布が一番のサポートのハズだったんだが、君は既に持っているみたいだしね。」イクコが言いました。
「マジカルチェンジャー……ね。」イクコがマジカルチェンジャーを見ながら言いました。
「闇の力から生き延びた人間なら、きっと使いこなせるハズさ。生き残るにはそれを使うしか無い。」カーティスが言いました。
「ええ。」イクコが言いました。
イクコはカーティスの支援を受け、身分を偽って銀行口座を開設し、部屋を借り、そして職を見つけました。
イクコとユイは部屋での生活を始めました。
その部屋はとある建物の地下にあるとても狭い部屋でしたが、イクコにとってはそれで十分でした。
「私に出来ることはこれまでだ。」最後に様子を見に来たカーティスが言いました。
「ええ。ありがとう。」イクコが言いました。
「どういたしまして。」カーティスが言いました。
「生き延びるんだ。」そう言ってカーティスは部屋を出て行きました。
「お姉ちゃん……。」ユイが言いました。
「大丈夫よ。あなたのことは私が守るわ。」イクコが言いました。
「うん……。」ユイが言いました。
「私がユイのお母さんになる。」イクコが言いました。
「ありがとう、お姉ちゃん。」ユイが言いました。
「そんなに良い暮らしはさせてあげられないかも知れないけど……。」イクコが言いました。
「我慢する。だから、ずっと一緒に居てくれる?」ユイが言いました。
「ええ……。たまに一緒に居られない時間もあるけれど、それでも私はユイのことを見捨てないから……。」イクコが言いました。
「うん……。」ユイが言いました。
「私が仕事に出ている間、ユイは自由に過ごして良いけど、危ないことは絶対にしちゃダメだからね。」イクコが言いました。
「うん……。」ユイが言いました。
「離れていても……心は一緒よ。」イクコが言いました。
「うん!」ユイが言いました。
おわり