魔法少女エリコ #1
およそ三年前、マルコはその町の南側で平凡な暮らしを営んでいました。
しかしその日、マルコは闇の力によって近所の人々が次々とゾンビ化する事態が発生しました。
マルコは自宅で祖父と会話をしていましたが、そこでゾンビ化した父が姿を現し、マルコに襲い掛かりました。そこへ祖父が割って入り、マルコの代わりに父の攻撃を受けました。
「おじいちゃん……!」マルコが叫びました。
「ここにいればお前は殺されてしまう!さあマルコ!逃げるんじゃ!」祖父が言いました。
「そんな……!おじいちゃんを置いていくなんて……!そんなのイヤだ!」マルコが言いました。
「早く行くんじゃ!」祖父が言いました。「さあ……行くんじゃ……!」
マルコは祖父に言われた通り走って家を出ました。
通りは既にゾンビ達で溢れていました。
マルコはゾンビ達の攻撃をかわしながら走り続けました。
ゾンビ達から逃げている途中でマルコは誤って転倒してしまいました。
転倒したマルコを瞬く間にゾンビ達が取り囲みました。
「もう……ダメ……!」マルコが言いました。
そこへ一人の魔法少女が姿を現しました。
「マジカルウォール!」そう言ってその魔法少女は魔法の笛“マジカルオリファント”を吹き鳴らし、魔法の壁を生成してゾンビ達の攻撃を封じました。
「こっちへ……!」その魔法少女がそう言ってマルコに手を差し伸べました。
マルコはその魔法少女の手を取り、そのままその魔法少女に連れられて行きました。
マルコとその魔法少女はセーフハウスへと辿り着きました。
「ここなら安全よ。」その魔法少女が言いました。
「あなたは……?」マルコが言いました。
「私はエリコ、魔法少女よ。」その魔法少女が言いました。
「エリコ……。」マルコが言いました。
「そして私はウール。」奥から小さなヒツジのような容姿を持つ妖精が姿を現し言いました。「エリコのパートナーです。」
「ヒツジ……?」マルコが言いました。
「妖精よ。」エリコが言いました。
「妖精……。」マルコが言いました。
「エリコ、まだ戦い続けるつもりですか?これ以上は危険です。死んでしまうかも知れませんよ?」ウールが言いました。
「私の助けを必要としている人がきっとまだ大勢いるハズ……!自分の命を惜しんでその人達を見殺しにするなんて私には出来ない!」エリコが言いました。
「エリコ……。」ウールが言いました。
「その子をお願い、ウール。」そう言ってエリコは外に出ました。
「エリコ……!」マルコが言いました。
「とりあえず、奥へ……。」ウールが言いました。
マルコはウールに連れられてセーフルームの奥へと移動しました。そこにはもう一人少女がいました。
「あなたは……?」マルコがその少女に言いました。
「私は……シュンコ。」その少女が言いました。「あなたは……?」
「マルコ。」マルコが言いました。
「マルコ……本名……?」シュンコが言いました。
「本名だけど……。」マルコが言いました。
「そう……。」シュンコが言いました。
「あなたもエリコと同じ……魔法少女……?」マルコが言いました。
「そんな風に見える?」シュンコが言いました。
「いや……。」マルコが言いました。
「私も……あなたと同じよ。」シュンコが言いました。
「どうしてこんなことに……?」マルコが言いました。
「闇の力のせいです。」ウールが言いました。「闇の力で魔力をあまり持たない人々が次々とゾンビになってしまっているのです。」
「闇の力……。」マルコが言いました。
「私達はたまたま魔力が高かったから、ゾンビにならなくて済んだみたい。」シュンコが言いました。
「魔力……。それがあるなら私達も魔法少女に……?」マルコが言いました。
「なりたいですか?」ウールが言いました。
「いや……。」マルコが言いました。
「今はまだ……。」シュンコが言いました。
しばらくして、エリコがもう一人少女を連れて戻って来ました。
「エリコ……!」マルコが言いました。
しかし次の瞬間、ゾンビ達がセーフルームに乗り込んできました。
「な……!」シュンコが言いました。
エリコが連れていた少女がゾンビに襲われ、倒されてしまいました。
「そんな……!」エリコが言いました。
「エリコ……!」ウールが言いました。
「このままでは……!」シュンコが言いました。
ゾンビ達が次から次へとセーフルームに入って来ました。
「そうは行かない!」エリコが言いました。
「ダメです!」ウールが言いました。
「何を……するつもり……!?」マルコが言いました。
「今こそ私の特殊能力を発動するわ!」エリコが言いました。
「いけません!そんなことをすれば……!」ウールが言いました。
「特殊能力……?」シュンコが言いました。
「エリコには自身の魔力を生贄とすることで敵の力を無力化する力があるんです。」ウールが言いました。
「えっ……?」マルコが言いました。
「特殊能力発動!」エリコが言いました。
その瞬間、その場にいたゾンビ達が人間の死体になりました。
「ゾンビが……!」マルコが言いました。
「凄い。」シュンコが言いました。
エリコが地面に膝を突きました。
「エリコ……!」マルコとシュンコとウールがエリコに駆け寄りました。
「しっかりして下さい、エリコ!」ウールが言いました。
「私はもうダメ……!」エリコが言いました。
「ああ……!そんな……!」マルコが言いました。「ウソだ!」
「くっ……!」シュンコが言いました。
「でも……あなた達は……生きるのよ!」そう言い残してエリコは消滅しました。
「エリコ……!」マルコが言いました。
マルコとシュンコとウールはしばらく黙っていました。
「ウール……。」マルコが言いました。
「はい。」ウールが言いました。
「私を……魔法少女にして……。」マルコが言いました。
「良いですけど……。」ウールが言いました。「覚悟は出来ているようですね。」
「ええ。」マルコが言いました。
「私も……!」シュンコが言いました。
「シュンコ……?」マルコが言いました。
「マルコ、あなたが立ち上がると言うのなら、私も共に立ち上がるわ。」シュンコが言いました。
「シュンコ……。ええ。私達で立ち上がって、共に世界を救おう。もっとたくさんの仲間を集めて……そしてきっと……!」マルコが言いました。
「チームを組むのね?」シュンコが言いました。
「ええ!」マルコが言いました。
「チームの名前は……?」シュンコが言いました。
「エリコ!」マルコが言いました。
その後、マルコとシュンコとウールはセーフルームで事態の収束を待ちました。
事態が収束した後、マルコとシュンコとウールはセーフルームで改めて話し合いました。
「アレだけの事態が起きたというのに、報道が一切無いのはどういうこと!?」マルコがスマートフォンを片手に言いました。
「情報操作ね。」シュンコが言いました。
「政府の……?」マルコが言いました。
「それしか考えられないわ。」シュンコが言いました。
「どういうこと!?政府は私達を救うどころか、私達の存在を無かったことにしたって言うの!?」マルコが言いました。
「おそらく……。」シュンコが言いました。
「そんな……!」マルコが言いました。
「どうする?」シュンコが言いました。
「それでもやることは変わらない。この場所を拠点に体勢を整え、いつか世界を救うのよ。」マルコが言いました。
「そうね。」シュンコが言いました。
「物資をかき集めるわよ。もし生存者がいれば、救出して仲間にするの。」マルコが言いました。
「ええ。」シュンコが言いました。
「マルコ……これを……。」そう言ってウールがマジカルチェンジャーをマルコに差し出しました。
「これは……?」マルコがマジカルチェンジャーを受け取って言いました。
「マジカルチェンジャー、これで魔法少女に変身出来ます。」ウールが言いました。
「ありがとう、ウール。」マルコが言いました。
「シュンコはもう少し待っていて下さい、マジカルチェンジャーを作るのには時間が掛かりますので。」ウールが言いました。
「ええ。」シュンコが言いました。
そしてマルコとシュンコは廃墟から物資を集めてセーフルームでの生活を始めました。それと同時に生存者も探していましたが、その地で生活を送る野宿者達は皆気力を失っており、二人の呼びかけに応える人物はいませんでした。
それから半年後、マルコとシュンコとウールが順調に生活を送っていた矢先、その地にアンデッド達が溢れ出しました。
マルコとシュンコはセーフハウスの外に出て、野宿者達が次々にアンデッドへと変異していく様子を見ていました。
「これは……。」シュンコが言いました。
「みんなバケモノに……!」マルコが言いました。
「前よりも強力な闇の力によるものか……?」シュンコが言いました。
「彼らもちゃんと備えていればこんなことにはならなかったハズ……!」マルコが言いました。
「ええ。」シュンコが言いました。
「でも、私達は違う!」マルコが言いました。「戦って、生き延びるのよ!」
そこへウールがやって来ました。
「シュンコ、いよいよあなたにこれを渡す時が来ました。」そう言ってウールがマジカルチェンジャーを差し出しました。
「ありがとう、ウール。」そう言ってシュンコがマジカルチェンジャーを受け取りました。
「行くわよ、シュンコ!」マルコが言いました。「邪悪な力に抗うのよ!」
「ええ!」シュンコが言いました。
「変身!」マルコとシュンコが変身しました。
マルコはマジカルフラッグを召喚してそれを構え、シュンコは背中に魔法の翼を生成しました。
「反旗を……!」マルコが言いました。
「反逆の翼……!」同時にシュンコが言いました。
「翻せ!」そう言ってマルコとシュンコがアンデッド達に戦いを挑みました。
「エリコの為に……!」そう言ってマルコはマジカルソルジャー達を従えながらマジカルフラッグを掲げました。
この戦いにおいてマルコとシュンコの活躍は数体のアンデッドを倒すのみに止まりましたが、それで二人の意志は決定的なものとなったのでした。
おわり