魔法少女カエデ #3
その日、カエデはオフィスでケイトリンと話していました。
「どうやらクイーンが人造魔法少女を作って警察庁に派遣したようですね。」ケイトリンが言いました。
「人造魔法少女……妖精が……?」カエデが言いました。
「クイーンの能力は他の妖精とは一線を画しています。魔法で人造魔法少女を作り出すことも出来る筈ですね。」ケイトリンが言いました。
「そうなんだ。」カエデが言いました。
「尤もクイーンが進んで人工的な生命を作り出そうとするとは考えにくいですので、おそらくはポリーの懇願により人造魔法少女が作られることになったのでしょう。」ケイトリンが言いました。
「警察庁も大変なんだろうね。」カエデが言いました。
「キャプターの事件が減る兆しが見えませんからね。」ケイトリンが言いました。
「ケイトリンはクイーンに懇願したりはしないの?」カエデが言いました。
「必要ありません。」ケイトリンが言いました。
「そうなの?」カエデが言いました。
「私にはあなたというとても信頼出来るパートナーがいますから、クイーンの支援は必要ありません。」ケイトリンが言いました。
「私のことをそんなに信頼してくれてるの?」カエデが言いました。
「はい。カエデなら私のパートナーとしてあらゆる問題に対処出来ると信じています。」ケイトリンが言いました。
「もしその言葉がホントなら嬉しいけどね。」カエデが言いました。
「本当ですよ。」ケイトリンが言いました。
「どうも言い方がウソっぽいんだよな。」カエデが言いました。
「信頼出来るパートナーである証として、私のことを撫でても良いですよ。」ケイトリンが言いました。
「撫でると何か良いことがあるの?」カエデが言いました。
「特には……。私がネコみたいな見た目をしてるから、皆撫でたいと思ってるんじゃ無いかと思って言ってみただけです。」ケイトリンが言いました。
「いや……。でも、せっかくだし……。」カエデが言いました。
ケイトリンが黙って体を丸めました。そこでカエデはケイトリンの背中を撫でてみました。
「もう少し嬉しそうにしてくれると撫で甲斐も出てくるんだろうけどな……。」カエデが撫でながら言いました。
ケイトリンは黙って撫でられ続けていました。
「人造魔法少女……か……。」カエデが言いました。
その頃、アンナはクイーンの庭園でクイーンと話していました。
「警察庁では上手くやっていけてますか?」クイーンが言いました。
「はい。」アンナが言いました。
「ウソでしょう?」クイーンが言いました。
「いいえ。」アンナが言いました。
「ヨウコと協力してキャプターの捜査を行っているようですね。」クイーンが言いました。
「はい。」アンナが言いました。
「ヨウコのことをどう思いますか?」クイーンが言いました。
「優秀な魔法少女だと思います。レベルは6ですが、攻撃力は最上級魔法少女のそれに匹敵しており、隠された能力も非常に強力です。」アンナが言いました。
「性格については……?」クイーンが言いました。
「よく分かりません。」アンナが言いました。
「第一印象はどうです?」クイーンが言いました。
「良い人です。」アンナが言いました。
「適当に答えていますね?」クイーンが言いました。
「いえ。本心からそう感じたつもりですが、それは私の勘違いなのでしょうか?」アンナが言いました。
「勘違いということも無いとは思いますが、他人を分析した結果が良い人というだけでは些か分析不足と言わざるを得ないでしょうね。」クイーンが言いました。
「すみません。」アンナが言いました。
「質問を変えましょう。」クイーンが言いました。
「分かりました。」アンナが言いました。
「これからヨウコとどのように接していくつもりでいますか?」クイーンが言いました。
「普通に接していくつもりです。」アンナが言いました。
「あなたのいう普通とは……?」クイーンが言いました。
「良好な関係が築けるように常に適切な会話を心掛けていきます。」アンナが言いました。
「その為には、もう少し人間らしさを学んだ方が良いと思いますよ。」クイーンが言いました。
「分かりました。」アンナが言いました。
カエデは長い時間ケイトリンの背中を撫で続けていました。
「ねえ、ケイトリン。」カエデが言いました。
「何です?」ケイトリンが言いました。
「いつまで続けていれば良いの?」カエデが言いました。
「ずっと続けてて良いですよ。」ケイトリンが言いました。
「ずっと……?」カエデが言いました。
「はい。気の済むまで、ずーっと……。」ケイトリンが言いました。
「もう気は済んでるんだけど……。」カエデが言いました。
「じゃあ、止めたらどうです?」ケイトリンが言いました。
「止めて良いの?」カエデが言いました。
「モチロン。止めたい時に止めて良かったんですよ?」ケイトリンが言いました。
「先に言ってよ。」カエデが言いました。
「知らなかったんですか?」ケイトリンが言いました。
「知らなかった。」カエデが言いました。
「意外でしたね。」ケイトリンが言いました。
「そんなに意外……?」カエデが言いました。
「はい。意外でおもろいです。」ケイトリンが言いました。
「そんなおもろい?」カエデが言いました。
「むーっちゃ、おもろいです。」ケイトリンが言いました。
「そっかあ……。」カエデが言いました。
その頃、アンナは警察署に戻ってヨウコと会っていました。
「大変よ!大変なのよ!」ヨウコが言いました。
「何が起きたのですか?」アンナが言いました。
「Xがまた現れたのよー!」ヨウコが言いました。
「Xは魔法庁に身柄を拘束されていた筈です。」アンナが言いました。
「美術館が襲撃を受けたのよ!その美術館の警備を行っていたSSSがXの犯行だって証言しているのよ!」ヨウコが言いました。
「魔法庁が身柄を拘束したXに美術館の襲撃を行わせたということでしょうか?」アンナが言いました。
「きっとXは魔法庁から逃げ出したのよ!そしてまた犯行に手を染めたのよ!」ヨウコが言いました。
「そう簡単に魔法庁から脱走出来るとは思えません。」アンナが言いました。
「そんなことはどうでも良いのよ!とにかくXを追いかけるのよ!」ヨウコが言いました。
「それはいけません。」アンナが言いました。
「はあ……!?」ヨウコが言いました。
「あなたには私と一緒にキャプターを追って貰う必要があります。」アンナが言いました。
「何よ!?アンタ一体私の何なのよ!?」ヨウコが言いました。
「仲間です。」アンナが言いました。
「仲間なら私のやり方に口出さないでよ!」ヨウコが言いました。「私は私のやりたいようにやるのよ!」
「それは……いけません。」アンナが困ったように言いました。
「フン!」ヨウコが言いました。
アンナは少し考えました。
「あなたがキャプターの捜査をしたくない気持ちは分かります。しかし、あなたの仕事はキャプターの捜査です。仕事を放棄してはいけないのではありませんか?」アンナが言いました。
「あなたはバカよ!それに言っとくけど、Xを追うことも私の仕事なのよ!」ヨウコが言いました。
「キャプターの捜査の方が優先度が高いハズです!」アンナが言いました。
「捜査の優先順位は私が決めるのよ!」ヨウコが言いました。
「捜査の優先順位を決めているのはポリーです。あなたの気分で捜査方針を変えることは出来ませんよ?」アンナが言いました。
「なっ……!」ヨウコが言いました。
「あなたがキャプターの捜査を放棄しているとポリーに報告させて頂きます。そうなれば、あなたは魔法少女を辞めることになるでしょう。」アンナが言いました。
その瞬間、ヨウコがアンナの胸倉を掴みました。
「何なのよ!?アンタ私に殺されたいの!?これ以上ゴチャゴチャ言ったら処刑よ!電気ショックの刑なのよ!」ヨウコが言いました。
「それは要するに決闘で決着をつけるということですか?」アンナが言いました。
「フン!」ヨウコはアンナの胸倉から手を放し、その場を去っていきました。
アンナはヨウコを追おうとはせずにその場で考えました。
「こんなハズでは……。」アンナが呟きました。
「キャプターの出現を感知しました。」ケイトリンが言いました。「キャプターが出ましたよ。」
「行くべき?それとも、警察に任せる?」カエデが言いました。
「キャプターを倒したところでまた何も情報が得られなさそうですが、Xが美術館を襲撃したことで警察も混乱していると予想出来ますね。」ケイトリンが言いました。
「その件にはどうやらランが絡んでるみたいだから、なんだか気が咎めるね。」カエデが言いました。
「私はへっちゃらです。」ケイトリンが言いました。
「まあ、ランの気持ちも分かるけど……。」カエデが言いました。
「とりあえず、行ってみますか?」ケイトリンが言いました。
「そうだね。」カエデが言いました。
とある通りでハードキャプターが手にする剣で通行人を切りつけていました。
そこへカエデとケイトリンが姿を現しました。
「いた!」カエデが言いました。
「ん……?」ハードキャプターがカエデの方を見ました。
「あのキャプターは“ハード”のカードを使用しているみたいです。」ケイトリンが言いました。
「何だ貴様ら?」ハードキャプターが言いました。「貴様もキャプターか?」
「変身!」カエデが変身しました。
「魔法少女か……?」ハードキャプターが言いました。
「うん!」カエデが言いました。
「面白い。」そう言ってハードキャプターがカエデに切りかかりました。
カエデはハードキャプターが次々と繰り出す攻撃を全てかわし、ハードキャプターにパンチを当てました。しかし、ハードキャプターはカエデのパンチに怯まずに次の攻撃を繰り出したので、カエデは横に転がってその攻撃をかわしつつハードキャプターから距離を取りました。
「フン!この俺の防御力は最強!俺がダメージを受けることは無い!」ハードキャプターが言いました。
「それはどうかな?」カエデが言いました。
「何……!?」ハードキャプターが言いました。
カエデは右手の拳の上に細長い魔法の刃を生成するとそれを剣のように構えました。
「ハアッ!ハアッ!」カエデが魔法の刃でハードキャプターを二回切りつけました。
「ウッ……!ウアッ……!」ハードキャプターがカエデの攻撃を受けて怯んで後退しました。
「バカな!攻撃力が高過ぎて防御し切れないだと!?」ハードキャプターが体勢を整えながら言いました。
「ハアッ!ハアアッ!」カエデがまたハードキャプターを切りつけました。
「ウアッ……!ウアアアッ……!」ハードキャプターが怯んで転倒し、地面の上を転がりました。
「私の特殊能力は防御を貫通してダメージを与えることが出来る!」カエデが言いました。
「ウウウウッ……!」ハードキャプターは倒れ込んだまま呻き声を上げました。
カエデは拳の上の魔法の刃を消滅させると、マジカルムーブを発動しました。
「グッ……!」ハードキャプターがよろめきながら立ち上がりました。
「マジカルエッジアタック!」カエデが右腕に生成した魔法の刃でハードキャプターを切りつけました。
「ウッ……!ウアアアアアアアッ……!」ハードキャプターが爆発と共に倒れました。
「さてと……。」カエデが言いました。「やっぱり情報は無しか。」
「ご町内の平和を守ることが出来ただけでも良しとしましょう。」ケイトリンが言いました。
「そうだね。」カエデが言いました。
おわり