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魔法少女キララ #1

 キララはどこにでもいそうなごく普通の女の子と見せかけて実は魔法少女でした。キララは学生として生活を送りながら密かに世界の平和を守っていました。


 その日もキララは部屋でいつものように学校へ行く準備をしていました。

「急がないと、遅刻するよ。」部屋の隅にいたキャラットがキララに声を掛けました。


 キャラットはネコとネズミを合わせたような容姿を持つ妖精で、キララのパートナーでした。

 キララは過去にキャラットからマジカルチェンジャーを受け取ったことで魔法少女になっていました。


「分かってるよ。」キララが言いました。

 キララは少し不安になりました。それはキャラットが言ったように学校に遅刻してしまうと思ったからではなく、部屋の壁が薄いせいで寮にクラス他の生徒達にキャラットとの会話を聞かれてしまうのではないかと感じたからでした。

「大丈夫だよ、ビデオチャットにしか聞こえないから。」キャラットが言いました。

「何も言ってないじゃん。」キララが言いました。

「何も言わなくても分かるよ、君が考えていることくらい。」キャラットが言いました。

 キララは努めて気にしない素振りをして準備を進めました。

 準備を終えたキララが部屋を出ようとしました。

「いってらっしゃい、キララ。」キャラットが言いました。

「いってきます。」そう言ってキララは部屋を出ました。


 キララは自分が魔法少女であるという秘密を守るべく交友関係を最低限のものにとどめていました。その為にキララは学校でも積極的に会話をしようとはせず、当然課外活動も一切行ってはいませんでした。

 そんなキララにも一人だけ親友と呼べるような人物がいました。それが幼馴染のヒカリでした。


 昼休みにキララは教室で栄養調整食品を食べていました。

 そこへヒカリが近づいてきました。

「またソレ……?」ヒカリがキララの食べている栄養調整食品を見て言いました。

「そんなの食べてたら、目立ちたくないって思ってても目立っちゃうよ?」ヒカリが続けて言いました。

「別に目立ちたくないなんて思ってないから……。」キララはそう言ってごまかそうとしました。

「キララが目立ちたくないって考えてるのは分かってるから……。」ヒカリが言いました。

「そういうヒカリは何食べてるワケ……?」キララが話題を反らそうとして言いました。

「コレ!」そう言ってヒカリがおにぎりを見せました。

「どんな大層なものが出てくるのかと思いきや、ただのコンビニのおにぎりじゃん。」キララが言いました。

「だってお弁当作るの面倒臭いんだもん。キララは食堂に行きたがらないし……。」ヒカリが言いました。

「一人で行けば良いんじゃない?」キララが言いました。

「そんなあ、キララ冷たいよ。」ヒカリが大袈裟に悲しそうな表情をして言いました。

 キララはそんなヒカリに対し若干の罪悪感を覚えました。しかし、それでも自分の秘密は守らなければならないと考えました。

「で、そろそろ話してくれても良いんじゃない、キララの秘密?」ヒカリが言いました。

「えー……。」キララが言いました。

 キララはこの時、ヒカリに対して自分の秘密を守り通すのは難しいのではないかと思いました。たとえこの日に上手くごまかせたとしても、近い内にその秘密がバレてしまうのではないかという気がしていました。そう考えるとキララは段々と自分が惨めに感じられてきました。

「ゴメン!悪かったよ!」ヒカリが慌てた様子で言いました。

「えっ……?」キララはヒカリが急に謝ったことに対し戸惑って言いました。

「もう聞かないから、そんなに惨めにならないで……。」ヒカリが申し訳なさそうに言いました。

 キララはヒカリが本当に自分のことを心配してくれているのだと感じました。そして、そんなヒカリに対しては自分の秘密を打ち明けるべきだと考え始めました。

「いや、ホントに話さなくて良いからね?」ヒカリが言いました。

「は……?」キララはヒカリが唐突に念を押してきたことにまた困惑して言いました。

「それにしても、キララがそうまでして隠そうとする秘密って何だろう?」ヒカリが独り言のように言いました。

「ひょっとして……実は魔法少女とか……?」ヒカリが言いました。

 キララはぞっとしましたが、何とか冷静にこの場を乗り切ろうと考えました。

「もしかしたらそうかも知れないね。」キララは敢えて否定しないことでその場を上手くごまかせるだろうと考えてそう言いました。

「まあ、もしそうだったらビックリだけどね。」ヒカリが言いました。

 キララは上手くごまかすことが出来たと思い安心しました。

「それにしても、キララって考えてることが分かり易いよね。」ヒカリが言いました。

「えっ……?」キララが呆然として言いました。

「付き合いが長いからってこともあるんだろうけど、それだけじゃなくて分かり易いよ。」ヒカリが念を押すように言いました。

 キララはヒカリがどこまで自分の心情を把握しているのかとても気になりました。しかし、ここで取り乱すようなことがあっては自分が魔法少女であることを肯定するようなものだと考え、ひとまずは沈黙を貫くことにしました。

「えっと……それじゃあ話題を変えようか……。」ヒカリが気まずそうに言いました。

 キララはこのままヒカリと会話を続けることに危機感を覚えました。そして、この会話を終わらせるアイデアを閃きました。

 次の瞬間、キララはヒカリの持っていたおにぎりを奪い取り、それを口いっぱいに頬張りました。

「あっ……!私のおにぎり……!」ヒカリが驚愕して言いました。

 キララはおにぎりを失ったヒカリが昼食をとる為には食堂へ行くしかないだろうと思い、その旨を伝えようとしましたが、口の中がいっぱいで上手く言葉を発することが出来ませんでした。

「この……そういう作戦か……!私はただ……キララと昔みたいに楽しくおしゃべりがしたかっただけなのに……!」ヒカリが言いました。

 キララはヒカリに対して申し訳なく思いましたが、依然として口の中がいっぱいだった為にその気持ちを上手く言葉にして伝えることが出来ませんでした。

「無理して喋らなくて良いから……喉に詰まらせないでよ?」ヒカリが言いました。

 キララはとりあえず頷きました。

「やれやれ……。まあ、今のキララも好きだけど……。」ヒカリが呆れた様子で言いました。

 キララはやけくそな気分で残ったおにぎりにかぶりつきました。


 その日の放課後、キララは普段からそうしているように街へと出て、とある路地でキャラットと落ち合いました。

「何かあったの?」キララを見るや否やキャラットが言いました。

「えっ……?」キララが不思議に思って言いました。

「ひょっとして、友達と何かあった?」キャラットが言いました。

「別に……。」キララはヒカリに自分の秘密がバレてしまったかも知れないことについて話そうとしましたが、説明が億劫だったので止めることにしました。

「話すのが面倒臭いなら別に話さなくても良いけど……。」キャラットが言いました。

「じゃあ話さない。」キララが言いました。

「僕は友達くらいには秘密を明かしても別に良いんじゃないかなって思うよ。」キャラットが言いました。

「私も……、この秘密にどれだけの意味があるのか分からないし。でも、意味が無いとも思えないから、出来る限り秘密にしておきたいよ。」キララが言いました。

「そのせいで無駄な苦労をしないと良いんだけど……。」キャラットが言いました。

「徒労にこそ価値があると考えないと、人生なんてやってられないんじゃない?」キララが言いました。

「確かに人生にはそういう詭弁が必要だね。」キャラットが言いました。


 その日の夜、とある協会の天辺に魔人ターブが佇んでいました。

「ウアアアアアアア……!」ターブが言いました。

「フン!」そう言ってターブはその場所から飛び立ちました。


 その頃、キララはキャラットと共にとある建物の屋上に来ていました。

「この先に何かを感じる。これはきっと……闇の力だ。」キャラットが言いました。

「うん。」そう言ってキララはマジカルチェンジャーを装着した左手を構えました。

「変身!」キララが変身しました。


 とある通りを一人の通行人が歩いていました。

 そこへターブが降り立ちました。

「フン!」そう言ってターブがその通行人を睨みつけました。

 その通行人が怯えながら逃げ出しました。

 その通行人を攻撃しようとするターブの前にキララとキャラットが姿を現しました。

「ン……?」ターブが手を止めて言いました。

「これは……闇の魔人……!」キャラットが言いました。

「魔人……?」キララが言いました。

「気をつけて……魔人の力は計り知れない……!」キャラットが言いました。

「大丈夫、闇の力には負けないから。」キララが言いました。

「ハアアッ!」ターブが暗黒線を放ちました。

「ハアッ!」キララが自身の正面に光の壁を生成してターブの攻撃を防ぎました。


 魔法少女であるキララには質量を持つ魔法の光を召喚する隠された能力が備わっていました。

 キララの召喚する光は相手の攻撃を防ぐことのみならず、飛行や攻撃の強化にも利用することが出来るものでした。


「フッ!」キララは全身を光で包み、空中へと浮かび上がりました。

「フン!」ターブも空中に飛び立ちました。

「マジカルイレイザー!」キララは拳鍔のような形状をした魔法の武器“マジカルイレイザー”を召喚すると、それを右手に持ちました。

「ンッ……!?」ターブが言いました。

「マジカルシュート!」キララがマジカルイレイザーから強力な魔法弾を放ちました。

「ウオアアッ……!」ターブがキララの放った強力な魔法弾を受けて空中で怯みました。

「今だ、キララ!」キャラットが言いました。

「うん!」そう言ってキララはマジカルムーブを発動しました。

 キララはターブの目の前まで飛んでいきました。

「マジカルシャイン!」キララは全身から光を放ってターブを攻撃しました。

「ウアアアアアアアッ……!」ターブはキララの放った光を浴びて消滅しました。

「魔人には撃破された時に魔獣を召喚する特殊能力が備わっているハズ……!」キャラットが言いました。

 キャラットの言葉とは裏腹にそこにそれ以上の敵が現れる様子はありませんでした。

「ん……?」キャラットが怪訝そうに言いました。

「特殊能力が無効にされている?」キャラットが言いました。

「光の前には闇の力は無力だよ。」キララが言いました。

「確かに……。」キャラットが言いました。

「こうして今日も世界の平和を守れたことだし、とりあえず帰ろう。」キララが言いました。

「そうだね。」キャラットが言いました。


 おわり

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