魔法少女モエ #1
その日、神秘的な力から国民の生活を守る隠された特別の機関“魔法庁”の庁舎の一室で魔法庁長官と彼女から直々に魔法の訓練を受けた少女が話をしていました。
「今日からあなたも正式に魔法少女となります。」長官が言いました。
「はい。」その少女が言いました。
「一人前の魔法少女になった証としてあなたに名前を付ける必要がありますね。」長官が言いました。
「お願いします。」その少女が言いました。
「ここでは一般的に所属する魔法少女に花の名前を付けているみたいですが……。」長官が言いました。「あなたは私が直々に育て上げた特別な魔法少女な訳ですから、その規則に従う必要は無いでしょう。」
「つまり……?」その少女が言いました。
「あなたはどんな名前が良いですか?」長官が言いました。
「えっと……。」その少女が言いました。「出来れば、カワイイ名前が……。」
「可愛い名前……。」長官が言いました。「それなら、“モエ”という名前はどうでしょう?」
「モエ……良いですね。」その少女が言いました。
「それでは今からあなたの名前はモエです。」長官が言いました。
「ありがとうございます。」モエが言いました。
「これから平和の為に力を尽くしてくださいね。」長官が言いました。
「精一杯努力します。」モエが言いました。
「魔法少女になるに際して、今からあなたにパートナーとなる妖精を紹介します。」長官が言いました。
「パートナー……?」モエが言いました。
「はい。」長官が言いました。「あなたには今から紹介する妖精と共に任務に当たって欲しいのです。」
「分かりました。」モエが言いました。「カワイイ妖精と一緒なら私ももっと頑張れる気がします。」
「それは良かったです。」長官が言いました。
「はい。」モエが言いました。
「それでは早速そのパートナーを紹介しましょう。」長官が言いました。そして一体の妖精がその場に姿を現しました。
モエはその妖精を見て困惑した様子を見せました。モエは妖精の容姿についてイヌやネコのような愛玩動物として一般的な動物の姿を想像していたのですが、その妖精の容姿はまるでブタのようだったのです。
「彼はオインク。彼があなたのパートナーです。」長官が言いました。
「オインク。」オインクが言いました。
「ええ……?」モエが言いました。
「彼は見ての通りブタのような容姿を持つ妖精で、そのことに誇りを持っています。その一方で、わが国でブタの鳴き声が“ブー”とされていること、延いては“ブタ”という呼び名にも不満を抱いています。その為に彼は言葉を話せるにもかかわらず基本的に“オインク”としか言葉を発さず、自らをオインクと名乗っているのです。」長官が言いました。
「そうなんですか……。」モエが言いました。
「オインク。」オインクがそう言って魔法の腕輪“マジカルチェンジャー”をモエに渡しました。
「これは……。」モエがそう言ってマジカルチェンジャーを受け取りました。
「これからはそのマジカルチェンジャーで魔法少女に変身出来ます。」長官が言いました。
「マジカルチェンジャー……。」モエが言いました。
「オインク。」オインクが言いました。
「オインクは変わり者ですが、それにもかかわらず政府が厚い信頼を寄せる優秀な妖精です。彼は魔法で政府が管理する魔法のアイテムを召喚することが出来ます。そしてあなたにはあらゆるアイテムを扱う特殊能力があります。それらのアイテムはきっとあなたの任務で役に立つでしょう。」長官が言いました。
「なるほど。」モエが言いました。「ところで、これからの私の任務と言うのは……?」
「“キャプター”と呼ばれる魔法使いの取り締まりです。」長官が言いました。
「キャプター……聞いたことがあります。」モエが言いました。「魔法のカードを集める魔法使い達のことですよね?」
「はい。」長官が言いました。
「ここ最近、とある町で姿を現すようになったとか……。」モエが言いました。
「キャプターの存在は今後わが国の安全を脅かすことになると考えられています。ですのであなたにはその町に赴き、現地のチームと協力して危険なキャプターを排除しながらキャプター達の集める未知の魔法のカードの正体を突き止めて欲しいのです。」長官が言いました。
「分かりました。」モエが言いました。
「正式な命令が下るまでまだ期間があります。それまでの間はこの町に留まり、魔法の腕を磨くと良いでしょう。」長官が言いました。「この町には闇の力が眠っています。闇の力は危険ですが、あなたの実力であれば今のままでも微弱な闇の力であれば対抗出来るハズです。」
「はい。」モエが言いました。
「それでは健闘をお祈りします。」長官が言いました。
その部屋を後にしたモエとオインクは庁舎の屋上に移動しました。
「それにしても、私のパートナーはブタか……。」モエが言いました。
「オインク!」オインクが言いました。
「そっか……ブタって言われるのキライなんだっけ……?」モエが言いました。
「オインク。」オインクが言いました。
「ゴメンね。私まだ慣れてなくて……。」モエが言いました。
「オインク。」オインクが言いました。
「ありがとう、オインク。」モエが言いました。「私、頑張るよ。」
「オインク!」オインクが言いました。
「行こう、オインク!」モエが言いました。
「オインク!」オインクが言いました。
とある通りに闇の力によって生まれた怪人“レッサービースト”が姿を現しました。
レッサービーストは路上に停めてある一台の車を片手で押して別の車にぶつけました。
「フン!」レッサービーストはさらに掌から暗黒弾を放ってそれら二台の車を爆破しました。
レッサービーストがゆっくりと歩きながら次に破壊する対象を探し出しました。
そんなレッサービーストの前にモエとオインクが姿を現しました。
「ン……?」レッサービーストが足を止めてモエを見ました。
「オインク!」オインクがモエに言いました。
「変身!」モエが左腕に装着したマジカルチェンジャーに右手の指を当てながら言いました。するとマジカルチェンジャーから「Change」と電子音声が発せられ、モエは魔法少女へと変身しました。それと同時にモエの左手に魔法の籠手“マジカルグローブ”が装着されました。
「フン。」モエを次の攻撃目標に見定めたレッサービーストが拳を構えました。
「ハアーッ!」レッサービーストがモエに向かって走り出しました。
「ハアッ!」モエがマジカルグローブを装着した左手で向かって来たレッサービーストに正拳突きを放ちました。
「ウアッ……!」モエの攻撃を受けたレッサービーストがふっ飛ばされて地面に倒れ込みました。
「これが……私の力……。」モエがマジカルグローブを見つめながら言いました。
「ウウッ……!」レッサービーストがゆっくりと立ち上がり、モエを睨みました。
「あっ……!」モエが拳を構え直しました。
「ハアーッ!」レッサービーストが再びモエに向かって走り出し、拳を突き出しました。
モエはレッサービーストの攻撃をかわしました。レッサービーストは続けて攻撃を繰り出しましたが、モエはレッサービーストの攻撃をかわしながら軽いパンチを放ってレッサービーストを攻撃していきました。
レッサービーストが攻撃を繰り出すのを止め、モエから距離を取りました。
「ん……?」モエが動きを止めてレッサービーストの出方を窺いました。
「フン!ハアッ!」レッサービーストが暗黒弾を放ってモエに攻撃を仕掛けました。
「フッ!」モエが横に跳んでレッサービーストの攻撃をかわしました。レッサービーストの放った暗黒弾はそのままモエの立っていた後ろの地面に直撃し、爆発しました。
「フン!」!レッサービーストが今度は闇の剣を召喚し、それを構えてモエに向かって走り出しました。
モエは闇の剣を使ったレッサービーストの攻撃をかわしました。レッサービーストは攻撃を続けてモエを追い詰めようとしました。
モエは攻撃をかわすのを止め、レッサービーストの振り下ろした闇の剣の刃を左手で掴みました。
「ンッ……!?」攻撃を止められたレッサービーストが言いました。
「マジカルスチール!」モエは闇の剣の刃を掴んだままそれを奪い取りました。
「ア……!」レッサービーストが言いました。
モエは奪った闇の剣を右手に持ち替えると、それでレッサービーストを連続で切りつけました。
「ウアッ……!」モエの連続攻撃を受けたレッサービーストが怯んで後退しました。
モエが足を止めて闇の剣を構え直しました。
「フン……!ウウ……!」体勢を立て直したビーストがその場から走り去りました。
「あっ……!」モエが逃げるレッサービーストを見て言いました。
「オインク!」そう言ってオインクが魔法のバイク“マジカルテックサイクル”を召喚しました。
「これは……バイク……?」モエが言いました。
「オインク!」オインクが言いました。
「これを使ってアイツを追えば良いんだね!?」モエが言いました。
「オインク!」オインクが言いました。
モエは手にしていた闇の剣を放り捨てると、マジカルテックサイクルに乗りました。そしてモエはマジカルテックサイクルを走らせてビーストを追い始めました。
「ハアッ!」モエはマジカルテックサイクルに乗ったままジャンプし、逃走するビーストの頭上を飛び越えてその行く先に着地しました。
「ンッ……!?」行く手を塞がれたビーストが足を止めて言いました。
「トドメだ!」そう言ってモエがビーストに向かってマジカルテックサイクルを走らせました。
「フン!」ビーストが暗黒弾を放って向かってくるモエを攻撃しました。
「マジカルブレイク!」モエが走らせるマジカルテックサイクルが加速しました。
モエが走らせるマジカルテックサイクルにビーストが放った暗黒弾が直撃しましたが、モエはその爆発をものともせずにビーストに向けてマジカルテックサイクルを走らせ続けました。そしてモエはマジカルテックサイクルに乗ったままビーストに体当たりしました。
「ウアーッ……!」ビーストはモエの攻撃を受けて爆発しました。
モエはマジカルテックサイクルを止め、そこから降りました。
そこへオインクが合流しました。
「オインク。」オインクが言いました。
「うん、やったよ。」モエが言いました。
「オインク!」オインクが言いました。
「ありがとう、オインク!」モエが言いました。
「オインク!」オインクが言いました。
おわり