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コーヒー二杯

作者: 香城

 運ばれてくるコーヒーカップの中身を見るのがいつも楽しみであった。喫茶店に訪れて、そうして二つ分のコーヒーを頼んで各々の本やらタブレット端末やら、とにかくそういった個々人作業のものを準備しながら茶色な喫茶店の内装の卒のなさを褒めていく。僅かな脱線と多分の日常絡みの所用を話してしまえばすぐに、私たちの前へとコーヒーが運ばれてくるのだった。差し出されテーブルの上へと置かれるまでコーヒーカップの中身は見えない。私は漂う香りに僅かな期待と、その中身の光景を想像しながら少しだけどきどきしてしまう。

 液面がクリーム色のブラックコーヒーが好きだ。ドリップの過程で発生した気泡は私たちに提供されるまで消えないままでいて、そうしてコーヒーの焦げ茶色を隠し切ってしまう。香りで大凡の様子などわかるもので、そうであるからこそ私はいつも最初の一杯が提供されるときに小さなクイズをしているような気になってしまうのだ。

 二つ並んだコーヒーカップの液面はクリーム色をしていて、香ばしいその香りに鼻を突っ込もうとうっすら持ち上げる。傾ければすぐに焦げ茶の色は顔を出して、それすらも想定と期待の内であることが嬉しくなる。一息。湯気のみを退かそうと焦げ茶色を見せないようにと柔らかく息を吹きかけていれば私の視界に映るもう一つのコーヒーカップの中にコーヒーミルクと砂糖が投入されて、ぐるぐるぐるぐると容赦なくクリームで白濁したコーヒーの茶色が混じることもまた、いつものことであるのだ。

 ブラックでなんてよく飲めるねと耳にしたのは随分昔で、私の味の好み云々を告げたのももう遠い記憶に近しい。時々そのように思い返して、コーヒーカップの液面の楽しみに転化されている。

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