1-2 共謀
「久しぶりだなAria、朝早くに悪い」
Ariaにビデオコールした俺は開口一番にそう言った。
Ariaは日本とUSのハーフで客観的に見ても間違いなく美少女と言われる部類で、有名大学の学生で同い年だ。
日本は現在21時ではあるが、AriaはUS在住なため朝の8時なのである。
「Hello拓哉。珍しいじゃないコールしてくるなんて、しかも専用回線で」
いつものようにさらさらのブロンドヘアをなびかせながら軽口を叩く。
専用回線は強固な暗号化されており盗聴されることはないのだ。
なぜなら盗聴の危機に直面した場合アラートで警告されるため、その瞬間に世界最高峰のスキルを持った拓哉とAriaの2人でハッカーの対処に当たるため、実質的に突破不可能な極秘回線なのである。
「一番信頼できるAriaにだけは俺の掴んだ国家機密を教えておこうと思ってな、面白いこと好きだろ?」
分かりきったことを言うわね。と画面の向こうのAriaは笑ったように見えた。
「国家機密?だから拓哉、顔色悪いのね。寝不足でしょ。それで話を聞かせて頂戴」
ワクワクしているのが手にとるようにわかるので俺はもったいぶらずに答えることにした。
「USの国家機密を入手した。US軍が主導しているVRMMOに関してだ。」
画面の向こうで息を呑む音が聞こえた気がした。
「(まさか…そんな技術が既に実装されているなんて…)」
Ariaの独り言が聞こえてきたが詳しく突っ込まないでおこうと拓哉は判断した。
俺は続けて知りうる限りの情報をAriaに伝えた。
・本プロジェクトの正式名称は「Project libertasリベルタス」自由を意味している。
・現在はテスト段階ではあるが、安定稼働しているVRMMOであること。
・現在のプレイヤー総数は約1000人であること。
・ゲームプレイにはフルダイブ型の専用の機械が必要であること。
・専用の機械は東海岸のシリコンバレー周辺で生産されているということ。
・ゲーム世界での1年は、現実世界での1秒ということ。
・ゲーム内である条件を満たしたプレイヤーは、現実世界でも魔法や超能力といったような異能を手に入れることが出来ること。そしてその異能を軍部は兵器として利用しようと考えていること。
「といったことが分かっている。そこでだAria。一緒にこの世界へ行ってみないか?」
今回の通話の本題をAriaに持ちかけた。
一人じゃ無理なこともあるから協力者が欲しかったとか、色んな思惑があったからなのだが、Ariaが美少女で心を許せる存在であることも無意識下では関係ありそうなのだが、今の拓哉は一切気づいてないのである。
「いいわ、拓哉。ネットワークの世界で私達2人なら無敵だわ。一緒に行きましょう。事前準備のプランはもう考えているの?」
二つ返事でYesの返事が来るとは思っていなかったため、拓哉は驚いていた。
「すまない、断られると思っていたし、あと何回か説得しなきゃいけないと思っていたから、まだ詳細なプランは考えてなかった。明日また連絡する。」
画面の向こうのAriaが不敵な笑みを見せた気がするのは俺の見間違いかもしれない
「OK.じゃあまた明日ね。今日はちゃんと寝るのよ。Bye」
通話が切れたあと、こんなにスムーズに物事が進むとは思っていなかったと笑顔でプランを練らなきゃなと考えながら、Ariaの言いつけどおり今日はゆっくり寝るかと思い直しベッドへ直行した。