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18.夫婦編6

「そこを動くなっ!!この女がどうなってもいいのか!!」



 晩餐会のその最中。フランツの隣で一心不乱に食事をぱくついていた私に唐突に剣がつきつけられる。

 剣を突きつけてる相手は、確か他国から来た使者だったはずです。

 名前まで覚えていませんが。


 会場が一気にざわざわざわっと騒ぎだし、視線が私に集まり――


 何故か一気に剣を突きつけた相手に対して哀れみの視線が向けられた。


 ちょ!?酷いです!?

 誰か一人くらい私の心配をしてくれてもいいと思うのですけれど。


 私が心の中で抗議のツッコミをいれれば、犯人もそれに気づいたのか


「馬鹿にしているのか!?この女の命が惜しければ、神の愛子を我が国に渡してもらおう!!」


 と、男。


「やめておきなさいっ!!貴方のためです!」


「ああ、かわいそうにお若いのに」


「喧嘩を売る相手を間違いましたね。

 ……死体くらいは国に返してあげましょう」


 と、祈りを捧げる神官達。


「酷いです。誰一人私の心配をしていません。

 これはちょっとした虐めだと思うのですがどうでしょうっ!?」


 と、剣を突きつけられた状態でフランツに言えば


「人質にされてもお菓子をぱくついてる人を誰が心配するんですか!?

 貴方が逆の立場だったら心配したのですか?」


 と、尋ねられ


「するわけないじゃないですかっ!」


 と、パクパク食べながら答える。


「ふざけているのか!?

 邪神をも退け、魔族を滅ぼし、国中に豊穣をもたらす神力の使いをこの国だけで独占するなどと、許される事ではないのだぞ!!

 はやく神の愛し子よ出てこい!でなければこの女が……」


 と、男。

 邪神やら魔族やらは私がした事なのですが、どうやら他国では噂に尾ひれがついて、神官長がした事になっているらしいです。

 なるほど。実力では敵わないと察して、私を人質にして、神官長を連れ去る予定だったわけですか。

 まさか私にとうとうお姫様の番がきたのか!?などと思いましたが、甘い考えだったようです。

 神官長が誘拐される一歩前の、人質役だっただけのようですね。

 少し憧れたりはしたのですけれどね。お姫様役も。

 などと考えていると


「さて、どうなると言うのでしょう?」


 男の言葉を遮って、神官長の今までにないほどの低い声が神殿のホールに響く。

 途端、その場に居合わせた者達がまるで金縛りにあったかのように動かなかくなった。


 そう、人ごみをかき分けて現れた神官長から溢れる怒りの神力でその場の空気が、本当に凍りついたのだ。

 温度が一気にさがり会場の一部が凍りついている。


「なっ!?」


「し、神官長様落ち着いてください!!」


 神官でもない私が見てもわかるほど、神力をだだ漏れさせて、オーラを放つ神官長に、周りの神官が止めにはいる。


「ええ、落ち着いていますよ。

 安心してください。


 ですが、レイナに手を出した事は許せることではありません。

 少し反省してもらいましょう」


 言って神官長が手をかざせば、複数の翼をもった天使達が使者を襲うのだった。



***



「大丈夫ですかレイナ?」


 天使にぼこ殴りにされた使者を運ぶ神官達を見送りながら神官長が問えば


「大丈夫です。

 それにしてもまさか貴方があそこまでするとは思いませんでした」


「ああ、すみません。

 最近神力が上がりすぎて、自分でもセーブできなくて」


 と、シュンとする神官長。

 確かフランツの話では好きな人の事を思うほど力が上がるとのことです。

 つまりそれだけ私の事を好きというわけで。

 あれですね。可愛いですね。

 今夜はたっぷり可愛がりたいと思います。


「まぁ、確かにレイナに任せた場合、力加減を間違えてもっと酷い事になっていたでしょうし。

 彼はあれで幸せだったと思いますよ」


 と、メガネ君。

 五月蝿いです。

 確かに最近、食っちゃ寝しかしてないので力加減を忘れているのは否定しませんが。


 それにしても……最近二人きりだったのでデレデレ顔しか見ていなかったせいで、忘れていましたが……。

 たまに見る神官長の真面目顔もイケメンで美味しいですね。

 

「どうかしましたか?」


 つい、顔を見つめてしまい、神官長に尋ねられ


「いえ、真面目な顔の貴方もカッコイイかなと思いまして」


 さらりと言えば、神官長の顔が一気に赤くなる。

 そういえば可愛いとはよく言っていましたが、本人にカッコイイと告げたのは始めてだった気がします。


 物凄く顔が嬉しそうになってるのですが。


 その姿がおかしくて


「今夜は楽しみにしてます……ね?」


 と、耳元で囁けば、神官長はアワアワしたあと情けない顔で微笑むのだった。


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