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17.夫婦編5

「レイナっ!助けにきました!!」


 ドレス選びで半ばブチギレそうな私の所へ神官長がにこにこ顔でやってきた。

 なんですか。人の不幸がそれほど嬉しいのですか!?

 物凄く勝ち誇った顔が可愛くて、腹がたつんですけど!


「なんだかものすごく嬉しそうですね」


 私がジト目で言えば


「はい!一度このセリフ言ってみたかったので」


 と、ニコニコ顔で私の隣に座る。


「それにしても珍しいですね。貴方が自分から晩餐会に出席したいと言い出すなんて」


 ズラリと並べられたドレスを見て、呻く神官長に


「仕方ありません!今度のパーティーには、滅多に食べられないという幻のマンドレイウムの木の実が振舞われるとききます!

 なんとしても参加しなければいけません!」


 そう、明日神殿で行われる晩餐会は国王陛下も出席し、国王自ら幻の木の実を参加者に振舞うことになっている。

 神殿において晩餐会とは、まず降臨の儀式をし神々を招き、盛大に食べ物が振舞われるのだ。

 もちろん神殿側で出す食事なら、晩餐会に出席しなくても食べられるのですが、国王が振舞われる木の実は、自室に篭っていては食べられないとのことなのです。

 ですから参加したくもない晩餐会に出席するわけで。


「ああ、なるほど。そういうことですか。貴方らしいですね」


 と、微笑む神官長。


「けれど、貴方ならドレスなど適当に選ぶのかと」


「何を言っているのですか!?

 食事をするのですからウエストのゆるいものを選ばないと!!」


「……ああ、基準はそこなのですね……」


 神官長が若干引いたようですが、今回ばかりは気にしていられません。


「なら特注で作ればいいのではないでしょうか?」


「嫌ですよ。お金がもったいないじゃないですか」


 私が即答すると神官長が一瞬停止し。


「……レイナは本当に倹約家ですね。

 貴族の女性ならパーティーのたびに新しいものを作るというのに」


「ああ、そうらしいですね」


 何でもその年によって流行が違うらしいですからね。

 フランツにもこんなお古の中から選ばなくても、と言われましたが、仕方ありません。

 選んだあとは多少現代風にアレンジはしてくれるそうですが。

 つい最近まで田舎で貧乏暮らしをしていた騎士がいきなり生き方をかえられるわけもないじゃないですか。

 結婚式の時に無駄に買いすぎたフランツが悪いのです。

 


「ドレスにお金を使うならその分いいものを食べます!」


「あなたらしいですね。解りました。私も探します」


 言ってニコニコ顔で神官長もドレスを選びはじめる。


「なんだか物凄く嬉しそうですね?」


 尻尾がもしついていれば、はちきれんばかりに振ってそうなくらい笑顔な神官長に問えば


「はい。はじめて貴方と晩餐会に出れますから。

 夫婦になれたのを実感できて嬉しいです」


 と、恥ずかし気もなく笑顔で答える。


 ……。

 

 この国の男性は女性に素直に愛してるとか言う人は少ない。

 黙っていて伝わるのが美徳的な考えがあるからなのですが。


 それなのにこの人はいつだって愛してるだのスキだのを平気で口にし、こういったセリフも本人の前で躊躇なく言ってみせる。


 ああ、本当に可愛すぎてムカつくんですけれど!!


「そうですね。晩餐会が終わったらデザートもまってますし」


 私が言えば神官長が不思議そうな顔をして


「マンドレイウムの木の実ですか?」


 神官長が言えば、私はにんまりと神官長の腰に手を回し


「もちろん貴方に決まってるじゃないですか?」


 と、決め顔で言えば、数分の沈黙の後やっと意味を理解したのか、神官長の顔がみるみる真っ赤に染まっていく。


「え、いや、それはその……」


「明日は楽しみましょうね?」


 耳もとで囁けば、かぁぁぁと顔を真っ赤にしたあと神官長は可哀想なくらい情けない顔になる。


「お、お手柔らかにお願いします……」


「安心してください寸止めは10回までで我慢しますっ!」


「お、多いですっ!!!身体がもちませんっ!!」


 顔を真っ赤にして抗議する顔が可愛くて私はそのまま彼の頬にキスをするのだった。


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