15.夫婦編3
「神官長!今日はどんなプレイがお好みですか!」
何時ものお約束のノリで仕事から戻った神官長に微笑めば、
「……プレイですか?」
と、意味がわからないと言った様子で神官長が聞き返してくる。
――はい。純情な彼にはまだ早いセリフだったようです。滑りました。
あれですね。
仕事をしていた時は、食っちゃ寝の生活に憧れていましたが、いざ食っちゃ寝の生活をしてみると意外と飽きるものですね。
まぁ、田舎騎士時代には比べられないほど美味しい食事に毎日ありつけるので、苦ではないのですが。
毎日神官長にエロい事をしてもいいのなら飽きませんが、彼の体力を考えると、まず毎日は無理ですし。
これでも一応仕事の事は考えてあれから手出ししないようにはしていますが、そろそろよき妻ぶりも飽きてきました。
といってもまだ5日しかたっていませんけれど。
しかし明日は神官業務は休みの日ですから、今夜は手出ししても大丈夫なはずです。
「ああ、滑りました。気にしないでください」
と、私が言えば、神官長は申し訳なさそうに
「わからなくて、すみません、出来れば教えていただけると嬉しいのですが……」
と、とても申し訳なさそうに微笑む。
「はい!喜んで!」
私はにっこり微笑むのだった。
***
「あ、やめてください騎士様 そこはっ……。
姫は思わず声を漏らした。
目隠しされているから普段より感じやすいですね姫君?
騎士が甘く囁く。
そ、そのような事は……あっ……いやぁ……」
天蓋つきのベッドの上で。
神官長の耳もとで、囁くように官能小説を読み上げる。
神官長は真っ赤になりながら、どうしていいのかわからない様子で私がわざと甘い声で読むその小説にビクビクしながら聞いていた。
もうその顔が可愛くて仕方ありません。
目を上に泳がせたり、むーっと一点を見つめたり、あわあわと狼狽したり。
神官長を見ているだけで飽きないのですが。
さらに甘い声で目隠しで陵辱されている姫君の小説を読み上げると、もう可愛いくらい動揺してます。
ええ、プレイの意味がわからないというので、丁寧に教えてあげているのです。
今日の授業は目隠しプレイについてですね。
はい。自分で言うのもあれですが、良き妻だと思うですがどうでしょう?
耳もとで甘く囁きそっと息を吹きかければ、ゾクゾクと神官長が反応しているのが手に取るようにわかります。
「あ、あの教えていただけるのはありがたいのですが……このような密着した状態で……そのベッドの上でというのは……」
「感じてしまいますか?」
と、ワザと悪戯っ子的笑で問えば、神官長はぐっとした顔になり
「……は、はい……」
と、素直に認める。
とても素直でいい子ですね。
「所で……いま、どちらに感情移入していましたか?」
私が耳元で囁くように聞けば
「え……」
神官長が意味がわからないと言った様子で聞き返してくる。
「騎士でしたか?姫でしたか?」
私の問いに……神官長はみるみる顔が赤くなっていった。
「そ、その……、それは……」
言いよどんでいる神官長に私はクスリと笑い。
「ああ、可愛いですね。お姫様のほうに感情移入していたのですね?」
「……!?」
言えば、情けない程顔を真っ赤にした。
ええ、実はこっそりお姫様のほうに感情移入するように魔法で誘導をかけていましたが、神官長には気づかれなかったようです。
「お姫様と同じ事をされたいですか?」
甘く耳元で囁きながら彼に覆いかぶされば、情けないほど顔を真っ赤にして今にも泣きそうな顔になる。
神官長の名誉のために言っておきますが、職場や私以外の前では凛とした歳相応の振る舞いをしているのですけれど。
私の前だけで見せる可愛い一面とその弱気な一面についゾクリとしたものを感じてしまう。
こう、あれですよ。虐めてと言ってるようにしか見えないのは私だけでしょうか?
本当に可愛くてしかたありません。
その可愛い顔を乱れさせたいと思うのは乙女の性だと思います。
……はい。反論は認めます。
「可愛いですねあなたは」
言って私はそのまま彼のおでこにキスを落とすのだった。