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四日目

夢を見た。


私は小さな少女で手は縛られ、口は猿ぐつわをされている。

表情はわからないが男性が来て乱暴に私を蹴る。

「○○○!」

私はさらに頬を叩かれる。

もう一人男性が来る。

私に乱暴する男を止めると、二人でどこかにいってしまう。

扉が閉まると暗闇。

暗闇。

暗闇。

たまに男性が来て私を蹴ったり殴ったりする。

(助けて、助けて)


私は目が覚めた。

寝汗でネグリジェはべっとり濡れていた。


私は着替え、震える手で水差しからグラスに水を注ぎ一気に飲む。


(あれはもう済んだこと…)


私は5つのとき別荘で誘拐された。

数日監禁されたらしい。

らしいというのは記憶が全くないからだ。

男性がダメになったのもその頃からだ。


こわい。

おそろしい。


男性はそういうものだとすりこまれてしまった。

それからは家族とアレク以外の男性には触れることもできない。


(結婚は無理でも恋愛くらいはしたいわ)


私は本棚のロマンス小説に目をやった。

アレクは治るというけれど…、治らなければ…、

私は頭をふった。

悪い考えはやめよう!


今日もアレクが来てくれる。

私はカーテンを開け、朝焼けを見た。


夜は明けた。


今日はアレクと馬で遠出だ。

きっとよい一日になる!


◇◇◇


「おはよー」

アレクがやってきた。紺色の乗馬服を着ている。

凛々しくて素敵だ。


「おはよう、アレク」

私も今日は乗馬用ドレスだ。アイボリーに紺色で刺繍がしてありかわいくてお気に入り。


「アレク、今日はどこへいくの?」


「ナイショ!」

アレクはいたずらっぽく指を一本唇の前にたてた。


私たちは愛馬のもとに行った。

私の愛馬は栗毛のメス、キャンディ。

アレクは黒鹿毛のオス、セキトバ。

どちらも主人に忠実なかわいい馬だ。


私たちは鞍にまたがると駆け出した。


風が気持ちいい。


15分ほど駆けたあと、「ここよ」とアレクが止まった。


そこは水辺が美しい湖だった。

水鳥が水浴びをしており、キラキラしぶきをあげている。


「素敵なところね!」

私は一目で気に入った。

そして茶目っ気を起こして水をすくうと

「えいっ」

とアレクにかけた。


「やだー」

アレクは濡れた前髪をかきあげる。

「やったわね!」

容赦なく水をかけられる。


「うふふ」


私はとても開放的な気持ちになっていた。

「ねえ、泳がない?」


「は?」

アレクがぎょっとする。


私は服を脱ぎ出した。

それをあわててアレクが止める。

「冗談よ」

私が舌を出す。


「ばか」

アレクに抱きしめれる。

「煽るな」


「え、なに?」


その時、スコールが降ってきた。

あわてて雨宿りできるところを探すが、すぐに見つからない。


私たちは管理小屋に来た。


「いやだわ、ずぶぬれね…」

アレクは上着を脱いで水をしぼる。


「くしゅ」

私はくしゃみをした。

アレクがあわてて持っていたハンカチで私を拭く。


「アンネ、服を脱いで。そのドレスじゃ風邪ひいちゃう。」


アレクは急いで暖炉に火を起こすと、シャツとズボン姿になった。

私もドレスを脱いで下着姿になる。

アレクが小屋から毛布を取り出し、私にかける。


「大丈夫?あなた、体弱いから…。ごめんなさい、連れてきて」

アレクは苦しそうな表情になる。


「いいえ、とても楽しかったわ。ありがとう、アレク。大好き」

私が頬笑むとアレクに毛布ごしに抱きしめられた。


「俺も好きだ、愛してる」


その声は暖炉の木がはぜる音で私に聞こえることはなかった。


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