代理彼女、スキー場にて
男友達の川西から一泊二日でスキーに行こうと誘いがあった。
なんでも男三人、女三人での健全なスキー旅行らしい。
いいよー、ちょうど暇だし。
川西は男友達以上、彼氏未満だ。手をつないで歩いたことは
あるけれど、それ以上に進めない。付き合いが長すぎるからだ。
川西の車に乗り込み、他の4人と合流。川西の大学仲間らしい。
私は初対面の人と話すのが少しも苦手ではない。むしろ楽しい。
瞬時に空気を読み取り、話を合わすのが得意だ。
女子の二人が興味深々で私を見てくる。そのうちのひとり、
レイコちゃんがあらら綺麗な子。もうひとりのヒトミちゃんは
大人しい感じ。
私はピンときた。川西め、このレイコちゃんが目当てだな。
男子二人は少しお調子者のタケシくんとコウジくん。
コウジくんの車で来たらしい。
また私はピンときた。このお調子者のタケシくんがライバルだな。
早速スキー。私は上手でも下手でもないので、勝手にひとりで
滑るしかない。
あらレイコちゃんは初心者と見えて、へっぴり腰だ。
可愛いじゃないか。
お調子者のタケシくんが教えている。
川西はどうしてる、と見たら、勝手にスイスイ滑っている。
ダメじゃないか~遅れをとっているぞ。
そんなこんなでみんなで楽しく夜は宴会。
レイコちゃんがいるせいか、男どものテンションが高い。
レイコちゃんの隣の席はタケシくんだ。
川西、私の隣に座っている場合じゃないぞ。
レイコちゃんはゆっくりしゃべる。可愛いじゃないか。
レイコちゃんはたくさん食べる。可愛いじゃないか。
下ネタに話が飛ぶこともなく、楽しい宴会は終了。
男女別々の部屋に移動して今日はお開き。
部屋に移動してからしばらく女子トーク。ここでは品位を保つ。
川西の評判を落としてはいけない。
レイコちゃんとヒトミちゃんがまじまじと私を見て言った。
「ねえ、川西くんの彼女なの?」
私は自分の髪の毛を少し触りながら、ゆっくりと微笑み、無言で
首を横に振った。
川西よ。これでいいか。完璧な思わせぶりな態度。
レイコちゃんとヒトミちゃんは顔を見合わせ、「ふ~ん」と
言った。
失敗だったのは先週髪を切ってしまっていたこと。
私は長い髪の方が美人らしく見えるのだ。
次の日も午前中はスキーをし、午後から帰るとする。
ここで私の出番か。
「レイコちゃん、川西くんの車に乗って行かない?
私、コウジくんの車に乗ってみたいかなーなんて」
レイコちゃんはにっこりして言った。
「そうなの、4人だと少し窮屈なので、帰りはタケシくんが
川西くんの車に乗って行くって」
あれ?あれれ?川西とタケシくんがレイコちゃんと別の車?
私の読みは外れたのか?
帰り、川西の車の後部座席で、可愛いクッションを抱いて
私は爆睡させてもらった。
川西とタケシくんの会話が聞こえる。
「やっぱりレイコちゃんみたいな綺麗な子がいると」
「だよな、テンション上がるよな」
川西よ、ごめん。代理彼女として登場し、レイコちゃんの
気を引く作戦に私は役に立たなかったらしい。
でもまだチャンスはある。今度は春にまた呼んで。
それまでに髪を伸ばし、スキーウェアではなく身体のラインが
くっきり出る服で行くから。
それでもし、私を彼女未満から昇格したくなったら。
考えてやってもいいぞ。川西。