第1章 2「始まりの日」
あの日は忘れもしない。
俺の人生を変えた日。
◆◇◆
「今日のピックアップモンスターはこの辺りに出現か…」
俺は出現情報を見ながら目的地へ向っていた。
なんといっても、その情報は運営が公開しているので確実性はあるのだが。
出現情報から目を離し周りを見ていると、春休みということもあってか、俺と同年代ぐらいの人達が集まっていた。
とはいえ、俺も高校生なのだが、
今回のモンスターは今までのとは格が違うらしい。
きっと、それもあるのだろう。
時は来た。
《ミクサー・ワールド 起動!》
視界が一瞬暗転し、そして、元に戻ると、目の前にはモンスターを待つプレイヤー立ちが武器を構え準備している。
俺の武器は『エレメンタルソード』と呼ばれる剣だ。
比較的軽くそして、細めだ。
午前九時になり、情報では出現するはずなのだが…
何も無い。
いや、変化はあった。
時間になると急に人が増えた気がする。気のせいか?
しかも、増えた人たちはかなり戸惑っているようだ。
なぜだ?
ゲームをしに来たのだから戸惑う理由なんてないはずだ。
しかも、ピックアップモンスターが出ていない。
周りでは、
「でねえじゃねぇーかー」とか「運営しっかりー」と声がする。
バグか?バグ以外に何の理由がある。
そんな時だった。
俺の耳に声が聞こえてきた。
「プレイヤー、そして国民の皆さん、おはようございます」
低い、男の声だった。
「今、皆さんはとても困っているでしょう、戸惑っている方もいるでしょう」
なんだ、このアナウンス。、と思いながら聞く。
「たった今この『ミクシブル・ワールド』は政府によって管理、管轄されています」
「そして、全国民がプレイヤーとしてこのゲームに参加することになった」
「とは、言っても日常生活はあまり変わらないだろう」
「ただし、すこーしだけ変わることがある...それは」
「街中にモンスターが出現し続ける、そして、そのモンスターに生命力をすべて削られたものは、市民権や人権、その他持っている持ち物、権利をすべて剥奪され、そして...」
「人間以下の存在...つまり奴隷になる」
俺は少し息をのんだ。
「奴隷になったものは全員専用の収容所に行き、そこで庶民や政府や行政の役人、天皇一族の見世物として生活を送る。奴隷となった者は全員にレベル1の人の30分の一のステータスしか持つことができない」
「ただし、奴隷にも救済措置はある。奴隷収容所において月に一回行われる大会で優勝し、かつこちらで用意したモンスターに勝つことができれは、すべての持ち物、権利を取り戻し普通の人と変わらない生活が送れる」
「最後に、このゲームから逃れる方法はたったひとつだけある」
「それは-----ゲームをクリアーすることだ」
俺は再び息をのむことになる。
なぜかって?
このゲームをクリアするなんてどうあがいても不可能に近い。
俺には学校が、そして大人には仕事がある。
どうしろって言うんだ。
こうして、人間的生活をかけた、ゲームが始まった。