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【リメイク連載中】目が覚めたら世界が異世界っぽくなっていた件  作者: 白い彗星
異世界召喚かとテンションが上がった時期が俺にもありました
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中二病+クマ+恋ばな=帰りたい



「それでー、絶対キャシーはカロンのこと好きだと思うんですよねー!」


「ガウガウ!」


「……」



 現在再び部屋に戻り、三人……正確には二人と一匹で円になって床に座っている。


 盛り上がるルーアとクマ……ルーア曰く名前ベアくん……は笑いながら話し合っている。話し合うとはいっても、達志の目にはルーアが一方的に喋っているようにしか見えないのだが。


 クマってあんな風に笑うんだなとか、そもそも何でクマと普通に会話成立してんだろうなとかいろいろ思うところはあるが……



(なんで俺、中二病と熊と仲良くテーブル囲んで恋ばなしてんだろーな……)



 完全に帰るタイミングを逃し、なぜか会話が恋ばなに発展してしまい今に至る。


 ちなみに今話題に上がったのはクラスメイトのキャシーという女子とカロンという男子であり、クラス内の恋模様をルーア目線で面白おかしく語っている。


 達志としても、恋ばなに興味がないわけではない。何せ、他人の恋愛ほど面白いものはない、と達志は考えているからだ。だからこうして恋ばなに参戦するのもやぶさかではない。


 とはいえ……なぜ、初対面のクマと一緒になって、楽しく笑いあわなければいけないのだろうか。いや、今達志は全く笑ってないけども。



(帰りてぇ……)



 切に思う。あの時もう少し早く帰ろうと考えてればなとか、そんなことを考えるが後の祭りだ。


 今からでも帰ると言い出せばいいのだが、このクマの気性がわからない以上、下手なことを言えば切り裂かれかねない。その結果ルーアとクマの今夜のご飯になるのはごめんだ。


 もちろん、そんな物騒なことにはならないと信じたいのだが……



(熊……熊だもんなぁ)



 当たり前だが、クマと同じ空間で過ごしたことなどない。それにルーア曰く、ベアくんは彼……つまり男だ。


 同棲している女の子が見知らぬ男を連れ込んでいたら、いい気持ちでいるはずがない。


 まあ、それは人間での話。ベアくんの心境はわからないし、そもそもルーアのことをどう思っているのか。そして逆もだ。



「なぁ、二人はどんな関係なんだ?」



 思い切って、聞いてみる。盛り上がっていた二人はピタリと止まり、うーんとルーアが何かを考えている。顎に指を当てている仕草が、何だかあざとい。



「ベアくんはですねー、私の家族。お兄ちゃんみたいなものですね」


「おにっ……!?」



 予想外過ぎる答えが返ってきた。一つ屋根の下に住んでいるのだからある程度以上に親密度は高いと思っていたが、まさかお兄ちゃんとは。それを聞いたベアくんは、初見でもわかるくらいの照れ笑いを浮かべている。


 頬を染めるな頬を。



「こうやって抱き着くと、もふもふしてあったかいんですよぉ。彼が来てくれてからは、夜も寂しくなくなりましたし」


「ガウッ」



 もふっ、と、女子高生がクマに抱き着くという奇想天外な光景が広がっている。ルーアはベアくんのお腹に頬擦りし、ベアくんはルーアの頭を撫でている。その様子は、まるで本物の兄弟のよう。


 なるほど、ベアくんもルーアのことを妹のように思っているようだな。


 そして、何気なく語ったが……彼が来てからは夜も寂しくなくなった、とルーアは言った。それは、両親を失ったルーアの悲しみを見事にベアくんが埋めてくれたということだろう。


 ……とはいえ。



「それにしたって、どうして熊が……いや、いるのに不思議はないか。なんでルーアん家に?」



疑問に思うことはいくつかある。そのうちの一つ……二重の意味を持った質問は、問い掛ける最中片方は自分の中で解決した。


 そもそもリミやセニリアという、限りなく人に近い種族が周りに多いので忘れかけていたが……


 異世界っぽくなったこの世界には、獣の顔をした人型の姿をした誰かとか、そもそも喋れる獣にしか見えない誰かとか、スライムとか、色んな種族がいる。


 だから別に、クマがいても不思議じゃない。ということでもう片方の、どうしてクマがここに……ルーアの家にいるのかという疑問が残った。それを汲み取ったのか、ルーアが答える。



「あれはそう、両親を失って一週間ばかり過ぎた頃……私は、ウサ晴らしのために近くの山に篭って魔法を撃ちまくっていました」


「お、おう」



 答えるというより、語り出してしまった。なんともはた迷惑な話だが、両親を失った悲しみをぶつける矛先を探して、と言われてはおいそれと切り捨てるわけにもいかない。



「何発か撃って少しはスッキリしました。でもそこへ、現れたのがベアくんです。彼はなぜか、とても怒っていました」


「そりゃそうだろうな」



 おそらくはその山がベアくんの住み家だったのだろう。そこへ理由もなしに、あんな大規模な魔法を何発も撃ち込まれてはたまったもんじゃないだろう。



「これが、私とベアくんの出会いです……続く」


「続くの!?」



 別に聞きたくなかった話を、妙に気になるところで終わらされてしまった。本当にここで終わることはないだろうが、というより演出なのだろうが、なんとも引きがうまいというかなんというか。


 ここまできてわかったのは……達志はまだ、帰れそうにないということだ。

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