カラナ家訪問の理由
「ううむ……しかし、タツの妹さんですか。一目お目にかかりたかったですね」
「それを言うなら、俺だってルーアの親に会ってみたかったよ。ルーアの中二病って、親譲りなのかと思ってたし」
「失敬な、親は普通の人ですよ?」
「自分が普通じゃない自覚はあんのか……」
……お互いの不幸を吐露しあってから数分。どことなく気まずかった空気だったが、変わらず明るく振る舞うルーアのおかげで気まずさの壁を越えて会話することができている。
こうして、亡くなったお互いの家族についての話題を話し合えるほどに。達志にとっても、妹のことについていろいろと語っていた。
「それにしても、私の両親にタツの妹さん……どちらも車が原因ですか。なんだか運命を感じますね?」
「いやな運命だな。俺が眠った原因も車だし」
三つの事故すべてが車によるものとは、嫌な偶然である。魔法が使えるようになった世界でも、そういった古典的な事故はなくならないらしい。
こうして誰かに妹のことを話すのは、初めてだ。そもそも、自分から話す内容でもないのだが。
リミとセニリア……同居している彼女らなら知っていても不思議ではないだろうが、積極的に話す話題でもないので自分から言うことは避けていた。二人も、同じ理由だろう。
結果として、母以外にはこういう話をしたことがないので、鬱憤というかいろいろ溜まっていたのだ。
「なんか、吐き出すもん吐き出したらちょっとスッキリしたよ。サンキュー」
「そうですか? ならよかったです。溜まったらまたいつでも私がお相手するので、遠慮なく言ってください」
「なんかちょっといかがわしい言い方やめてくんない!?」
狙っているのかたまたまなのか、ルーアの言い回しに達志のツッコミが冴える。そうして場の雰囲気が和らいだのを確認して、パンッとルーアが手を叩く。
「では、達志を家に招いた本来の目的でも果たしましょうかね」
「え…………そうだな」
ルーアの家に来た理由、なんだっけ。この話をするためではない気はするが……ルーア・カラナさんのお宅にお邪魔した理由なんだっけ、と頭をひねらせる達志だが、ここはルーアに便乗しておくことにする。
だが、そうそうごまかしは通用しない。
「今、絶対忘れてましたよね?」
「そ……ソンナコトナイヨ」
じー……っと疑いの視線を受けるが、下手な口笛を吹いてごまかそうとする。それでも視線が消えることはないが、しばらくしてから「はぁ……」とため息が漏れる。
その主は一人しかいないが、それがルーアの呆れからくるものなのかは、わからない。
「ま、いいです。適当にくつろいでてください、準備してきますので」
「準備?」
うーんうーん、とさらに頭をひねらせても結局この家に来た理由が思い出せない達志に、準備してくるから待っててくれという。
果たしてなんの準備なのか……そしてそもそもどうしてここに来たんだっけと全く思い出せない。
そんな達志を尻目に、立ち上がったルーアは一度達志の顔を見て……ものすごい意地悪な笑みを浮かべて、こう言った。
「えぇ……私がサキュバスであることを証明するための、ね」




