ぜひお礼を
「改めまして……タツシ殿、妹を救ってくれたことを感謝する。ありがとう」
「ちょ、ちょっと!?」
「お姉ちゃん!?」
部屋に招かれたリマは、話ができると言いつつまず、頭を下げた。達志に、妹の命の恩人に礼を尽くすのを体現するために。
いきなりのことに、達志は目を丸くする。学校でも同じことはあったが、こうして感謝されるなどむず痒い。
「あ、頭を上げてよリマ」
「いや、こんな形だけの感謝などでは足りない。もっと、なにかお礼を、金品や珍品なんかを……いや、私の体を求めるというなら喜んで差し出すし……」
「ちょっと落ち着こうか!?」
「む……そうだな。こんな貧相な身体では、年頃の男の慰めの気休めにも……」
「だから落ち着け!?」
なんだかとんでもない方向に頭がいっているリマをなんとか落ち着かせる。感謝はいらないというのがなぜこうまで方向転換したのだろうか。
とはいえ、その気持ちはわからなくもない。もし達志だって、妹の命の恩人が目の前にいれば、額を床に擦りつけてでもお礼を言うだろう。もっとも、すでにことりは亡くなってしまっているが。
それでも、少々ぶっ飛び過ぎているところはあるが。
「と、とにかく、お礼なんかいらないから。むしろ、俺がいなくなってから、母さんに金銭的な援助もしてくれていたみたいだし」
お礼をと言うなら、おかしな話だが達志側にもだ。達志が眠ってから、達志の治療や、生活の援助までリミの家がしてくれていたらしい。
とはいえ、母のことだから最低限のものしか受け取らず、突き返したか……でなければ、今もどこかにとってあるに違いない。達志はその辺りのことを深く聞いたことはなかったが、きっと母ならそうしているという確信があった。
でなければ、一人で朝から夜遅くまで働きはしないだろう。もちろん、その中には寂しさを紛らわせたいというのもあったのだろうが。
「うぅ、優しい……好きになりそうじゃ」
「!?」
すでに着物を肩まではだけていたリマが、とんでもないことを言い出す。それに驚くのは達志だが、なぜかリミの方が反応しているようにも見える。
「ふふん、安心せい。別に取りはせんから」
「お、お姉ちゃん!」
なにやら二人で耳打ちしているが、その会話の内容は俺には聞こえない。なんなんだ。
ともあれ、落ち着いたリマは改めて達志に頭を下げた。
「これで義理は通した、とは言わんが……胸につかえていたものが取れた気分じゃ」
「そんなに気にしてたんだ?」
「当然!」
妹想いの、いいお姉ちゃんだなと思った。
「しかしまあ……どうじゃ! わしはあれじゃが、リミを嫁に! 優しいし、気が利くし、家庭的……とセニリアから聞いておるし! いい身体しとるし! 優良物件じゃぞ、姉公認じゃぞ!」
「お、お姉ちゃん!」
「あはは……」
急に話がぶっ飛ぶあたり、やっぱりちょっと変かも、とも思うのだ。




