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あったなぁ、そんなこと



「それはそうと、シェルリアは誰かと一緒なのか?」



 シェルリアが戻ってきてから、ジュースを買っている最中……このまま去るのもこちらのことをいろいろ聞かれただけなので、達志からも話しかける。


 これでもし、男と来ているとなれば……校内二大美少女のスクープになるかもしれない。知ったからといってそうかするつもりもないのだが。



「いえ、友達と一緒ですよ。先輩もあったことのある子です」



 友達と一緒という彼女の顔に照れのようなものは見られない。もしかして男友達、という可能性もあるが、その可能性は低く思えた。それに、達志があったことがあるとは……同じテニス部の人間だろうか?


 果たして誰のことなのか……その答えは、すぐにわかることとなる。


 

「おーい、リアー」


「! あれ、はーちゃん?」



 向こうから、シェルリアに向かって叫んでくる人物が一人。リア、というのは彼女の愛称だろう。走ってくるその人物は、サンダルを履いているので足が痛い、ということはない。


 その人物に、シェルリアも手を振る。やって来たのは、シェルリアにはーちゃんと呼ばれた女の子。はーちゃん……達志には、かすかに聞き覚えのある言葉だ。


 いったい、いつだったか……



「あれぇ、ファミレスで会ったリアのセンパイじゃん、テニス部の。おっひさー」



 ファミレス、会った……それを聞いて、思い出す。あれは確か、体育祭の前の日……猛と二人でファミレスを訪れていたときに、確かに出会っている。


 あったなぁ、そんなこと。一言二言話した程度ではあるが。


 その時一回出会った限りの相手ではあるが……きっかけさえあれば、思い出される。まさにギャルといった感じの、褐色の肌をした女の子だ。


 金髪をお団子にして頭の右側に乗っけているのは以前会った時と同じだが、今回大きく違うのは……彼女も、水着であるということ。


 シェルリアと同じくビキニなのだが、布面積が一回り小さく思える。しかも黒色であるため、なんだか大人の色気さえも感じさせられる。



「あらあらー、センパイったらアタシの水着に見惚れてる~?」


「あははー、ギャルには興味ねぇわ」



 達志を見て、わざとスタイルを強調させるはーちゃんであるが、達志はそれに取り合わない。


 ギャルに興味がない、は本音か嘘かはともかく、今の今まで由香やリミの体を押し付けられていた達志にとって、並の刺激では通用しない。


 それを知らず、自身の魅力が通じないはーちゃんは唇を尖らせる。



「なぁんだ、つまんないの」



 彼女も彼女で、本気で魅了していたわけではないらしい。


 ここで達志は思うが……シェルリアの水着を選んだのは、はーちゃんではないだろうか。(一部を除いて)おとなしめの彼女が、自らビキニを選ぶとは思えない。



「それにしてもセンパイ。リアと同じ校内二大美少女の一人と、学校で超人気の由香ちゃん先生、二人を両手に花状態だなんて、隅に置けないじゃん」


「もー、如月先生、でしょっ?」



 これはまた面倒な奴に見つかってしまった……見た目で、というかギャルだからというので判断して悪いが、下手なことを話せば、それがすぐさま広がってしまう気がする。


 女子はおしゃべりが好きだ。ギャルは余計に、その傾向が強いように感じる。



「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫だって! アタシ、口は固いんだから!」



 達志の不安を汲み取ったのか、ケラケラと笑みを浮かべるはーちゃんであるが……やはり不安だ。



「はーちゃんさん、私達はただ偶然会っただけです。あなたが考えてるようなことはありませんよ」


「キャー、リミセンパイに話しかけられちゃった!」



 シェルリアにしたのと同じようなことを告げるリミだが、はーちゃんは真剣に聞いているのかわからない。隣のシェルリアは、ペコペコ頭を下げている。



「こ、こう見えてもはーちゃんはしっかりしてるので! 変なことは言いふらさないですよ!」


「本当かよ……」



 正直、シェルリアのお墨付きがあっても大部分が不安ではある。



「ありゃー、センパイ、信じてくれないのぉ? そんなんだったらアタシ、悲しすぎて口が滑っちゃうかもー」


「勘弁してください!」


「と、とにかく。私からちゃんと言っておきますから」


「お願いだよ!?」



 由香が、念押しして二人を見つめる。ああは言ったが、はーちゃんは由香のことが好きらしいので下手なことは言いふらさないだろう。いや、はーちゃんだけでなく、いろんな生徒から人気なのだ、由香は。


 それは単純にすごいと思うし、尊敬できる部分だ。



「ん、どうしたのたっくん」


「なんでもねえよ。あいつら待ちくたびれてるだろうし、戻ろうぜ」



 素直に尊敬しているなんて照れ臭くて今は言えないが、いつか言えたらいいと思う。


 はーちゃんも由香ちゃん先生なんて親しげに呼んでいたし、思わぬところで由香の人望が垣間見えた。なんだか得した気分だ。


 そしてそれはそれとして、達志達は元の場所に戻ることに。きっとあいつらも待ちくたびれているだろう……人数分のジュースを手に、自販機の下から去っていく。

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