ナンパ除けのために仕方なく
一度追い払ったくらいで、また別のナンパが迫ってくるだけだ。なので、由香とリミは大胆な作戦(?)を決行した。
それは……
「あ、あのー、お二人共? その、なんというか……歩きにくい、と言いますかね……この状態はひじょーに、そのぉ……」
「し、仕方ないでしょ。これも、ナンパ除けのための対策なんだから」
「そ、そうですね。私も加わらないと変ですから……」
……現在、達志は周りからの視線を一身に集めていた。それは先ほどのナンパのようなものではなく……もっと鋭い、怨念のような視線。
なぜなら、今由香とリミは、達志の腕にそれぞれ抱き着くという形を取っているからだ。つまり、両手に花……状態であった先ほどの上位形体ということだ。
ただ並んで歩いているだけならともかく……こうして腕を組むような形だと、どうしても柔らかくどうしようもなく柔らかいものが当たって、いや押し付けられてしまう。柔らかい……大事なことだから、二回言った。
しかも、今は水着姿という、非常に露出の多い格好だ。布一枚越し……それどころか、もう素肌が当たっているのだ。これで、どうやって冷静を保てというのか。
さらに、ここはビーチ……人もそこそこ多い。そんな中で、美女美少女二人を侍らせていれば、周りからの……特に男からの視線はもはや必至というものだろう。
「うぅ……は、恥ずかしい……」
「ならやめたらあ!?」
これを提案してきた言いだしっぺの由香は、すでに顔が真っ赤だ。しかも身長さのせいで、彼女は腰を折り屈みながら歩いている状態だ。正直、由香の負担の方がすごそうだ。
「や、やめないっ。そしたら、またナンパされちゃうしっ」
「が、頑固者め……」
事実、この状態になってからめっきりナンパはされなくなった。なにせ、男一人を、美女美少女がサンドイッチしている……当然といえば、当然であるが。
ぶっちゃけた話、視線で殺されてしまいそうだ。
それに……達志自身の問題、理性が持たない。こんな露出の多い水着で、校内でトップの美少女、教師の中でも上位に入る美人……そんな二人にこんなことをされて、本来はどうあれ現在健全な男子高校生の達志には刺激が強すぎる。
よって、さっさと自販機でジュースを買って帰りたいのだが……
「じ、自販機が、ねえ……」
歩けど歩けど、自販機が見当たらない。海なのだから、ちょっと歩けばあるかと思っていたが……
そう言えば、この辺りの景色も随分変わったものだ。まあ、達志にとってこの間のことも、この世界では十年前のことなのだから当然なのだろうが。
「……あ、自販機あったよ」
どれだけ歩いたか、というかどれだけ視線を浴びたかわからないが、ようやく自販機を見つけた。ようやくこの、幸せで辛い時間からも解放されるというものだ。
だが、すんなりと終わってくれるはずもなく……
「あれ……先輩?」
飲み物を選んでいる背後から、同じ部に所属する、聞きなれた金髪エルフの声が聞こえたのだから。




