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男にとって仕方のないこと



「さいってー!」



 それぞれ右頬に、赤い紅葉を作った達志と猛は現在、由香の前で正座させられている。むろん、砂浜の上で。


 その理由は、言うまでもないだろう。



「まあまあ由香ちゃん。女冥利に尽きるってものじゃない?」


「でもおばさん!」



 由香の水着姿を見たことにより、鼻血を吹き出し、由香からのビンタをいただいた二人は、何を言うまでもなくただ黙していた。それが理不尽なものであろうと、何も言わずに。



「しかし、興奮すると鼻血って本当に出るんですね。漫画の中だけじゃなかったんだ」


「セニリアさん! 他人事だと思って!」



 自分の体に興奮した……それは由香にとって、とても恥ずかしくあり若干嬉しいものではある。さよなじゃないが、達志を誘惑できたということだろう。


 猛は予想外だったが。



「タツシ様は、ああいう大人の片が好きなんですね……」


「いや、誤解……でもないかもだけど! 違うから! これはあれだよ、生理現象だから!」



 リミから、怒っているやら悲しんでいるやら、もしくは蔑んでいるやら、とにかくいろいろな感情が混ざり合った瞳を向けられる達志は、弁明に必死だ。弁明もなにも、鼻血出したことに変わりないのだが。



「猛くんは、胸が大きいのがいいんだねえ……そうなのそうなんですか」


「さよな? ぶつぶつ言わんでくれなんか怖いんだが?」



 対してさよなは、猛を責めるわけではなくなにかに絶望している。その理由がわからないのが、猛が猛たるゆえんだ。



「許してくれよ由香ぁ。その水着、めっちゃえろ……似合ってるんだしさ!」


「そうだぜ。そのたまら……スタイルの良さが引き立ってるし恥ずかしがることねえよ!」


「言い繕うとしてもごまかせてないよ」



 さっきから砂利が膝に食い込んで痛い。それに熱い。早く解放されたい二人は、それはもう必死だ。


 その必死のお願いに、由香は……



「はぁ……もういいよ。似合ってないって言われるよりは嬉しいし。せっかく海に来たんだもん、怒っても仕方ないよ」


「「由香ぁ……」」



 結局、許してしまう。まあ、みなえの言うように女冥利に尽きると前向きに考えていこうではないか。


 二人の反応はオーバーすぎたが、似合ってないと一蹴されるよりはずっといい。



「さ、終わり終わり。若者は遊んできなさいな」



 パン、と手を叩き、微妙な雰囲気になってしまったのをみなえが空気を変える。ここで、いつまでも水着評論をしていても仕方がない。



「俺ら、もう若者って歳じゃないっすよ」


「私にとっては、いつまでも子供なのよ」



 苦笑いを浮かべる猛に、自分にとってはまだまだ若いと、告げる。達志だけではない、ここにいるみんな、子供のようなものだ。



「そうだ、私いろいろ持ってきたんですよ!」



 と、リミが荷物の中から取り出すのは……ビーチボールに浮き輪、そしてなぜかスイカなど、様々なものがあった。よほど、今回のお出かけを楽しみにしていたのだろう。


 その顔は、早く遊びたいとキラキラしている。



「そうだな。じゃあまずは……」


「ちょっと待ったー!」



 そこに、ちょっと待ったコール。それを言ったのは誰であろう、さよなだ。彼女の手の中には、一つの容器が握られている。



「なにそれ」


「なにそれ、じゃないよ! 日焼け止めだよ! もしかしてこの太陽の下を、ノークリームで遊ぶつもりだったの!? 甘いよ!」


「ノークリームって……」



 夏……それは、お肌の天敵でもある。海で、素肌を多く露出しているともなれば余計にだ。なので、対策はバッチリしなければならない。


 日焼け止めクリームを塗ることで、少しでもお肌を大切にするのだ。



「そうですね。姫も、もうちょっとその辺自覚してください」


「い、いいじゃないそれくらい……私肌荒れにくい体質だし」


「「いけません」」



 どうやら、普段は日焼け止めとか自主的に行わないらしいリミに、セニリアとさよなの圧が迫る。怖い。


 その肩を掴んで、おとなしくさせるために引っ張っている。



「おとなしくしてください。じゃないとこの場で水着を剥ぎますよ」


「なんてことを!?」



 セニリアは、リミを慕っているはずなのだが……たまに、ホントにそうであるのか疑わしい時がある。


 ブルーシートにうつぶせにさせると、その健康的な背中が露になる。ここに、今からセニリアが日焼け止めクリームを塗っていく。



「ではタツシ殿、よろしくお願いいたします」


「えぇええっ?」


「やるか! 母親の前でなんてことさせようとしてんだよ!」



 まさかの発言に、達志は条件反射のようにツッコむ。なんて魅力的……いや危険なお願いをするのだろうか。


 だが、嫁入り前の娘の肌を、まさか自分の母親の前で触るわけにもいかない。達志が断ると、気のせいか「ちっ」と舌打ちのようなものが聞こえた気がした。


 リミの背中にクリームを塗っていくセニリアの姿を、じっと見ながら……達志は、無心で己に日焼け止めクリームを塗っていく。何も考えちゃダメだ、変なこと考えちゃダメだ。


 結局、リミとセニリア、由香とさよながそれぞれペアになってお互いに日焼け止めクリームを塗っていた。達志と猛は、自分で塗った。みなえには、セニリアが塗っていた。

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