閉会の儀
激動の体育祭が終わり……一同が集まり、教師らから大きな声で生徒たちに労いの言葉がかけられる中、達志は一人、ボーッと全チームの結果一覧を見つめていた。
一位:緑チーム
二位:青チーム
三位:赤チーム
四位:黄チーム
五位:桃チーム
これが格チームの順位結果である。達志所属の赤チームは可もなく不可もなく、真ん中の位置にある。
最後に達志がやらかしたし、芸術部門でバカ二人がやらかしたりしたが、なんとかこの順位に抑えられたのは、ひとえに他のメンバーのおかげだろう。
大方の予想通り、一位はリミやルーアが所属する緑チーム。ここは、順位としては一位ながら、二位以下のチームとは大きな差がある。出来レースを疑いたくなる。
マルクスやシェルリアのいる青チームが二位、このチームは比較的安定していた。二人三脚では大きな遅れがあったものの、それを補っても二位に立てている。
ヘラクレスのいる黄チームが四位。少し意外な気もしたが、いかにヘラクレス個人が未知数な相手とはいえ、それだけで上に行けるほど団体戦は甘くないということか。
「はぁ……なんか気が重たい」
先程トサカゴリラに嫌味を言われたのだが……達志の転倒でリレーに大きな遅れがなければ、赤チームは二位になれていたかもしれない。嫌味というより、正論でもあるが。
他のみんなはフォローしてくれたりしたのだが、なにぶん達志自身が自分を許せていない。
「それに、チラチラ視線を感じる……」
グラウンドに整列し、教師らの長ったらしい話を聞いているこの間にも、周りからは視線を感じたりひそひそ話が聞こえるのだ。
当然だ、達志の痴態は同チームどころか全校生徒、果ては教師や見学に来ていた人達にも見られていたのだ。正直、恥ずかしいどころの話ではない。
この気持ちを払拭するためにはどうすればいいのだろうか。穴に入ればいいのだろうか。死ねばいいのだろうか。
『気にすることないって、誰だってミスはするよ』
『最後までよく走ってくれて感激したよ』
『転けたってことはそれだけ一生懸命ってことだろ、恥じるなって』
……と、リレーが終わったあとに達志にかけられた声の数々。それは達志をフォローするもので、とてもありがたいがとてもいたたまれなかった。
『ったく偉そうにしといてだらしねぇ。最後の最後でヘマしやがって』
とはトサカゴリラの言葉だが、むしろこのときばかりはトサカゴリラの言葉の方がありがたかった。フォローされても惨めになるだけだし。
同じチームにマルクスがいれば、それはもう激しくけなしてくれるのだろう。その方が、逆に居心地がいいのかもしれない。Mではないが。
「はぁ…………」
閉会式の最中、一人後悔に押し潰されていた達志であったが……それに構わず、時間は過ぎていく。教員たちの長くありがたい話も終わり、そのうちに会も終わりを迎える。
今日は、体育祭が終われば下校だ……しかし達志にとっては、この後の帰り道、保護者目線である猛や猛や猛などにいじられるんだろうな、と不安を感じてしまうのでいっぱいだ。




