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玉入れ合戦



 とにもかくにも、体育祭は開催された。達志が所属する赤チーム、不安しかないメンバーばかりであるが、それも運命として受け入れて頑張るしかないだろう。


 とりあえず一番警戒すべきは、リミとルーアがいる緑チームだろう。魔法の使用アリアリの体育祭では、単純に魔法の威力がずば抜けて高いあの二人が一緒のチームにいる時点で充分な警戒に値する。


 ……とはいえ、ルーアの場合は魔法の威力制御が効かないために眼帯で魔法使用を封印しており、制御の効かない魔法をぶっ放すとは思えないためそんなに警戒しないでもいいだろう。


 あと、身体能力自体はそんなに高くない。


 最も警戒すべきはやはりリミ。魔法の実力は言うまでもないが、柔道部主将であるノーベルトを軽々しく投げ飛ばした身体能力は恐ろしい。



「ま、それもチームの協力プレイで乗り越えていきたい……んだけどなあ」



 果たしてこの奇天烈メンバーが共に協力し合うことができるのだろうか、正直不安しかないわけで。チーム一丸となれば、壁は乗り越えられるはずだ。


 それぞれの個性のぶつかり合いが激し過ぎるが、果たしてうまくいくだろうか。



「ま、なんとかなるだろ。魔法ありきみたいだし、これだけ人数がいればリミみたいなすごい奴がいるかもしれないし……」


『第一種目は、玉入れ競技です。選手の人は……』


「さっそく魔法関係なさそうなのきちゃった!?」



 いよいよ競技が始まる。その第一種目は、玉入れである。



「って、玉入れ!? 高校生にもなって玉入れ!?」


「なんだようるせーな。目玉種目の一つだろうが」


「玉入れが!?」



 驚愕する達志とは別に、出場メンバーが集まっていく。どうやら各チーム五人がそれぞれのチーム色のカゴに玉を投げ入れていくらしい。ここまでの説明なら、普通の玉入れではある。


 が、これは魔法ありきの競技。普通の、とはいかないだろう。



「じゃ、行ってくるねー」


「…………頑張る」


「ウチのクラスから二人も出んの?」



 元気よく手を振る蘭花と、無口ながら気合いを表すシャオ。二人の背中を見送りながら、とりあえず達志は観戦モードに。玉入れなんて小学生以来なため、懐かしくはあるものの……


 正直、この歳で玉入れに熱くなれるとも思えないのだが、果たして……



『では、開始!』



 メンバーが揃い、競技が開始される。どうやら蘭花とシャオ以外に、達志の知った人物は…………いた。



「ヘラ……あいつもいる」



 スライムであるヘラクレス。手足もないスライムに何ができるのかと思いきや、忘れてはいけない。彼はその体から、手足を生やすことが出来るのだ。


 しかも……その長さに制限はない。ゴムのように伸縮自在なのだ。よって……



「玉を投げ入れるんじゃなく、直接カゴに入れている……だと?」



 玉を投げ入れる必要はなく、手に持ったまま直接玉を運ぶことが可能だ。しかも、彼の場合それは魔法ではない。スライムゆえの特殊能力……とでもいえるだろうか。



「ありなの!? あれありなの!?」


「ありありだぜ!」



 ルール的に問題はないらしい。あれならば確実に玉を入れることが出来るため効率的だ。


 また、別チームの様子も観察してみる。やはり各々、普通に玉を投げ入れている者が多いが、そんな単純にいくはずもない。



「……なあ、あそこのチーム玉浮いてない?」


「ありゃ無属性の浮遊魔法使ってるんだろうな」


「いいの!? あれもいいの!?」


「ありありだぜ!」



 もう、玉入れとは名ばかりになっている気もするが、魔法がありなのだから何でもありなのだろう。


 だが、ああいうやり方がありならばこちらにも勝機はある。以前水魔法で触手を使っていた人物が、赤チームにはいる。あれを使えばヘラクレスのように、玉を直接入れることが可能なはずだ。


 というわけで、気に入らないがトサカゴリラに期待するしかないだろう……なのに。



「なんで、この競技に出場してないんだよ!!」


「うぉ、びっくりした」


「びっくりしたのはこっちだよ!」



 のんきにテント内に座っている、歩くトサカに達志は頭を抱える。なぜこの男は、ここでのんびりしているのだろう。



「なんであんたこの競技出てないんだよ! あんたの水触手活かすとしたらここだろ!?」


「うるせーな。仕方ねーだろ、同じ人間が出れる競技は限られてんだから」


「ならなおさら出ろよ! あんたが輝けるのはこの競技で、役に立てるのは今この瞬間だけだろ!?」


「お前どんどん失礼になってるよな!? ナチュラルにタメ口だしよ!」



 テロは起こすわのんきにしてるわ使えないトサカである。体育祭が始まったばかりで、早くも達志の血圧が上がりそうである。


 これは第一種目落としたかもしれない……そう達志が思い始めていた頃、その肩に置かれる手があった。



「まあまあ、落ち着きたまえよ勇界くん」


「ロリ島ロペ……」


「なんて不名誉な呼び方をするんだキミは」



 その手は、同じチームであるロペのものであった。正直心の中だけでそう呼んでいたのだが、つい口に出てしまった。だってどうしようもないロリコン野郎なんだもの。


 ロリ島改め毒島 ロペは、若干表情を引きつらせながらもコホンと咳払い。次いで、選手達の方を指さす。



「自分のチームメンバーを信じなよ、ほら」


「信じろって言われても……」



 他チームは、厄介な魔法は元よりそのコンビネーションで着々と玉を入れている。ヘラクレスに至っては、手を巨大化させ十以上の玉を一気に入れるというとんでもないことをしでかしている。


 他のチームも、慣れてきたのか次々と玉を入れて……



 ボォォ……



「……うん?」



 見間違いだろうか。投げられた玉が今、燃えて焼失した。いやいやそんなわけがない。目を擦り、目を凝らし、もう一度よく見る。



 ボォォ……!



「……なあ、燃えてない? 玉燃えてない?」


「あぁ」


「ありなの? しかも火の元、ウチのチームからっぽいんだけど?」


「ありだし、正真正銘ウチのチームの仕業だ」



 何が起っているのかいまいち理解できないが……見たことありのままを伝えると、飛び交う他チームの玉が次々炎に燃やされ焼失していく。


 そして、それが誰の仕業であるかと言えば……赤チームである、シャオによるものだ。


 彼が口から炎を吐き、それにより宙に投げられた玉を燃やし尽くしている。この際、あの火が彼の魔法によるものなのか、それともリザードの特性なのかはどうでもいい。


 一言で言ってしまうならば、他チームへの妨害行為を行っているのである。



「いや、いやいや! いいのあれ!? すっごい妨害してるけど! 自分チームだけど許していいのあれ!?」


「む、胸ぐらを掴まないでくれ……! か、カゴに入った玉でなければ、ある程度の妨害は許されて……」


「ある程度!? ある程度なのあれ!? だいたい、いくら妨害してもこっちの玉が入らなきゃ意味が……」


「そぉーれ!」



 玉が、すごい勢いで舞っていく。複数の玉が、狙いすまされたようにカゴの中へ吸い込まれていく。


 それは、陽気な掛け声と共に。その主である蘭花は、楽しそうに玉を操っていく。



「……そういや蘭花、風魔法使いだったっけ」



 シャオの炎で他チームの玉を焼き尽くし、その隙に蘭花の風魔法により大量得点を狙う。ある意味で、浮遊魔法よりも効率的に入っている。


 開始直後から他チームに大きな後れを取っていた赤チームは、どんどんその差を縮めていく。タイムオーバーになるころには、他チームを圧倒する数の玉が入っていて。



「……はは、なるほど。これが"魔法ありき"の体育祭ね」



 引き笑いを浮かべる達志の赤チームは、ヘラクレス所属の黄チームに続いての二位だった。

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