プロローグ
『人間』になりたかった勇者
と読みます
「ねぇ、お母さん」
「何よ」
幼い少女が、黒髪を肩まで伸ばした女性の体を揺らす。
「暇」
「......。だったら外で遊んできなさいよ」
女性はチラリと少女の方を一目すると、テーブルに本を置き、ドアの方を指さした。
「だって、外、雨だし」
そうだった。昨日から降り続く雨のせいで、こうして私も暇を持て余しているのだ。
女性は少しの間、頭の後ろに手をまわし、考え込むように目を閉じた。
「......」
「...........」
「.....」
「......お母さん」
「.......ZZZ」
「お母さん!」
「!!...何よ、びっくりしたじゃない」
考えていただけだ。別に寝てなどいない。意識は少し遠くなったが。
「じゃあさ、お話してよ、お話」
お母さんは色々なことを知っている。この村の外の様子とか、おっきな街のこととか。
あとは、「うみ」っていうしょっぱい水でできた、ずーっと向こうまで広がっている湖とか!
...あと、魔物の事も。
隣に住んでいるおばさん(お母さんよりも二つ年上なのに、お母さんに頭が上がらないって、なんでだろ?)は、お母さんは昔、凄いことをして皆からいっぱい感謝されたって言ってたけど、絶対そんなことないと思う。
料理も洗濯も下手だし。
それに、体がそんなに動かない。昔、怪我をしたって言ってた。
...まぁ、ともかく、お母さんの話はいつも面白い。だから、私はお母さんの話が大好きだ。
「ん——...じゃあ一つ、してあげる」
女性はそう言うと、椅子の背もたれにゆっくりと寄りかかり、目を閉じた。
古びた椅子がギシッ、と音をたてる。
「ねぇねぇ、どんなお話?」
「そうね...簡単に、『人間になりたかった勇者』のお話ってとこね。......じゃあいくわよ、むかしむかしーー」
はじめまして、橘09と申します。私の作品を見てくださって、本当にありがとうございました。拙い文章で申し訳ありません!これからがんばって執筆していきたいと思いますので、よろしくお願いします。