マッハライダー
この物語は「機甲女学園ステラソフィア」
「終わりの予感-Konec Létavice-」( http://ncode.syosetu.com/n0351bz/220/ )後のエピソードです。
サエズリ・スズメ、テレシコワ・チャイカの二人を見送り、シャダイタワーを目指し進むツバサ達の前に一騎の機甲装騎が姿を現す。
大きく刃が沿った二本の剣――カンショウとバクヤと呼ばれる対になった剣をその手に構えているベツレヘム型装騎。
騎使はマリア隊リオネット・リーシュ――装騎名はライオネル。
「そろそろマハに行かせやがるんですよォ!!」
その姿を見たマッハが声を上げる。
ツバサはそんなマッハに静かに頷いた。
「マッハちゃん」
「何でやがりますか?」
出ていこうとするマッハの装騎チリペッパーにツバサは声を掛ける。
「これ、持っていけ!」
そう言いながら、ツバサが示したのは装騎スーパーセルのバーストライフル。
マッハは静かに頷くと、バーストライフルを手に取った。
「こんなんいらねーんですよ! とか言わねーの?」
「――使えるモノは使わせてもらうんですよ!」
「危なくなったら逃げろよ?」
「生憎、そんなタマナシ野郎じゃねーんですよ!」
「…………元々タマは無いだろ」
互いに、顔は見えないながらも微笑み合うと――装騎チリペッパーは装騎ライオネルに向かって駆け出した。
「来たか……ヘルメシエル型? 奇妙な鎧を着てるけど……」
カップの極みアーマーによる行動加速によって一気に装騎ライオネルとの距離を詰める。
「うおっしゃぁぁあああああああああ、華々しく散らしてやるんですよォォォオオオオオオオ!!!!」
放たれた装騎チリペッパーの回し蹴り――それを装騎ライオネルは身を屈めて回避。
そのまま、装騎ライオネルは双剣カンショウ・バクヤを交叉させるように薙ぎ払う。
「やらせねーんですよォォオオオ!!!!」
装騎チリペッパーは後方にはね跳びながら、手に持ったバーストライフルを発砲した。
「単調、単純――――理解した」
リーシュは口元に笑みを浮かべると、一気に装騎チリペッパーと間を置く。
「逃げやがるんですかァ!!??」
マッハはそう叫びながら、バーストライフルを装騎ライオネルへとがむしゃらに射撃。
その射撃を意にも介さず、装騎ライオネルはその手に持った双剣カンショウ・バクヤの柄頭同士を突き合わせた。
「作戦変更……」
「ツインブレードでやがりますか!?」
「霊子弦展開――――モード・刃弓」
リーシュはそう呟くと、腰部ストックから小型で細長い槍のようにも見える武器を取り出し――――番える。
そう、リーシュの装騎ライオネルが持つ双剣カンショウ・バクヤはその二振りが結合することで弓となる武器だった。
アズルで張られた弦に小さな槍が番えられると、そのアズルが槍を覆い、アズルの矢が形成される。
そして――アズルの矢が放たれた。
「うをぅ!? 弓でやがりますか!? ……チッ、姑息な手を使いやがるんですよォ!!」
自分も飛び道具を持っていながらそう叫ぶマッハ。
その動きを装騎チリペッパーが忠実に再現し、リーシュは相手の言いたいことを理解した。
そして、確信した。
「やはり――単細胞」
自分の狙い通りの性格だったということを。
「で、あれば――落ちる」
リーシュは刃弓カンショウ=バクヤから霊子矢をひたすら放つ。
装騎チリペッパーもバーストライフルを撃ち放ち、何とか接近する機会を見定めるがどうしても攻めあぐねてしまう。
「だぁぁぁあああああああ、もうヤってられねーんですよォオォオォォォォォオオオ!!!」
そして終ぞ、マッハの怒りが爆発した。
「チマチマチマチマ姑息な手ェ使いやがって――――ブッ殺っぞ!!!!!」
「莫迦め――正面からくるなんて……」
リーシュの言葉通り、マッハの装騎チリペッパーは真っ直ぐ装騎ライオネルへと突っ込んでくる。
「飛んで火にいる春の虫……」
「火食鳥・マッハだァァアア!!!!」
「なっ……止まらない…………止められない!?」
装騎チリペッパーはただ真っ直ぐ装騎ライオネルへと向かって行ってるだけ……の筈だ。
霊子矢は装騎チリペッパーを掠めながらも決定打を与えられない。
何か、何かが予測できない。
ただ真っ直ぐに走っているだけなのに。
ゴスッ!!
激しい音がして、装騎チリペッパーに蹴り飛ばされた装騎ライオネルがきりもみし、倒れ伏す。
「莫迦な……」
「ヴァカめッ!!」
「だが……ここでヤツを通すことだけは……それだけは絶対に…………阻止する」
その衝撃に目が眩みながらも、なんとか立ち上がる装騎ライオネル。
「まだ立ち上がるのか……テメェをぶっ殺して先に進む! ぜってぇに!!」
敵意を剥き出しにクラウチングをする装騎チリペッパー。
「カスアリウス・マッハァ――突撃ィィィイイイイイイイイイ!!!」
「来い……っ」
そして、2騎の機甲装騎が――交叉した。
キィィイイイイイイイイイイイイイ
装騎チリペッパーの放ったレーザーキックブレードによる鋭利な蹴り――だが、その一撃を装騎ライオネルの右腕は受け止めていた。
装騎チリペッパーの蹴りが装騎ライオネルの右腕を焼き切り、やがて胸部へ至り、ジリジリとコックピットのリーシュへと迫る来る。
だが、リーシュの表情には寧ろ笑みがこぼれていた。
「肉を切らせて、骨を断つ」
レーザーの強烈な熱がリーシュを襲う。
全身を焼き焦がす熱量にリーシュは気を失いそうになる。
「うらぁ!! とっとと死にやがれェ!!!!」
「そう簡単に、死には、しない」
ここで、装騎ライオネルの空いた左手が動いた。
矢にアズルを通し、霊子矢を展開する。
「ッ!!!! まさか、テメェ!!!!」
リーシュの狙いに気づいたマッハが叫び声を上げ、装騎チリペッパーを離脱させようとするがガッチリ組み付かれた装騎チリペッパーは動かない。
「このッ、ビチグソがァァアアアアア!!!!」
怒りに任せ、装騎チリペッパーが受け止められている足とは逆の脚でなんとか蹴りをぶちかます。
装騎ライオネルは思いっきり蹴り飛ばされ――――だが、その手から放たれた霊子矢は装騎チリペッパーのコックピットを一突き。
貫いた。