瞬烈の騎使
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「お姉ちゃん、今度の大会がんばってね!」
「お姉ちゃんならぜってー勝てるって!!」
「ああ、お姉ちゃんは負けないさ。行ってるよ」
そうだ、私は負けない。
負けられない。
マルクト神国の首都――神都カナン。
華やかな光輝くこの地にも、一つの大きな闇はある。
入り組んだ路地裏の更に奥――――そこは、夢を持ちこの神都カナンに旅立ちながらも、挫折し、行き場を無くした人々の住まう貧民街。
私、パラミディス・シャロットとその弟であるランツとツェロットはその物寂しい地獄の中に住んでいた。
その理由は数年前にまで遡る。
弟たちを産み、無くなった私の母に代わって、父が男手一つで私達姉弟を養ってくれていた。
そんな矢先だ。
「パラミディス・ガラハト! 貴方を悪魔派組織へのほう助の罪で逮捕する」
「何のことだ!? 私が悪魔派だと!!??」
「シャダイ様の御判断よ。そこに疑念の余地など無い」
父ガラハトはマルクト神国により悪魔派と判定。
国に拘束されてしまった。
それからだ。
家を追い出され、この貧民街で弟達と3人、必死で生活をしはじめたのは。
そして私は父の残したシェテル型装騎プロヴァンスを使い、生活費を稼ぐために様々な装騎バトルの大会へと出るようになった。
「勝者、シャロット=プロヴァンス!!」
弟達を養うために、私は必死に戦った。
いつしか、一部のファンからは“瞬烈の騎使”と言う呼び名まで与えられたそんなある日。
「瞬烈の騎使パラミディス・シャロットだな?」
一人の男性に呼び止められた。
彼はコンラッド・モウドール。
悪魔派と呼ばれる反体制派組織の一つ、神の栄光のリーダーだという。
「パラミディス・シャロット、君に頼みがあって私は来た」
「頼み……?」
「ああ。パラミディス・シャロット、私達の仲間になってくれないか?」
「私が、悪魔派組織に? バカを言うな! 誰がそんなものに!!」
「父親を助けたいのだろ?」
「っ!! まさか、父は――」
私の推測にモウドールは首を横に振った。
「いや、彼は我々の仲間ではない。他の組織に所属しているということも――調べたが無かった」
「では何故、私の父は憲兵に連れて行かれたのだ!」
「憲兵どもはただシャダイの指示に従ったにすぎん。シャダイが何故、パラミディス・ガラハトを悪魔派と判断したのか――それはまさに“神のみぞ知る”と言った所だが……赦せんだろう?」
「…………ああ」
「この国には君の父と同じように、無実の罪で拘留されている人も大勢いる。我々グローリアは彼らを解放する為に戦っているのだ」
そう言うモウドールの瞳はどこか真っ直ぐに見えた。
それは、子どものように真っ直ぐに。
「手はあるのか?」
「ああ。まずは話を聞いてほしい」
そして私はグローリアのエースチーム、マリア隊の一員となったのだった。
その作戦はこうだった。
作戦の要は戦車――これは、かつて使われていたようなちっぽけなモノではなく、機甲装騎のサイズに合わせた大型の戦車。
それでいながら、機甲装騎などとは比べ物にならないスピードを誇る。
「この戦車にはマルクトから奪ったインディゴシステムが搭載されている」
「インディゴシステム、とは?」
「周囲の地脈などから霊力を吸収し続け、アズルに変化させる機能だ。簡単に言うなら――」
「アズルがほぼ無限に使える、と?」
「そうだ」
私の言葉にモウドールが頷いた。
「インディゴシステムにより装騎でも扱えない大口径の銃器の搭載も可能となった。武器の提供もビッガービレッジ博士から受けているからな」
「ビッガービレッジってアレでしょ。兵器大好きのヘンタイ」
「そうだが――腕は確かだ」
仲間の一人、ミラ・ローラが顔をしかめながら言った言葉に、モウドールは肯定しながらもそうフォローする。
「作戦の関係上、フォーメーションBの時にはインディゴシステムは切っておいてくれ」
「わたしの魔術で戦車が壊れちゃっても知らないわよ~」
モウドールとローラの言葉に話を聞いている全員が頷く。
しかし、驚いた。
マルクトが作りだしたインディゴシステムはあまりにも強力――だが、それを自壊させることができるなんて。
「全ては協力者のお陰だ」
そして、運命の日は来た。
聖歴169年3月31日――まだ陽も登らない、どころか日付も変わったすぐの時間。
私達、グローリアの強襲作戦が始まったのは。
「各地で我々に協力してくれる悪魔派組織、そして他国の軍が陽動を仕掛けてくれる。その隙を狙い、戦車の機動力で一気にシャダイタワーへ進撃、それを叩くぞ」
「諒解!」
そして私は、父を救い出すため――この国を変えるために戦車を駆り、走り出した。
父と、弟たちと、家族全員で過ごす――そんな未来を信じて。
「まさか、逆付きに足止めをさせてサクレ達を追撃する気か!? させん!!」
「ツバサ先輩たちの邪魔は、させません!!」