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9. 咄嗟に動いたにしては、上出来。
咄嗟に動いたにしては、上出来だった。
間に合って良かったが、耳が聞こえない。正確には、耳鳴りが凄すぎて感覚がない。
爆発のエネルギーは相殺したが音までは無理だった。
焦土に寝転がった私の周りに、気絶したトレント達が横倒しになっていた。目立つ外傷はないが、枝葉がカサリとも動かないのは不思議な感じがする。
蔦と蔓は長々と地面に伸びていた。どこも傷めていない。良かった。
安堵の溜め息が零れた。
樹海の住民達の無事を確認した私はボンヤリと<杖>に視線を移して、目を見開いた。
私の手は<杖>の残骸を握り締めていた。
砕かれた欠片が手の皮を突き破って血を滴らせ、元は白木の美しい色を赤黒く染めていた。
ショックで茫然としていた私の視界に、使い古された革靴が入ってきた。
瞬いて、そして私は蹴り飛ばされていた。二度も三度も蹴っ飛ばされ、打たれて踏みつけられる。
植物達に縛り上げられていた男達だとわかった時には、私の意識は暗転した。