2. もうすぐ昼の支度の頃合だが。
もうすぐ昼の支度の頃合だが。さて、どうしよう。
やっとかっと玄関に辿り着いた小さな訪問者を家に招き入れて、私は途方に暮れた。
子供への接し方が分からない。
何せ、こちとら独身だ。子育てどころか、結婚の経験も無い。
幼馴染み以外近所にチビっ子がいる環境でもなかったし、一人っ子の私は兄弟姉妹に揉まれて育つということもなかった。
私がチビだった頃? 日々に追われて忘れたよ。
どうすれば良いかホントに分からなくて、魔女ばあちゃんや友人達が紹介の為に連れて来る見知らぬ人を迎えた時と同じように振る舞う事にした。
「……私の事はミヒルと呼んでくれ。ところでココアとコーヒーとミルクとお茶どれがいい?」
椅子の座面に重そうなカバンを置いて、背もたれに外套と帽子を引っ掛けたハーディは、ポカンと私を見た。新緑色の目が真ん丸になっている。
あー、トートツ過ぎて解んなかったかな。
「飲み物は何が良い? お茶は、緑茶か紅茶か香茶。香辛料使うチャイも淹れられるし蜂蜜も砂糖もあるから、甘い味付けができるよ。ただ、街で流行っているらしい甘味飲料とやらは、さすがに無いんだ」
何かを言いかけたハーディのお腹が、ぐぅ、と鳴った。
……おおう。デっカイ音だな。
顔を真っ赤にして俯いた子供を横目に、私は食糧庫のドアを開けた。
「少し早いけれど、お昼にしよう。パンか米かトウモロコシか豆か芋か、君はどれだい?」