巻き込まれたもの
「え~と、つまり何をしてもらいたいの?」
なかなか終わらない長話に、私は目の前でぷかぷかと浮いている白い光の玉にそう質問した。
「お、お前……。」
また球体は人の心を読んだのか、少し唖然としているようだった。
「話を聞いてみる限り、あなたを助けないと、帰る道はないんでしょう? さっきの話の力を失ったって、つまり取り戻せば帰る方法はあるということ」
「……そうだ。」
球体は少し間を開けてそう答えた。
心の内に若干の不安が残ったが、私はそれを追求しなかった。
「それで?」
「……今説明できることはほとんどない」
「え?」
「我の消滅のときが近いのだ」
「え? 消滅?」
「消滅を避ける手段はただ一つ。呼び出したお前を依り代として眠りに就……。」
「ん?」
あ、あれ? 段々球体の声が小さく……?
「まず、おるでぃあ……でんの……がみ……あし……に」
ちょ、ちょっと?
球体がゆっくり小さくなり、ふらふらとこちらへ向かってきた。
私は動転し、球体へ手を伸ばす。
触っても火傷とかしないよね?
そんなことを思いながら、ちょうど球体が手のひらに落ちるように――
「あわわわわわわっ!」
――何だろう……この生理的に嫌な感じ。例えるならば、皮膚の下を虫が通り抜けた感じだ。
球体が入り込んだであろう右腕をさすってみる。うん、いつも通りだ。特に変化及び進化はないと信じたい。
その時、周りの状況が変わっていることに、私は気がついた。
白く明るかった雰囲気が、暗くどんよりとしている。
心なしか、何か嫌なものが近づいてきているような……。
その時。足元がぐらついた。私は手足を振り回した。何処にも掴む場所も引っかかる場所もなかった。
下を見ると、いつの間にか暗闇が広がっており、私はただただ、落下した。
「時間切れだ。また会おう」
意識が遠ざかる寸前、すぐ近くでそんな“音”が聞こえた。