第六話
「あんた達! 何しにきたのよ!!」
玄関の奥から怒号が聞こえた。
「マリコ……先輩?」
そこには、変わり果てた姿のマリコ先輩がいた。毎日のハードな練習によってスレンダーな体型を維持していたマリコ先輩の体には、醜い脂肪がこびりついていた。
「ぷぷぷ、マリコちゃん関取みたい」
美咲先輩がまさかのタイミングで天然を炸裂させた。明らかに言ってはいけない言葉を、明らかに言ってはいけないタイミングで言った。私の背筋は恐ろしさのあまり凍りついた。
「だれが関取だって?」
「あ、ご、ごめんね。悪気があったわけじゃないのよ……ごめんね、つい口が滑って…………ごめんね」
美咲先輩がいくら謝ったところで、マリコ先輩の怒りが収まるはずがない。私はとばっちりを受ける前に逃げようと思い、後ずさりを始めた。
「…………う、うわぁーーーーーーーーん!!!」
次の瞬間、泣き出したのは美咲先輩ではなく、マリコ先輩だった。いつものように怒りの感情に身をまかせて、怒鳴り散らして、頭の血管を切る。そんな鬼のように怖いマリコ先輩は、そこにはいなかった。幼い子供の様に、マリコ先輩はその場に泣き崩れていた。