第四話
全国大会まであと1週間。今日は3週間ぶりの部活だ。私のケガは完治した。やる気も十分。しっかり休んでリフレッシュもできた。「さぁ、がんばるぞ!」といきこんでグラウンドに来たのだけれど、そこには誰もいなかった。
「あれ? おかしいな……」
私は直ぐにマリコ先輩に電話をした。あんなに練習好きで、鬼のように厳しいマリコ先輩が休むなんて……まだ病状が良くないのだろうか? 一抹の不安がよぎった。
「だめだ、留守電だ」
何度電話してもマリコ先輩は電話に出てくれなかった。私はとりあえず、もう1人の部員である美咲先輩に電話をすることにした。
『あ、もしもし、美咲先輩ですか?』
『うん、そだよー』
電話越しに美咲先輩の天真爛漫な声が聞こえた。私はとりあえず美咲先輩の声を聞けてひと安心した。もしかしたら美咲先輩にも何かあったのではないかと心配だったから。
『今日から部活再開するんですよね? なんで部活に来てないんですか? まだ骨折治っていないんですか?』
『え! あ、ああ! そ、そ、そう……そうなの、ゴホォ、ゴホォ、まだ体調悪くて……』
美咲先輩は急にわざとらしく咳をした。
『美咲先輩…………もしかして、今日から部活を再開すること、忘れていました?』
『ゴホォ、ゴホォ、そ、そんなこと、ないのよ……今日はちょっと体調が悪くて……』
『美咲先輩、嘘はやめてください』
『奈々子ちゃん、嘘じゃないのよ、嘘じゃ……』
『先輩、嘘はやめてください』
『…………ごめんなさい』
美咲先輩は悲しい声で謝った。
『そんなことより、大変なんです。マリコ先輩も部活に来ていなくて、連絡が取れないんですよ。まだ病状が良くないのでしょうか?』
『え!? マリコちゃんも部活に来てないの? あの練習の鬼のマリコちゃんが!?』
美咲先輩もひどく驚いていた。無理もない。マリコ先輩は今までただの一度も部活を休んだことがないのだ。修学旅行を仮病で休んでまで部活に出るような変人なのだ。そんな変人鬼人のマリコ先輩が休むなんて、よほどの事情があるのだろうと考えてしまうのは自然なことだ。
『とりあえず、マリコちゃんの家に行ってみましょう』
『はい、わかりました』