表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

第三話

 さて、部活が休みの間に、もう一度『キープフィギア』のルールについて勉強しよう。そう思った私は、キープフィギアのルールブックを開いた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


~キープフィギアのルール~


 『キープフィギア』とは、<フィギア>を規定の角度、規定の位置でどれだけキープし続けられるかという競技である。キープできる時間、角度の正確さ、規定の位置からのズレ、などからポイントが与えられ、そのポイントで勝敗が決められる。


 激しい動きが求められる従来のスポーツとは違い、『どれだけ維持することができるか?』という“維持力キープりょく”に注目した珍しいスポーツである。


 種目には個人戦と団体戦があり、団体戦は1チーム3人で行われる。団体戦では、メンバーは『キープメイン』と『キープサブ』と『メジャー』という3つのポジションに分かれる。


 『キープメイン』とは、唯一<フィギア>に触れることが可能であり、メインで<フィギア>を支えるポジションである。このスポーツのエースポジションであり、各学校のゴリラ系女子がそのポジションを担当することが多い。


 『キープサブ』とは、<フィギア>に触れてはいけないが、キープメインに触れることは可能であり、サブ的に<フィギア>を支えるポジションである。長いキープ時間を保つためには非常に重要である。また、メジャーが正確な角度を測る上でキープサブの動きが重要になる。


 『メジャー』とは、<フィギア>にもキープメインにもキープサブにも触れてはいけないポジションであり、少し離れた場所から<フィギア>の角度や位置の確認を行うポジションである。目視だけで正確な角度を見極めなければいけないので(試合中は分度器の使用は認められていない)、強者同士の戦いになるとメジャーの実力差が勝敗の差となることが多い。道具の持ち込みは禁止であり、試合中に使えるのは肉体のみなので、キープサブの体の一部分を基準として角度を見極めるメジャーが多い。


 『<フィギア>』とは、金属製の外人の顔をした不細工な人形である。全部で100種類用意されており、試合の直前までどのタイプの<フィギア>が使われるかは、選手達には知らされないことになっている。重さは10キログラム~100キログラムであり、女子の試合では最大でも40キログラムのものまでしか使用されない。また、同じ重さでも微妙に重心が違ったり、掴みやすさが違うため、使用される<フィギア>によって選手達は毎回戦略を変える必要がある。


 『ポイント』について。ポイントは主に『キープ時間』、『角度の正確性』、『位置の正確性』によって決められる。試合開始時に、審判から規定の角度と規定の位置が発表される。選手達はその規定の角度、規定の位置に<フィギア>をセットした状態でキープを始める。


 当然、キープ時間は長ければ長いほどポイントが高い。キープの時間は、規定の位置から10センチずれた時点、もしくは規定の角度から10度ずれた時点で“キープ無効”と判断されてしまい、キープ無効までの時間がポイントとなる。また、規定の角度や位置からのズレが少ないと、技術点としてポイントが追加される。


 さらに、難しいポーズでキープをすることでポイントが加算されるというルールもある。より難しいポーズでキープをすることで高得点を狙えるが、一方でキープが難しくなるため、諸刃の剣となってしまい減点されてしまうことも珍しくない。


 また、最近ではフィギアスケートの影響もあり、表現力によるポイントの加算も行われている。同じポーズでキープをしたとしても、顔の表情や腕筋のプルプル感によってポイントが変動するのだ。ただし、これは最近導入されたばかりのルールであり、今現在はあまり大きなポイント加算とはなっていないのが現状である。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「ふぅー。基本ルールのおさらいはこれでよしと。今日はもう寝よう」


 私は頭の中で全国大会をイメージしながら眠りに付いた。



「だめ、いや、あぁ、受理しちゃだめ……はぅ!!」


 数時間後、気持ちの悪い<フィギア>の夢で目が覚めた。今日の夢は、<フィギア>と一緒に婚姻届を出しに行くという身の毛もよだつ内容だった。あと少しで婚姻届を受理されるところだった……あぶないあぶない。


「私……つかれているのかしらん?」


 私は肌荒れを気にしながら、再び眠りについた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ