第二話
皆さん、私達『村岡高校キープフィギア部』は今、最大のピンチをむかえています。
「全治1週間ですね。大会が近いのはわかりますが、あまり無理してはいけませんよ」
「はい。ありがとうございました」
あの日、私の腕は限界をむかえて、全治一週間のケガをしてしまった。大会まで残り少ないのに、ケガをしてしまうなんて……くやしい。すごく、くやしい。
「全治2週間ですね。大会が近いのはわかりますが、あまり無理してはけませんよ」
「は、はい……わかりました」
あの日、美咲先輩は私が落とした<フィギア>により、右腕を骨折してしまった。しかも、全治2週間。私より重症だった。
「全治3週間ですね。大会が近いのはわかりますが、あまり無理してはいけませんよ」
「……はい。わかりました」
マリコ先輩は、あの日あまりにも怒りすぎて、頭の血管が本当に切れてしまった。何か知らないけれど、一番の重症だった。
皆さん、ピンチです!! 私達は1ヶ月後にキープフィギアの全国大会を控えているのです。つまり、ピンチなんです!!
「とりあえず、こんな状況じゃ練習できないから、部活は休みにします」
悲しい顔でそう言うと、マリコ先輩は哀愁漂う背中で家に帰った。
「次にみんなで練習するのは、マリコちゃんが完治する3週間後ね。それじゃ、それまで元気でね」
美咲先輩はそう言うと、少し嬉しそうに、ギブスで固定された右腕をフリフリしながら帰りのバスに乗車した。先ほど美咲先輩はギブスをマジマジと眺めながら小さな声で「ロボットみたい。ウフフ」と笑っていた……子供か! ギブスごときでウキウキするな! 私達は今ピンチなのですよ! 先輩! あなたのせいで! 自覚してください!
「はぁー。私も帰るか」
私はわざとらしくため息を付き、トボトボ歩きながら家に向かった。